クラレグループは、企業ステートメントの使命「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」のもと、創立100周年となる2026年度に向けた長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』で掲げる「独自の技術に新たな要素を取り込み、顧客、社会、地球に貢献し、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年12月31日)現在において当社が判断したものです。
当社グループは、この長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』の実現に向けて、2022年度から始まった5か年の中期経営計画「PASSION 2026」で以下3つの挑戦を設定しています。
① 機会としてのサステナビリティ
サステナビリティを機会としてとらえ、グループ一丸となって推進します。
② ネットワーキングから始めるイノベーション
社外・社内を問わず、人と人、技術と技術をつなげることで、新たな成長のドライバーを生み出します。
③ 人と組織のトランスフォーメーション
デジタルでプロセスを変え、多様性で発想の幅を広げ、人と組織に変革をもたらします。
中期経営計画「PASSION 2026」の最終年度となる2026年度は、エバール、ジェネスタ、活性炭、歯科材料等の「成長・拡大事業」では強みを生かして拡大する需要に対応するとともに、「最適化・体質改善事業」の収益改善を着実に進め、事業ポートフォリオの高度化を一層推進していきます。また、当社グループの中長期的な成長のために、引き続き新規事業創出に向けた取り組みを加速していきます。当社グループは、2026年度の創立100周年とその先の未来を見据え、持続的に成長するスペシャリティ化学企業として今後も挑戦し続けます。
(1) サステナビリティに関する考え方及び取組
当社グループは創業当時から、事業活動を通じ自然環境・生活環境の向上を目指すことで社会のサステナブルな発展に貢献する経営を行ってきました。サステナビリティを重要な経営戦略の一つと捉え、当社と社会が持続的に発展するための優先すべき重要課題(マテリアリティ)を経営レベルで選定し、課題の解決に全社的に取り組んでいます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① ガバナンス
当社グループは、2022年にCSR委員会に代えて、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。本委員会は経営レベルで当社グループにおけるサステナビリティ関連課題及びその対応方針について審議し迅速な意思決定をするとともに、各種施策の進捗状況をモニタリングしています。また本委員会にて重要と判断された事項については取締役会に付議または報告し、取締役会の意見をサステナビリティ課題への取り組みに反映しています。

サステナビリティ委員会の傘下には6つのプロジェクトチーム(地球環境・GHG排出削減対策、CSRD(欧州の企業サステナビリティ報告指令)、サステナビリティ・ポートフォリオ、サステナビリティ・プロキュアメント(調達)、ダイバーシティ・インクルージョン、新規戦略提案)に加え、コーポレートテーマとして取り組んでいるCCUS(Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage)プロジェクトチームを配置し、その進捗状況及び課題を確認・評価して着実な実行に繋げています。プロジェクトチームは固定ではなく、施策の進捗状況等に鑑み柔軟に編制を変えていきます。また、レスポンシブル・ケアに関するPDCAの進捗も本委員会で確認しています。
2025年度は4回のサステナビリティ委員会を開催し、各プロジェクトチームの活動進捗の報告及び施策の審議を実施しました。主な議題として、米国におけるバーチャルPPA(電力購入契約)、2026年4月より開始される排出量取引制度(GX-ETS)、CCUSプロジェクトの進捗、クラレPSA(ポートフォリオ・サステナビリティ・アセスメント)システムを用いた環境貢献製品評価の高度化、グローバルでのサステナブル調達アンケートの実施等について討議しています。
② リスク管理
クラレグループは、重大な経営リスクの適切な管理、法令遵守・企業倫理の徹底、公正な企業活動の実践を目的に、社長直轄のリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。グループリスク管理規定に基づき、国内外の各組織においてリスクの自己評価を実施し、リスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、社長が重大な経営リスクを特定、リスク毎に統括責任者を選定し、リスクの回避・軽減のための対策を進め、取締役会は対策の進捗を確認しています。
サステナビリティに関連するリスクを含む具体的なリスクに関する認識と管理体制は
③ 戦略
クラレグループは自社に関わる重要課題をマテリアリティとして特定しています。2019年に「自然環境の向上」「生活環境の向上」「資源の有効利用と環境負荷の削減」「サプライチェーン・マネジメントの向上」「「誇りを持てる会社」づくり」の5分野と具体例に見直しました。クラレグループの各組織はマテリアリティの解決に貢献する計画を立案し、それらは中期経営計画「PASSION 2026」の施策と目標に盛り込まれています。
[クラレグループのマテリアリティ]

また、以下の手順に従いクラレグループが優先的に取り組むべきマテリアリティを特定しました。今後、国際社会の動向、事業環境の変化等に応じて定期的にマテリアリティの見直しを実施します。

④ 指標及び目標
クラレグループでは、各組織においてマテリアリティの解決に資する計画を立案し、その実現に向けて取り組んでいます。中期経営計画「PASSION 2026」においては、サステナビリティ関連の重点施策に関する指標及び目標を「サステナビリティ中期計画」としてまとめました。クラレグループは2050年カーボンネットゼロの達成を目指し、2021年比で2035年までにScope1、2の排出量を63%、Scope3(カテゴリー1)の排出量を37.5%それぞれ削減するという目標を設定しています。
[サステナビリティ中期計画における重点施策]

※1 当社独自の指標による労働災害の分類:重い方からA>B>C>Dの4ランク
※2 全労働災害度数率:労働災害(休業および不休業)の労働時間百万時間当たりの発生件数を表す
※3 当社独自の指標による保安事故の分類:重い方からA>B>C>D₁>D₂の5ランク
※4 2025年度からA、B、Cランクの保安事故“ゼロ”に加え、中期目標であるA、B、Cランクの保安トラブルについても発生“ゼロ”を目指す
※5 日本国内の管理職における女性・外国人・キャリア採用社員の比率(生産事業所は除く)
<GHG排出量の修正について>
クラレグループでは、カルゴン・カーボン社の新炭製造プロセスにおける副生CO2の算定精度向上に向けて算定方法を見直しました。さらに、GHG排出量に対する任意保証の取得準備の過程において第三者機関より指摘を受けたことに鑑み、活動量データや排出係数の根拠をより正確なものに改善し、また、Scope3においては算定対象範囲を拡大しました。これに伴い、2024年度より、クラレグループGHG排出量削減目標の基準年である2021年度まで遡り修正を実施しました。修正結果及び修正内容は下表に記載のとおりです。
表1:Scope1、2排出量修正の内訳

Scope1、2排出量の主な修正内容
・カルゴン・カーボン社の新炭製造プロセスにおける副生CO2の算定精度向上等(Scope1減少)
・米国生産拠点における購入蒸気の排出係数の見直し、海外生産拠点における購入蒸気エネルギー単位の修正等(Scope2増加)
表2:Scope3排出量修正の内訳

Scope3(カテゴリー1、カテゴリー4)排出量の主な修正内容
・一部原材料の排出量の見直し(カテゴリー1減少)
・算定対象の購入製品・サービスの拡大(カテゴリー1増加)
・排出係数の見直し(カテゴリー1減少)
・カテゴリー1の算定対象の拡大に伴うカテゴリー4の見直し(カテゴリー4増加)
(2) 気候変動への取り組み
クラレグループは、気候変動対応を当社の取り組むべき重要課題の一つとして捉え、2020年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言への賛同を表明し、TCFD 提言が推奨する4つの開示項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿ってクラレグループにおける気候変動への取り組みについて開示しています。
① 気候変動に対するガバナンス
クラレグループでは、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、気候変動を含むサステナビリティ課題について各種施策の審議・報告・進捗管理を行っています。サステナビリティ委員会の傘下には、サステナビリティ中期計画で掲げたグローバル施策を実行するプロジェクトチームを配置し、各プロジェクトの着実な実行を推進する体制を構築しています。
また、サステナビリティ委員会にて重要と判断された事項については取締役会に付議または報告し、取締役会の意見をサステナビリティ課題への取り組みに反映しています。
② 気候変動に対する戦略
低炭素社会への移行において想定される事象、及び気候変動に伴い発生する物理的な事象に対するクラレグループのリスクと機会を表1のとおり選定しています。
表1 気候変動に伴うクラレグループにおけるリスクと機会

※短期: 1 年以内、中期: 1~5 年、長期: 5 年超
次に、表1で選定したクラレグループのリスクと機会に基づき、低炭素社会への移行が進む2℃以下シナリオ(含む1.5℃シナリオ)及び気候変動が進む4℃シナリオを用いた分析を行いました。当該分析の結果、クラレグループにおける事業へのインパクトは表2に記載のとおりとなります。
<シナリオ分析の前提>
・基準年:2021年、算定対象年:2035年
・参照した外部データ:
・World Energy Outlook 2024 (IEA: International Energy Agency)
・Working on a warmer planet (ILO: International Labour Organization)
・Climate Impact (ウェザーニューズ社)他
表2 気候変動シナリオにおけるクラレグループの主要なリスクと機会の事業インパクト

低炭素社会への「移行リスク」では、2℃以下シナリオにおけるGHG排出及びエネルギー調達に対する炭素税等の影響が大きく、2035年までに計画中のGHG排出削減対策を完了した後でも約260億円の炭素税等の賦課により操業コストが増加する可能性が示されました。現行の中期経営計画「PASSION 2026」ではインターナルカーボンプライシング制度を導入しGHG排出量に対する賦課額等を認識したうえで、GHG排出量の削減やエネルギー効率の向上を図るとともにGHG排出量を抑えた事業の拡大を目指しています。また「PASSION 2026」では3つの挑戦の1つに「機会としてのサステナビリティ」を掲げ、各種施策を進めています。中でもWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が定めた客観性・透明性の高い製品ポートフォリオ評価手法であるPSA(Portfolio Sustainability Assessment)に準拠したクラレPSAシステムを構築し、自然環境・生活環境貢献製品の拡大を図り、これら環境貢献製品が創出する市場価値の製品・サービス価格への反映を促進していきます。
気候変動に伴う「物理的リスク」では、洪水災害発生による操業への影響が想定されます。これに対し、人命・地域等の安全対策を講じたうえで事業の継続または早期復旧に努めています。また洪水災害による財産の毀損を補填するための手段も講じ、被害影響の低減を図っています。
なお、気候変動への対応は中長期的な課題であることから、適宜適切なタイミングで施策の見直しや新たな施策の検討を継続的に実施していきます。
③ 気候変動に対するリスク管理
クラレグループでは表2に記載する主要リスクに対して、「緩和」と「適応」の両側面についてリスク管理を実施しています。
低炭素社会への「移行リスク」を「緩和」するため、GHG排出量削減や環境貢献製品の売上高比率の拡大を進めています。これら取り組みの進捗状況はサステナビリティ委員会にて確認しています。
一方、気候変動に伴う「物理的リスク」への「適応」策については、災害対策・事業継続性の観点で各組織が毎年リスク自己評価を実施した結果を、リスク・コンプライアンス委員会(委員長:サステナビリティ推進本部担当取締役)で討議のうえ重要なリスクを抽出し、社長が経営リスクとして特定し統括責任者を指名して対策を進めています。
④ 気候変動に対する指標及び目標
サステナビリティ中期計画では気候変動に関わるGHG排出量削減及び自然環境・生活環境貢献製品の売上高比率を表3のとおり目標として設定しています。また、クラレグループは2050年カーボンネットゼロの達成を目指し、2021年比で2035年までにScope1、2の排出量を63%、Scope3(カテゴリー1)の排出量を37.5%それぞれ削減するという目標を設定しています。
表3 サステナビリティ中期計画の気候変動に関わる施策と目標

(3) 人的資本(人材の多様性を含む) への取り組み
①人材戦略
クラレグループは、様々な国籍・背景を持つ人材でなりたち、長期的・持続的な企業価値向上のためには、多様な社員一人ひとりの活躍が欠かせません。そのため当社の人材戦略は、創業以来の基本精神である<私たちの使命><私たちの信条>に基づき、価値創造の源泉である多様な人材が、全社横断的なつながりを持って活躍できることを狙いとしています。魅力ある文化を磨き(「1.文化」)、その文化に惹かれる人材を獲得してつながりを作り(「2.人材獲得と配置」)、その人材を動機づけ、育成します(「3.人材育成」)。
<人材戦略のストーリー>

「1.文化」では、<私たちの使命><私たちの信条>の実現を目指し、社員一人ひとりが可能性を追い求めて挑戦する文化を推進します。そのため、クラレが創業当時から受け継いできた個人の可能性を引き出すリーダーシップを尊重し、また時代や環境の変化に応じた職場や働き方を整備します。
「2.人材獲得と配置」では、使命・信条に共鳴し、我々の文化に魅力を感じる人材を獲得し、多様なメンバーとつながりを持つことでグループ力を最大化する配置を行います。
「3.人材育成」では、使命・信条を実現するため、現場力や専門性を高める教育と並行し、個々のキャリア支援、将来の経営者育成により企業価値の最大化と継続的なグループの成長を実現します。
また変化する経営環境や事業ニーズを的確に人材戦略へ反映させるため、経営層や事業部門との連携にも力を入れています。取締役会や経営会議とは別に、経営会議メンバーと人事部門で構成する「人事委員会」を年13回(2025年度)開催し、重要な人材配置や育成、人事施策を協議しています。事業部長との「意見交換会」、各事業部の重要なポジションに対する後継者育成計画のための「人材会議」を、毎年グローバルに実施しています。
さらに2025年度より、人事戦略を事業部・本部や国・地域を超えてグループ全体最適で推進するための基盤・プラットフォーム整備を行うプロジェクトが発足しました。具体的には、法人・国を超えたグローバル人事運営体制の構築及び、グループ共通の人的資本(人事情報)管理システムの導入を進めてまいります。プロジェクトは、日本・米州・欧州・アジア太平洋それぞれの地域から多様な国籍の人事メンバーで構成されています。また、海外主要拠点の人事責任者で構成する「人事ステアリングチーム」を編成し、グローバル最適化と各地域・国レベルの最適化の両立を目指しています。
②人材戦略に基づく主要施策と進捗
「1.文化」
時代に即した就業規則や人事制度を整備し、社員が健康で安心して働ける職場環境を整える「健康経営」にも取り組んでいます。また魅力ある職場、クラレならではの文化を推進するため、以下のような取り組みを行っています。
(a)人権尊重への取り組み
クラレグループでは人権の尊重について、「クラレグループ行動規範」において事業活動に関わるすべての人々の人権を擁護し、一人ひとりの尊厳と価値を尊重することを掲げています。2024年3月に制定した「クラレグループ人権方針」は人権の尊重をより具体的に明文化することでクラレグループの全ての人が各々の行動に反映していくことを目指しています。人権尊重への取り組みを着実に進めていくため、2024年5月に人権デュー・ディリジェンスタスクフォースを立ち上げ、組織横断で人権尊重に関する戦略や施策を立案、推進しています。活動内容は適宜取締役会に報告しています。
また、人権デュー・ディリジェンスの一環として2025年1月に日本国内のクラレグループで働く方を対象に人権に関するアンケートを実施しました。このアンケートを通じ、人権侵害に関するリスクを評価・分析し、緊急かつ重要度の高い項目からリスクの防止や軽減に向けて対策を開始しました。今後グローバルにも活動を展開していく予定です。
(b)グローバル人事ポリシー
クラレグループでは、人事に関する基本的な考え方をまとめた「グローバル人事ポリシー」に基づいて、社員一人ひとりが仕事を通じて人間的に成長できるよう、多様性の推進、人材育成、公平・公正な評価などの制度を整えるとともに、健全な組織風土の醸成と雇用機会の創出に取り組んでいます。
(c)エンゲージメントサーベイ
クラレグループでは、従来グループ会社が個別に行っていたサーベイを統一し、2022年度からグローバルエンゲージメントサーベイ「Our Voice」を毎年1回実施しています。エンゲージメントを従業員と会社の目指す方向が一致し、互いに貢献したいと思える関係と捉え、会社の信条の浸透、上司や経営陣への信頼、仕事のやりがいなどの状況を確認しています。結果は経営層や所属長を含む全社員に共有し、部署運営やより良いコミュニケーションに生かすことでエンゲージメントの向上と組織の活性化を図ります。
(d)ダイバーシティとインクルージョンに関する意識の醸成
クラレグループでは、多様なメンバーと切磋琢磨できる職場環境の醸成と、個人の可能性を引き出すリーダーシップの推進を目的として「クラレグループダイバーシティとインクルージョンに関する基本原則」を定め、目指す組織像を示すとともに、関連する施策を実施しています。各職場での多様性の進捗を確認するため、国内における中核人材の多様性を指標にしています(指標:中核人材の多様性確保、新卒採用に占める女性の割合)。
ダイバーシティとインクルージョンの考えを組織運営に反映するため、2024年度は海外を含む事業部長・本部長以上にインクルーシブ・リーダーシップ研修を実施しました。各自は行動変容のために策定した計画を実行しています。
2025年度は対象を広げ、部長・課長層を対象とした研修をグローバル全拠点で開始しました。組織をリードしていくために必要な気づきや手法を得てもらうことを目的としています。またクラレグループ全社員へダイバーシティとインクルージョンの理解を深めるため、多様な社員へのインタビューと社長メッセージで構成した動画を発信しました。
(e)柔軟な働き方の推進
これまで、柔軟な働き方の推進に向けて、一定条件下ではコアタイムを不要とするフレックスタイム制度を導入したほか、在宅勤務制度の対象者を全社員へ拡大し、さらに兼業承認の取り扱いを見直すなど、様々な取り組みを進めてきました。これらの取り組みにより、家庭事情や自己啓発などの理由を含め必要な時に休暇を取得できる体制を整備することが社員の幸福や会社への帰属意識向上、安定的な部署運営にも繋がるものと考えており、その進捗を測るために男性の育児休業取得率を指標として設定しています(指標:男性の育児休業取得に関する指標)。
当社における多様な人材が活躍できる職場づくりに関する指標と目標及び実績
(注)1.「中核人材=管理職」と定義します。管理職の対象は、当社原籍者(生産事業所を除く)に海外関係会社原籍者で当社日本拠点に勤務するものを加えることにより、外国人管理職のインクルージョンの進捗状況を反映させます。また、多様性の要素として「女性・外国人・中途採用者」を一つのカテゴリーとして捉え、管理職における同カテゴリーの合計人数が占める割合を目標として設定します。
2.内数:女性比率8.8%、外国人比率1.9%、中途採用者比率13.7%(各比率間で重複あり)
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6における育児休業等の取得割合を算出したものです。
目標については、当初は同条第1号の定義に基づき設定していましたが、社内制度の変更に伴い、当事業年度より同条第2号の定義に基づき設定しています。実績についても当事業年度より同条第2号の定義に基づき算出しています。
配偶者が出産する時期(年度)と男性労働者が育児休業等を取得する時期(年度)が異なる場合があり、公表年度によっては取得率が100%を超えることがあります。
4.男性の育児休業取得者のうち当該年度の育児休業取得日数合計が14日以上のものの割合とします。
「2.人材獲得と配置」
人材獲得は益々重要になり、採用体制や処遇、福利制度等の強化策を進めています。またグループ内の拠点間のつながりを促進する中長期的な取り組みとして以下を実施しています。
(a)機動的な駐在制度(グローバルモビリティの推進)
人材交流を機動的に進め、グループ内の多様性を高めるため、一般的な「期間1年以上の駐在制度」に加え、「半年から1年未満の短期駐在制度」を実施しています。「日本から海外」だけでなく、「海外から日本」や「海外間」でグローバルに人材が交流しており、今後もこの取り組みを推進していきます。
(b)グローバルでの後継者育成計画
グローバルに社員一人ひとりの特性を生かしつつまた事業ニーズに対応するため、グローバル共通の仕組みと人材データベースを構築し、従来グループ会社別に実施していた後継者育成計画をグローバルに行えるように整備を進めています。
2024年度は各事業で部長ポストを対象にした後継者育成計画を初めてグローバルに実施し、後継者の準備状況の確認や人材の育成計画について人材会議で議論する仕組みを導入しました。2025年度は重要ポジションの後継者準備状況から課題を抽出し具体的なアクションプランの検討を開始しており、今後はそれに基づく戦略的な採用や人材配置・育成を実施していきます。
「3.人材育成」
現場力強化のための職場での教育や研修の組み合わせによる人材育成を進めています。国内では、自律的に自分のキャリアを考えるための研修にも力をいれています。戦略的に進めているグローバル人材育成として以下があります。
(a)グローバル人材育成プログラム
クラレグループでは、世界を舞台に活躍できる人材を国内外で育成することを目的に、2007年度より「グローバル人材育成プログラム」を実施し、2025年度までに国内外から1,225名が受講しています。なかでも課長層を対象にグローバルリーダーシップ開発を目的としたGTT(Global Team Training)はこれまでに23回開催・受講者が460名に達し、研修卒業生間のネットワークは、グループ内での国境を超えたコミュニケーションの促進に大きく貢献しています。言語や文化が異なるメンバーと働くことができるリーダー層の育成状況を示す指標として、部長層のグローバルリーダー研修の受講率を設定しています。
クラレグループにおけるグローバル人材育成プログラムに関する指標と目標及び実績
(注)1.海外拠点社員を含んでいます。
2.グローバルで部長層ポジション数を300として算出しています。
(b)経営幹部候補育成
計画的に経営幹部候補を育成し人材プールを形成すること、それにより中長期的な事業運営に資することを目的として、経営幹部候補育成プログラム「Kuraray Leadership Program」を実施しています。受講生は部長層、課長層からそれぞれ、多様性(職種、国籍、性別など)も踏まえて選抜し、部長層は2年間、課長層は3年間のプログラムを受講します。
毎年、社長を含む経営メンバーで各受講者の育成計画・状況を確認しながら、経営者視点の獲得や視野拡大を目的として、「未経験分野への異動などのタフアサインメント」「社内外の経営幹部との定期的な対話」「社外経営幹部
育成プログラムへの派遣」「クラレの理念を深く理解することを目的としたワークショップ」等のプログラムを実施しています。事業部長・本部長候補の準備率として当プログラムの受講者数を使用しています。
クラレグループにおける経営幹部候補育成に関する指標と目標及び実績
(注)1.海外拠点社員を含んでいます。
2. 事業部長・本部長相当ポジション数に対する経営幹部候補育成プログラムの修了見込者数とします。
(c)DX人材育成プログラム
クラレグループでは、全社員がデジタルの進化に常に適応し続ける風土、環境をつくり上げることが重要であると考え、2023年度よりDX人材育成プログラムをグローバル施策として開始しました。Gold、Silver、Bronzeの3段階のデジタルリテラシーレベルを設け、それぞれに対応した育成カリキュラムを整備し、計画に沿ってプログラムを実施してきました。2025年度までにデジタル活用による課題解決や業務改善、ビジネス創出に取り組む文化の定着が進みました。一方で研修修了者が増える中、より実践的なスキル習得を求める声が多く寄せられるようになったことから、Bronzeクラスの目標達成を一つの区切りとして本プログラムを再編し、次の段階へ移行します。
国内におけるDX人材育成プログラムに関する指標と目標及び実績
(注) 海外拠点社員を除き、国内グループ会社社員を含んでいます。
当社グループは、重大な経営リスクの適切な管理、法令遵守・企業倫理の徹底、公正な企業活動の実践を目的に、社長直轄のリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。グループリスク管理規定に基づき、国内外の各組織においてリスクの自己評価を実施し、リスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、社長が重大な経営リスクを特定、リスク毎に統括責任者を選定し、リスクの回避・軽減のための対策を進め、取締役会は対策の進捗を確認しています。
<リスク管理体制概要図>

当社グループにおけるリスク管理方針に則り、かつ近年の社会情勢及び産業界の動向に鑑み、以下を2025年度の「重点課題」とし、それぞれ対策を実施しました。
(課題1)機密情報漏洩・破壊リスク低減のため、グローバルで統一した情報セキュリティシステムを導入するとともに、機密情報管理ルールの徹底と運用状況のモニタリング結果に基づく改善策の着実な実行により、機密情報管理レベルの向上を図る。
(対策) 機密情報管理の継続的強化を図るため、2024年度に運用を開始した大量ダウンロード検知システム、大量ダウンロード自動停止システムについて検知精度の向上施策を推進するとともに、海外グループ会社における機密情報管理体制の整備を進めました。
(課題2)保安事故の発生リスク低減を目指し、全世界のプラントにおいて運転・設備管理の強化策を継続して実施する。組織横断的メンバーで構成するグローバルPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)監査チームの現地監査により保安管理上の課題を客観的に抽出し、その改善を支援するとともに、発見された課題についてグローバルに水平展開を実施しグループ全体の保安事故発生リスクの低減を図る。
(対策) 2019年度から開始した海外化学プラントに対する当該カンパニー・事業部によるこれまでの安全監査等に加えて、2022年度からはグローバルな社内専門家で編成した PSM監査チームの活動を立ち上げ、海外保安リスクの把握と対策を推進しています。2025年度は、PSM監査チームが4生産拠点の現地監査を行い課題把握と改善推奨を行いました。
(課題3)原燃料の調達リスクに対するリスク回避・低減対策を、サプライチェーン上流の最新動向を踏まえて修正し、各事業のBCP(事業継続計画)上優先度の高い製品にかかる原燃料から着実に実行する。
(対策) サプライチェーン上流の最新動向を踏まえて原燃料供給停止リスク及びリスク回避・低減策を修正し、各事業の優先生産銘柄及び原燃料供給停止リスクの分析結果に基づき、優先度の高いものから順次リスク低減策の策定・実施を進めました。
上記の重点課題を含め、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年12月31日)現在において当社グループが判断したものです。当社グループは、これら事業運営全体に関わるリスクに対して日々の事業活動の中でリスク低減に努めています。
① 事業環境の変化に関わるリスク
当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、グローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社グループの製品は特殊化学品が多く、商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、自動車(フロントガラス用PVBフィルム、ブレーキホース補強用ビニロン等)、電気・電子(液晶パネル用ポバールフィルム、コネクタ用耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉等)、環境(食品包装用EVOH樹脂〈エバール〉、水処理・空気浄化用活性炭等)、医療(歯科材料等)などの成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。また、自然環境・生活環境貢献製品等の優位性のある製品の開発や、IoT活用によるビジネスモデルの改革や業務プロセスのデジタル化等のデジタルトランスフォーメーション、社内外のリソースを結び付けることによるイノベーションの創出等に取り組んでいますが、最終製品における業界標準の転換、製品の短寿命化、グローバルな開発競争の激化等の環境変化により、重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされたり、固定資産の減損損失等の大規模な損失を計上する可能性があります。
② 原材料に関わるリスク
当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の主原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超える市況変動が生じた場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、長期購買契約の締結や購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めていますが、重要な原材料の提供を担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生、物流の混乱、日本や諸外国における経済制裁や各種規制等により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
③ 海外事業展開に関わるリスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上高比率が7割を超えています。当社グループは、米国、ドイツ、中国、香港、シンガポール、タイ、インド、ブラジルに設置している地域会社にて、各国・各地域のリスク情報収集及びビジネス動向の分析を常時行い、当該地域を越えて対応が必要となる場合は地域会社、カンパニー所管会社、本社の該当部署が連携する体制を構築しています。しかしながら、各国・各地域での大規模な伝染病の流行、戦争・暴動・テロ等、偶発的な要因や、国家や地域の対立による貿易戦争、予期せぬ法律、規制、税制などの変更によって、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢、中台関係を始めとする東アジア情勢の緊張化などのグローバルな地政学リスクの高まりにより、需要の低迷やサプライチェーンの混乱、原燃料の価格高騰や調達難など、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
④ 情報セキュリティに関わるリスク
当社グループは、事業活動の基盤である情報システム・ネットワークに様々なセキュリティ対策を実施するとともに、情報管理体制のさらなる強化を図っていますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセス等により情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の停滞や信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑤ 事故・災害に関わるリスク
当社グループは、日本、欧州、北米、アジア及び豪州に生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。当社グループは、安全に関する行動原則「安全は全ての礎」に従い、安全のマネジメントシステムを構築・運用し、爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、及び災害発生時の被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っている他、気候変動に起因する激甚災害に対するリスク評価を実施し、その対策を進めています。しかしながら、重大な保安事故、環境汚染、自然災害、大規模な伝染病の流行等が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じる可能性があります。
また、原燃料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
⑥ 製造物責任に関わるリスク
当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療(歯科材料等)、食品包装(〈エバール〉、バイオマス由来のガスバリア材〈PLANTIC〉等)など、最終製品の品質に対して重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失の発生、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等の可能性があります。
⑦ 人権に関わるリスク
近年、自社のみならずサプライチェーン等も含めた人権の尊重への取り組みが求められています。当社グループは、「私たちの信条」において、企業活動に関わる全ての人々を個人として尊重し、その人格と自律を認め合うことを理念の1つとして掲げています。また、人権の尊重に対する当社グループの姿勢及び責任を明確に示すため「クラレグループ人権方針」を制定し、人権侵害リスクの特定・軽減・防止・是正に向けた取り組みを進めていますが、当社グループの事業活動により直接または間接的に人権に負の影響が生じた場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等により当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑧ 法規制・コンプライアンスに関わるリスク
当社グループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を「私たちの誓約」として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定めています。そして、法令及び「私たちの誓約」を厳守することを経営トップが宣言しています。この宣言を明記し、「行動規範」をわかりやすく解説したコンプライアンス・ハンドブックを、世界中の当社グループ社員全員に配布し周知徹底を図っています。また、当社各地域拠点及びグループ各社において、コンプライアンス統括者を選任するとともに地域別にコンプライアンス委員会を設け、全社的なテーマの他、地域特有のテーマについても取り組んでいます。
独占禁止法遵守に向けた取り組みとしては、グローバルなコンプライアンスプログラムを構築しています。具体的には、独占禁止法遵守指針の定期的見直し、競合他社との接触に関するガイドラインの制定、競合他社との取引・会合の事前審査、役員・従業員向けセミナーの開催、遵守状況に関する社内聴取、入札情報の管理及び入札部署を対象とした法務部監査等の様々な施策を行っています。
以上のとおり、コンプライアンスの徹底を図っていますが、重大な法令違反を起こした場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜に加え、損害賠償責任や罰金が課されることなどにより、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、各国の様々な法規制の適用を受けています。将来的に法規制の大幅な変更や規制強化がなされた場合には、新たな対策コストの発生や事業活動の制約につながり、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑨ 訴訟に関わるリスク
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法的手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑩ 環境に関わるリスク
当社グループは、「クラレグループ環境基本方針」を定め、環境に関する各種法規制を遵守するとともに、GHG排出量削減等の地球温暖化対策の推進、化学物質の排出抑制、資源の有効利用等の環境改善に継続して取り組んでいます。また、気候変動がもたらす異常気象や激甚災害へのリスク評価及び対策を強化しています。これらに加え、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿って当社グループにおける気候変動への取り組みについて開示しています。しかしながら、予期せぬ事故や自然災害等により環境汚染が生じた場合や、環境に関する規制が強化された場合は、事業活動の制限や対策費用の増加等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑪ 知的財産に関わるリスク
当社グループは、独自技術による事業・製品を数多く有しています。当社グループの知的財産権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生した場合、また当社グループが他社の知的財産権を侵害した場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑫ 人材の確保に関わるリスク
当社グループにとって、人材は当社グループの事業推進及び持続的成長・発展のために重要かつ不可欠な経営資源であると考えています。ダイバーシティとインクルージョンを推進しつつ、国内外グループ会社を対象としたエンゲージメントサーベイの定期的実施、職場環境及び人事制度・報酬の継続的な見直し、多様な教育・研修の実施等により、従業員にとっても自己成長・実現が可能で働きがいのある魅力的な会社であり続けられるよう努めていますが、少子・高齢化に伴う労働人口の減少や雇用流動化の進展等を背景として、採用難や流出、必要な人材を確保できない場合は、事業活動の停滞等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑬ 為替の変動に関わるリスク
当社グループは、日本、欧州、北米、アジア及び豪州などの海外諸地域で生産、販売を行っています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格及び外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。為替予約等によるリスク軽減措置を講じていますが、想定を超える為替変動により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年12月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の概況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、各国の貿易政策により先行きが見通しにくい状況が続きました。日本経済は内需に支えられ、緩やかに回復しました。米国経済は、AI関連分野は好調だったものの、その他分野は低調に推移しました。欧州経済は緩やかな拡大基調を維持したものの、低成長が継続しました。中国経済は不動産市況の低迷に加え、政府の景気刺激策に支えられてきた個人消費が減速し、低成長となりました。
かかる環境下、当社グループは、2022年度からスタートした中期経営計画「PASSION 2026」に掲げる3つの挑戦、①機会としてのサステナビリティ、②ネットワーキングから始めるイノベーション、③人と組織のトランスフォーメーション、を推進するとともに、事業ポートフォリオの高度化を進め、成長性、競争力の高い事業・製品のさらなる強化を図りました。「成長・拡大事業」「基盤事業」と位置づけた事業・製品では、新たな設備投資や買収など将来の成長に向けた意思決定を行いました。一方で、将来に向けて改善が見込めない一部の事業・製品においては、事業譲渡あるいは縮小・撤退といった判断を行いました。
その結果、当社グループの業績は、売上高は前期比18,447百万円(2.2%)減の808,447百万円、営業利益は26,198百万円(30.8%)減の58,882百万円、経常利益は29,964百万円(36.8%)減の51,515百万円となりました。なお、イソプレンケミカル事業関連資産及びエラストマー事業におけるスチレン系熱可塑性エラストマー関連資産での減損損失などを特別損失に計上したため、親会社株主に帰属する当期純利益は24,256百万円(76.5%)減の7,468百万円となりました。
(単位:百万円)
[ビニルアセテート]
当セグメントの売上高は404,495百万円(前期比2.5%減)、営業利益は62,545百万円(同28.6%減)となりました。欧州経済の停滞等により想定したほど販売数量は増えず、また利益面では在庫評価差額や原燃料価格上昇によるマイナス影響がありました。

ポバール樹脂:販売数量は前年の欧州向け物流の混乱に起因した特需が一巡したことに加えて、欧米中心に需要が低調となったことから減少しました。利益面では原燃料価格上昇によるマイナス影響がありました。なお、米国工場において、外部購入ユーティリティの供給停止や一部製造設備の不具合が発生し、製造を一時停止しました。
光学用ポバールフィルム:販売数量は中国の家電買替支援策や国際的なスポーツイベントに向けたテレビの買い替え需要に支えられ増加しました。利益面では在庫評価差額によるマイナス影響がありました。
高機能中間膜:特殊アイオノマーシート〈セントリグラス〉は米州を中心に販売が順調に推移しましたが、PVBフィルムは欧州・アジアを中心に競争環境の厳しさが増しており、建築用途及び自動車用途ともに販売数量が減少しました。
水溶性ポバールフィルム:個包装洗剤の需要増加により販売数量は増加しました。
EVOH樹脂〈エバール〉:食品包装用途は欧州・アジアで想定したほど販売数量が増えませんでしたが、自動車用途は堅調に推移し、全体として販売数量は増加しました。一方で、利益面では在庫評価差額や原燃料価格の上昇によるマイナス影響がありました。
[イソプレン]
当セグメントの売上高は80,378百万円(前期比5.3%増)となりました。営業損失は4,864百万円(前期は営業損失9,498百万円)となりました。タイ拠点の稼働が安定し、当該拠点を活用した拡販を進めました。なお、事業環境の悪化に伴い、当第4四半期においてイソプレンケミカル事業関連資産及びエラストマー事業におけるスチレン系熱可塑性エラストマー関連資産に係る減損損失を特別損失に計上しました。

イソプレンケミカル・エラストマー:イソプレンケミカルは中国の建築用途需要低迷に加え、上期に米国関税政策の影響により需要が前倒しとなった結果、第3四半期以降はその反動で需要が落ち込みました。エラストマーは販売数量が増加したものの、米国関税政策により欧州市場等においてアジアの競合メーカーとの競争が激化しました。
耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉:電気・電子用途、自動車用途とも拡販が進み、販売数量が増加しました。
[機能材料]
当セグメントの売上高は206,939百万円(前期比0.5%減)、営業利益は10,826百万円(同16.4%減)となりました。米国寒波に加え、生産トラブル等による業績へのマイナス影響がありました。

メタアクリル:2025年7月からメタクリル酸メチル及び一部の川下製品の生産能力を縮小したことに加えて、一時的な生産トラブルがあり販売数量が減少しました。
メディカル:審美治療用歯科材料の販売が欧米を中心に引き続き好調に推移しており、今後の拡販に向けたマーケティング強化を進めました。
環境ソリューション:活性炭の販売数量は飲料水用途を中心に増加したものの、米国関税政策や景気の先行き不透明感から一部顧客において購入時期を見直す動きがみられ、想定数量には届きませんでした。加えて、2024年12月に珪藻土、パーライト事業を譲渡したことによる減収影響がありました。利益面では米国寒波や生産トラブルによるマイナス影響がありました。
[繊維]
当セグメントの売上高は60,749百万円(前期比3.1%減)、営業利益は2,633百万円(同118.1%増)となりました。欧州経済の停滞やEVの生産調整等による影響を受けたものの、販売構成の改善等による寄与がありました。

人工皮革〈クラリーノ〉:靴用途は新規採用の効果により堅調に推移しましたが、欧州市場での需要低迷や中国経済の成長鈍化、EVの生産調整の影響等により、ラグジュアリー用途及び自動車用途を中心に販売数量が減少しました。
繊維資材:欧州の建材用途は低調が続いたものの、液晶ポリマー繊維〈ベクトラン〉の拡販などにより販売構成の改善が進みました。
[トレーディング]
当セグメントの売上高は68,766百万円(前期比1.7%増)、営業利益は6,039百万円(同2.1%増)となりました。

繊維関連事業:スポーツ・アウトドア衣料用途が順調に推移しました。また、高機能原糸や環境対応商品といった高付加価値品の拡販を進めました。
樹脂・化成品関連事業:アジア市場を中心に樹脂及び加工品の販売が拡大しました。
[その他]
その他事業の売上高は40,794百万円(前期比19.8%減)、営業利益は1,795百万円(同21.8%減)となりました。

(2) 当期の財政状態の概況
総資産は、現金及び預金の減少13,965百万円等の一方、受取手形、売掛金及び契約資産の増加11,740百万円及び棚卸資産の増加11,605百万円等により、前連結会計年度末比12,272百万円増の1,303,511百万円となりました。負債は、有利子負債の増加40,637百万円等により、前連結会計年度末比38,887百万円増の548,335百万円となりました。
純資産は、資本剰余金の減少等により、前連結会計年度末比26,614百万円減の755,175百万円となりました。自己資本は742,620百万円となり、自己資本比率は57.0%となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益19,821百万円に対して、減価償却費84,702百万円、減損損失29,626百万円及び法人税等の支払額22,799百万円等により、営業活動によるキャッシュ・フローは98,591百万円の収入となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
有形及び無形固定資産の取得94,177百万円等の支出により、投資活動によるキャッシュ・フローは98,129百万円の支出となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
有利子負債の増加額39,245百万円、自己株式の取得30,004百万円及び配当金の支払額17,367百万円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは16,305百万円の支出となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より13,378百万円減少して、108,314百万円となりました。
(単位:百万円)
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標は以下のとおりです。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により計算しています。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
4.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、長期借入金及び社債の合計額を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
当社グループの資金需要は、営業活動に必要となる運転資金や設備投資、M&A等に係る投資資金が主なものです。これらの資金需要に対しては、自己資金のほか、必要に応じ、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により資金調達を行っています。
また、資金需要に応じて柔軟に資金調達ができるよう、信用格付けの維持向上や金融機関、資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、金融機関とコミットメントライン契約を締結しています。
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の概況及び分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(財務上の特約が付された金銭消費貸借契約)
当社が締結している財務上の特約が付された金銭消費貸借契約は次のとおりです。
なお、2024年4月1日以前に締結された財務上の特約が付された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しています。
当社グループにおける研究開発活動は、私たちの使命「私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。」に基づいて、カンパニー・グループ会社に所属するディビジョナル研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。
ディビジョナル研究開発は、カンパニー・グループ会社等が各事業所に研究開発部署を有しています。
コーポレート研究開発は、研究開発本部内に、くらしき研究センターとつくば研究センターの2拠点に加え、東京女子医科大学・早稲田大学 連携先端生命医科学研究教育施設 TWIns(ツインズ)に「東京ラボ」を有しています。またイノベーションネットワーキングセンター及びポートフォリオ戦略部との連携のもと新規事業創出を推進しています。生産技術に関しては、技術本部 技術開発センターにおいてシミュレーション技術を活用した原理原則に基づく生産技術開発を進めており、主要な研究開発テーマについては早期設備化を推進しています。並行してデジタル技術を活用した生産効率、及び品質向上への取り組みも着実に進めています。
ディビジョナル研究開発とコーポレート研究開発を合わせた当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発人員数は1,115人です。
当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート
セグメントごと及びコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。
[ビニルアセテート]
・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、EVOH樹脂〈エバール〉(樹脂、フィルム)のビニルアセテートチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進し、新たな価値を顧客に提案します。また、社会情勢やニーズの変化を成長機会と捉え、地球環境改善や社会貢献につながる製品開発を積極的に行っています。その中で、グローバルサプライチェーンのサステナビリティ向上の取り組みとして、製造現場の省エネ技術開発とともに、バイオ原料・リサイクル原料の活用を進めており、チェーン全体でのISCC PLUS認証の取得を推進しています。昨年までに取得した欧米中心の5拠点に加え、日本の事業所へと拡大し計9拠点となり、ほぼすべての主力製品を認証スコープに取り込みました。加えて、伸長著しいインドや東南アジア地域でのマーケティングを更に加速するため、シンガポールにテクニカルセンターを開設し、2025年9月より運用を開始しました。ポバール樹脂及び〈エバール〉樹脂を中心に当該地域でのテクニカルサービスの一層の充実を図り、各ステークホルダーの皆様方との協創展開を通じて市場開発を加速します。
・ポバール樹脂は、ビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、これまで培った技術開発力をベースに自消・外販両面で高品質かつ差別化された製品を提供します。日米欧亜の6工場をベースとしたグローバルネットワークを強みとして、世界各地の顧客に対して安定供給を図るとともに、ポバール樹脂の安全かつ環境に優しい特徴に注目し、新たな用途、ビジネス機会を提案します。
・ポバールフィルムは、液晶ディスプレイ向け光学フィルムの構成部材の一つとして、さらなる高性能化・高品質化に加え、顧客での生産性向上などにも顧客と一体となって取り組んでいます。なお、100インチを超える広幅パネルへの需要増に対応するため、2024年度第2四半期の新ライン稼働に加え、更なる新設備の投資を決定しました(2027年12月稼働予定)。
・PVBフィルムは、自動車・建築向け合わせガラス用中間膜の高付加価値品の開発を進めており、新たな価値を顧客に提案しています。その一環として、近年の先進運転支援システム(ADAS)の進展により、今後益々高度な光学精度がカメラに求められる中、フロントガラスの光学歪みを低減できる特殊PVBフィルム〈Cam Viera〉や意匠性を高めたサンルーフ向け特殊PVBフィルム〈Sky Viera〉など最先端の技術提案を行っており、〈Sky Viera〉は2025年度から採用及び販売を開始しました。また、アイオノマー樹脂をシート化した〈セントリグラス〉の更なる高付加価値化やPVBフィルムとのシナジー効果の発現、新規用途開発を引き続き推進しています。また、顧客の合わせガラスメーカーにて発生するPVBフィルムトリムを回収・有効活用する再生中間膜のビジネスモデルを確立しており、カーボンフットプリント削減にも積極的に取り組んでいます。
・〈エバール〉樹脂は、世界規模で食品廃棄ロスの削減や環境負荷の低減が求められるなか、日米欧の3拠点に加え、シンガポールでの新プラント建設を決定し、グローバル4拠点体制での供給網を構築中です。これにより、世界各地の顧客ニーズや市場動向を把握しながらバリア材料の新技術開発・用途開発を推進し、持続的な成長を目指します。〈エバール〉フィルムは、省エネルギー・地球環境保全に貢献する用途へ積極的に展開していきます。さらにバイオマス由来のガスバリア材料〈PLANTIC〉については、CO2排出削減効果とガスバリア性を併せ持つ新素材として、用途開発に取り組んでいます。
[イソプレン]
・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーを展開しており、溶剤やウレタン原料、香粧品原料などを中心に用途開発に取組んでいます。近年は、EVバッテリー材料や生分解性樹脂改質剤、家庭用・産業用洗浄剤など、社会のニーズにタイムリーに応える開発を推進しています。
・エラストマー関連では、熱可塑性エラストマー及び液状ゴムの差別化・高付加価値化に取り組んでいます。熱可塑性エラストマーでは、軟質コンパウンドや樹脂改質などの用途で環境に配慮した製品を開発し、市場開発を推進しています。また液状ゴムは、主力のタイヤ用途で様々なタイプの製品を市場に提案し、高機能タイヤの改質剤として採用が広がっています。
・耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉では、サーバー向けコネクタ及び自動車用コネクタ等に適した電気・電子用途向けのグレード開発に注力するとともに、自動車の環境規制強化や電気自動車の急速充電時の高電圧化に対応するため熱マネジメント部品や高電圧部品に適した材料の開発を加速しており、部品メーカー各社で評価が進んでいます。
[機能材料]
・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発、リサイクル技術開発を主体に研究開発活動を行っています。
・メディカル事業では、クラレノリタケデンタル株式会社の無機/有機の技術の融合による新規歯科材料の開発に注力し、CAD/CAM用ジルコニア、高強度レジン等のデジタル化の流れにも対応した開発、商品化を行っています。
・環境ソリューション事業では、重点戦略領域である「環境(水・大気)・エネルギー」分野において、環境阻害物質の効果的吸着剤開発と商品群展開、吸着物の無害化処理を含む吸着活性炭の再生技術及び再利用法の開発を推進しています。また、拡大するエネルギー関連材に向け、新素材、新商品開発に取り組んでいます。
・アクア事業推進本部では、中空糸水処理膜を用いた様々な水の製造・回収を通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・技術開発に取り組んでいます。
[繊維]
・液晶ポリマー繊維〈ベクトラン〉は、極低温域までの広い温度領域において、高強度、低誘電損失、低線膨張であることに加え、ほとんど吸水することがない特質を有していることから、海洋資材、光ファイバー等の電材など高機能、高性能であることが求められる分野で需要が広がっており、さらなる用途拡大を目指し、性能向上、用途開発を進めています。またリサイクル技術開発を推進し商品価値の向上に取り組んでいます。
・ビニロン事業では、社会のニーズに応えるべく、ゴム補強、難燃衣料、特殊紙などの用途に向けた製品及び生産技術の開発を進めています。
・人工皮革〈クラリーノ〉では、靴やラグジュアリー用途などに向けて、リサイクル原料を使用した製品や環境配慮型製造プロセスによる製品など、サステナブルで低CFP(カーボンフットプリント)である製品の開発に取り組んでいます。
・不織布事業では、メルトブローン不織布の開発に注力し差別化樹脂銘柄、各種複合銘柄の開発を進めています。
[トレーディング]
・ポリエステル長繊維〈クラベラ〉では、①地球環境に配慮した独自原糸(PETボトル再生樹脂を用いた機能繊維〈スペースマスター〉、再生ナイロンを用いた分割繊維〈WRAMP〉)、②独自の樹脂を用いて糸自体に性能付与した速乾繊維〈エプシロン〉、抗ピリング繊維〈パナパック〉、③衣服内環境を制御した生地の開発を推進しています。
[その他]
・クラレプラスチックス㈱では、スチレン系エラストマーを使用した機能性コンパウンド〈アーネストン〉及び同コンパウンドを原料とした不織布やフィルム(コンパウンド二次製品)、〈エバール〉をコーティング加工した特殊フィルム、成型加工技術による高気密高断熱住宅向け換気・空調ダクト及び周辺部材、高強力繊維〈ベクトラン〉を使用した土木用途向け繊維複合ホースの開発を推進しています。
[コーポレート研究開発]
研究開発本部では、以下を通じて、当社グループ全体の業容拡大・収益向上に資することを目指しています。
① 新事業の創出:素材事業を主に、加工による付加価値化もターゲットに、社内外の連携を通じて早期の事業化、利益貢献を目指します。特に、検討ステージが高いテーマや、当社が原料から一貫して強みを発揮できるテーマを中心に、研究開発リソースを集中して投入することで、早期事業化を図っています。
② 既存事業の強化・拡大:カンパニー・グループ会社との協働体制のもと、分析・解析・成形加工・デジタルなど高度な技術を駆使して全社事業の盤石化を図るとともに、既存事業の拡大に貢献します。また当社グループ事業の急速なグローバル化に対応し、グループ海外拠点との連携を強化しています。
以下、研究開発活動を示します。
研究開発本部では、触媒技術や高分子化合物の設計・重合・変性技術、高分子材料の成形・加工技術、炭素材料の合成技術等の基盤技術をベースに、新たな要素を加え、新規の素材・部材創出に取り組んでいます。
再生医療などライフサイエンス領域での事業創出に向けた研究開発を推進し、再生医療用の細胞を安全・効率的に培養できるPVAマイクロキャリア(細胞培養担体)〈スキャポバ〉の事業化に取り組んでいます。2024年から国内販売を開始しました。2025年から米国での販売を開始し、欧州への展開も計画しています。東京女子医科大学・早稲田大学 連携先端生命医科学研究教育施設 TWIns(ツインズ)に設立した「東京ラボ」にて、顧客ソリューションの充実や産学連携の強化を図っています。また、炭素材の構造制御技術を駆使して開発した新規機能性炭素材は、特殊な細孔構造により、リチウムイオン二次電池の正極用添加剤として優れた効果を発揮します。特に寒冷地向けの急速充電の改善効果が期待されており、一部顧客で評価がスタートしています。加えて、サステナビリティを機会ととらえ、フッ素樹脂代替材料(PFAS規制対応)として可能性が期待される新規高機能性ポリマーの開発も推進しています。
競争力強化を目的に、2025年1月に新設したデジタルソリューション部では、開発プロジェクトとの協業を通じて、高度シミュレーション技術、マテリアルズインフォマティクスの活用、独自AIの開発やロボティクスによる自動化といった各種デジタル関連技術の活用の幅を広げてきており、研究開発の加速や効率化など、そのあり方の変革が進んでいます。
[イノベーションネットワーキングセンター]
イノベーションネットワーキングセンター(以下、「INC」という。)は、中期経営計画「PASSION 2026」で掲げる「3つの挑戦」の内の1つ「ネットワーキングから始めるイノベーション」を推進するため、2022年1月に設立されました。INCは社内外のネットワーキングを広げながらイノベーションを生み出していけるよう、アクセラレーターの役割を担いグループ一丸となった活動を推進しています。
多様なバックグラウンドをもち、グローバルに展開する80名余のINCメンバーと各本部や事業部門が連携し、クラレグループの多様な人材、ユニークな技術力、これまでに培った顧客との関係性や市場へのアプローチ手法などを駆使することで、中長期的な視点から新たなビジネス機会の創出に取り組んでいます。この組織が担う業務・役割は主に以下になります。
①当社グループの保有する技術開発力、お客様との繋がり、多様な人材といった総合力を全社員で共有するプラットフォーム(コア技術プラットフォーム)、試作用設備を全社で共有するためのプラットフォーム(技術設備プラットフォーム)を展開し、ネットワーキングを推進します。
②グループ全体で取り組んでいる新規ビジネス開発プロジェクト群の優先順位を明確にし、事業創出の確度を高めるためのシステム(イノベーションパイプライン)を運用しながら、各プロジェクトのインキュベーションを進めます。
③当社グループソリューション群をまとめて市場へアプローチするため、自動車、紙・包装資材、建築・建設といった市場セグメント別のマーケティングチームを横串で運営します。INCメンバーが主導して各チーム運営を行い、お客様に持続的な提案をすることによってビジネス機会を発見・発掘し、顧客やパートナー企業との協業を進めます。
以下、INCの2025年度の成果を示します。
・2023年に立ち上げたコア技術プラットフォーム、及び技術設備プラットフォームの利便性向上を目的に、AI検索機能を開発し、本格運用を開始しました。また、全社最適の観点から、当社の他プラットフォームとの連携を検討開始しました。
・昨年度より正式に稼働したイノベーションパイプラインには、現在7件の新規ビジネスプロジェクトが登録されており、研究開発本部や事業部のプロジェクトメンバーとINCのインキュベーターが事業化に向けて推進しています。さらに、運用ルールの整備や中断したプロジェクトから得られた知見の共有を進め、テーマ選定における判断力の向上を図っています。
・市場セグメントごとのチーム活動を基盤に、KAM(Key Account Management)とABM(Account-Based Marketing)を推進しました。国内外で600件以上の顧客対話・提案を実施し、その結果、4つの新規テーマがプロジェクトとして本格稼働しました。さらに、事業部連携によるクロスセル活動を通じて、既存技術を活用した新用途検討やビジネス機会の拡大を図りました。
・グローバル全社での新規プロジェクト創出とイノベーション文化の醸成を目指し、「第3回イノベーションデイズ」を開催しました。国内外34名の有志メンバーが集結し、4テーマを設定し集中的に議論しました。現在もイノベーションパイプラインへの提案に向けて、精力的にテーマ検討を続けています。
・2025年4月に米国カリフォルニア州に本社を置くNelumbo Inc.を買収し、PMI活動を推進しました。同社の無機系表面改質技術はPFAS等の規制物質を用いず、幅広い基材に高機能性を付与できるものであり、当社の高分子化学技術との融合により新事業創出を目指します。