文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間において、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会を実現することを目指し、仕事の効率化や新しく創造的な働き方を実現する製品やサービスの開発・提供に取り組んでおります。
少子高齢化が進む日本社会において、社会福祉を支え国際競争力を上げるにあたり労働生産性の向上が最大の焦点となっています。特に日本の労働人口の69.7%を占める中小企業(注1)において労働生産性は長期で伸び悩んでおり、低労働生産性の根本原因となっております。労働生産性向上にはIT投資(DX)が重要でありますが、リテラシーや予算の問題が大きく投資が進んでおらず、80%以上の中小企業(注2)がDXに取り組めていないのが現状であります。
また、現在ビジネスチャットの普及率は23.7%(注3)と低く、今後も大きく普及が広まるものと考えられます。こうした環境を踏まえると、当社のChatworkの認知度拡大に伴い当サービスへの需要はこれまでよりも早いスピードで拡大していくものと期待しております。
このような経営環境のもと中長期での成長を目的として2026年度を最終年度とする中期経営計画を策定しております。中期経営計画では、2026年までに中小企業No.1 BPaaSカンパニーのポジションを確立し、長期的には中小企業市場における圧倒的なシェアを背景に、あらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリとしてプラットフォーム化していくことを目標としております。2024~2026年では、中小企業No.1 BPaaSカンパニーの目標に向けてグループ全体の成長を加速させると共に、利益を生み出せる体制の構築を進めてまいります。
中期経営計画の財務目標は、2024~2026年連結売上CAGR30%以上の成長、2026年EBITDAマージン10~15%とし、最終年度である2026年度では連結売上高150億円、EBITDA15~22.5億円を目指してまいります。目標の達成に向けてビジネスチャットの売上成長を継続しつつ、次の成長の柱であるBPaaSの売上急拡大、新規事業の立ち上げを実現してまいります。
① コミュニケーションプラットフォーム戦略
主力サービスであるビジネスチャット「Chatwork」は強みである社内外がシームレスにつながるオープンプラットフォーム性と無料からはじめられるフリーミアムの特性によるネットワーク効果を活かしたPLG戦略を軸にユーザーの獲得を進めてまいります。ユーザー数の極大化とアクティブ率を向上させることで、中小企業領域において他に類を見ない高価値なプラットフォームの確立を目指します。
② BPaaS戦略
顧客の業務効率と生産性向上をサポートするため、経理業務や労務業務等のノンコア業務について、ソフトウェアの提供にとどまらずそれらの業務のビジネスプロセスそのものをサービスとして提供するBPaaSを展開し、Techと人をハイブリッドした高い生産性のオペレーションを確立させ、経営における幅広い領域での本質的なDXの実現を目指します。
③ インキュベーション戦略
R&Dを進め、グループのアセットやポジショニングを活かし、ターゲットの拡張も意識した事業展開を推進することで、非連続成長の柱となる付加価値を創造することを目指します。
(注1)中小企業庁「中小企業白書」2025年度版
(注2)独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査」2025年12月調査
(注3)当社依頼による第三者機関調べ。2025年4月調査
当社グループは上記「(2)経営環境及び経営戦略」に記載の通り、中長期で成長を加速させると共に、利益を生み出せる体制の構築を進めております。経営指標としましては経営計画の財務目標となる売上高およびEBITDAを重要と考えております。
当社グループとして捉えている対処すべき主要課題は以下のとおりです。
① 顧客基盤の拡大とエンゲージメントの向上
当社グループのビジネスの根幹は、国内最大級の利用者数を有する「Chatwork」の顧客基盤にあります。中小企業のDXの入り口として、圧倒的なシェアを確立することが競争優位の源泉となります。このため、プロダクト主導の成長戦略(PLG:Product-Led Growth)を推進し、口コミやネットワーク効果を通じた効率的なユーザー獲得を加速させます。また、セキュリティを担保した上でのID登録の簡素化やユーザーインターフェースの改善を継続的に実施し、登録ID数及びアクティブユーザー数の最大化に努めてまいります。
② クロスセルの推進とBPaaS事業の拡大
当社グループは、国内最大級の利用者数を有する「Chatwork」の広範な顧客接点を基盤に、グループが保有する多様な商材のクロスセルを推進しております。その中でも特に、中長期的な成長の中核を担う主事業としてBPaaS事業を位置づけており、経理・労務・総務・採用等のノンコア業務を代行する「タクシタ」や「MINAGINE 労務アウトソーシング」等への展開を加速させてまいります。これらの取り組みを通じて、顧客一社当たりの平均単価(ARPU)の向上及び顧客獲得単価(CAC)の低減を実現し、顧客のLTV(Life Time Value)の最大化を図ってまいります。
③人とテクノロジーの融合による生産性の向上
BPaaS事業の拡大においては、労働集約的な側面を排除し、高い収益性を確保することが課題となります。当社グループは、オペレーターによる業務遂行に加え、生成AIやSaaS等のテクノロジーを徹底的に活用することで、業務プロセスの効率化・自動化を推進いたします。オペレーションの型化やAIエージェントの開発を進め、「人」と「テクノロジー」をハイブリッドに組み合わせることで、サービス品質の維持・向上と利益率の改善を両立させてまいります。
④ セキュリティ、内部管理体制の継続的な向上
当社グループが提供するサービスは、多数の企業の機密情報や個人情報を取り扱っており、社会的なインフラとしての側面を有しております。そのため、サイバー攻撃やシステム障害のリスクに対し、専任の組織による監視体制を整備し、脆弱性診断等の技術的な対策に加え、個人情報管理体制の整備やアクセス制限等のシステム統制といった内部管理体制の強化も推進しております。また、BPaaS業務の拡大に伴い、内部脅威対策製品の導入等、情報の持ち出しに対する監視を実施しております。今後も、堅牢なセキュリティ体制の構築とシステムの安定稼働に継続して投資を行ってまいります。
⑤優秀な人材の確保と育成
SaaS及びBPaaSの両輪で事業を成長させるためには、高度なプロダクト開発を担うエンジニアやデザイナー、顧客の業務課題を解決する専門性の高いオペレーション人材、及び業務の効率化、自動化を強力に推進するAI人材の確保が不可欠です。そのため、既存人材の能力及び技術の向上のための教育・研修体制を充実させてまいります。また、サステナビリティの重要課題として掲げる「楽しく創造的に活躍できる人材の創出」に向けた組織文化の浸透を図ることで、優秀な人材の採用と定着、育成に努めてまいります。
⑥M&A・組織再編の推進とグループ・ガバナンスの強化
「ビジネス版スーパーアプリ」の実現に向け、自社開発のみならず、当社グループとのシナジーが見込める企業のM&Aや資本業務提携を主戦略の1つと位置付け、推進してまいります。特にBPaaS領域においては、専門的なノウハウを持つ企業のグループインを進めており、買収後の組織統合(PMI)や機動的な組織再編を迅速かつ円滑に進めることで、早期のシナジー創出を目指します。
一方で、事業領域の拡大に伴い、グループ全体での管理体制の構築が急務となっております。そのため、各グループ会社の独立性を尊重しつつも、グループ全体での内部統制体制の強化等を継続して検討・推進いたします。攻めのM&Aと守りのガバナンスを両立させることで、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、顧客からの信頼を獲得できるよう努めてまいります。
当社グループでは、サステナビリティビジョンを「誰もが働くことを楽しみ、創造性あふれる豊かな社会を」と掲げ、持続可能な社会の実現に向けて取り組みを進めております。
当社グループは、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の多くを費やす「働く」という時間を、生活の糧を得るという基本的な目的に留まらず、一人でも多くの方が夢や志の実現にむけて創造性を発揮し楽しみながら働けるような社会の実現を目指しております。事業を通して夢や志の実現にむけていきいきと働く人が増え、働く人々の人生を豊かにし、そこで生み出された価値が私たちの社会をより豊かで持続可能なものに変わる社会を創ることで貢献をいたします。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものでございます。
当社グループでは、代表取締役CEO直属のCEOオフィスを主管部署とし、CEOオフィスグループ長を推進責任者とするサステナビリティ・ESGの推進体制を整備しています。サステナビリティ上の重要課題については、それぞれに対して当社執行役員を責任者として設定し、その監督の下で対応方針や取り組み内容を検討しています。また、サステナビリティに関わる活動推進および情報開示は組織横断のプロジェクトチームを設けて推進する体制を整備しています。
理念の実現にむけて、当社グループが中長期的に取り組むべき財務・非財務両面から見た重要課題を検討し、取締役会での承認を経て「ミッション・ビジョンの実現にむけた11の重要課題(マテリアリティ)」を特定しました。
このマテリアリティは、大きく「事業を通じた社会価値の創造」「価値創造基盤の強化」「地球規模の社会課題解決への貢献」の3カテゴリからなり、優れた価値創造基盤づくりを進めることで、当社グループにしか提供できない価値を創造し、それにより理念の実現とサステナブルな社会への貢献を目指すものです。
マテリアリティの策定とあわせて特定したリスクと機会は、サステナビリティ推進体制において管理しています。リスク管理の詳細は
特定したマテリアリティと2030年のゴールに向けたアクションは以下の通りです。各マテリアリティに関する取り組みや指標についてはウェブサイト上で公開しております。
日本語:https://www.kubell.com/sustainability/data/
英語 :https://www.kubell.com/en/sustainability/data/
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。
当社グループはこれらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針です。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
①中小企業のDX市場環境について
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、中小企業における労働力不足は深刻化しており、業務効率化を実現するDX(デジタルトランスフォーメーション)や、業務オペレーションを外部委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)への社会的要請は高まっているものと認識しております。
当社グループが展開するビジネスチャット「Chatwork」はビジネスコミュニケーション効率化の手段として有効であることに加え、ITリテラシーやリソースに課題を抱える中小企業においては、チャットを通じてビジネスプロセスそのものを請け負う「BPaaS(Business Process as a Service)」が、実効性のあるDXを推進する有力な手段であると考えております。中小企業におけるこれらサービスの導入率は、依然として大企業と比較して低水準にあり、当社の主要ターゲットである中小企業市場における潜在的需要は極めて大きいものと認識しております。
しかしながら、将来において経済情勢や景気動向の悪化等により、企業のIT投資やバックオフィス業務のアウトソーシング費用の抑制が生じた場合には、これら市場の拡大が当社グループの想定を下回る可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②競合について
当社グループが事業を展開するビジネスチャット、クラウドストレージ、勤怠管理等のSaaS市場及びBPaaSを含むBPO市場においては、国内外の多様な企業が参入しており、近年、SaaSの社会的な浸透やAIサービスの活用により競争が加速しているものと認識しております。当該領域においては、特定の業務領域に特化したツールを提供する企業やアウトソーシング受託企業が多数存在しており、これら企業との間で競合が生じております。また、一般にクラウドサービスやBPaaSを含むBPOサービスは参入障壁が比較的低いものと認識しております。
当社グループのコアサービスであるビジネスチャット「Chatwork」は、国内最大級の導入社数及び登録ID数を背景とした、圧倒的な中小企業の顧客基盤を有しております。加えて、直感的なユーザビリティや社外ユーザーを招待しやすいシステム上の特性により、ユーザー同士の紹介を通じて利用者が複利的に増加する独自のネットワーク効果を強みとしております。これらビジネスチャットの強固なプラットフォームを起点に、顧客のノンコア業務を支援する各種SaaSやBPaaSのクロスセルを推進しております。さらに、継続的な機能強化やAI等の最新技術の活用に加え、BPaaSとSaaSが密接に連動するプロダクト開発を推進することで他社との差別化を図り、サービスの競争力維持・向上に努めていく方針です。
なお、競合企業の参入や拡大は市場全体の活性化に繋がる側面もありますが、特定の業務領域における価格競争の激化、あるいは当社グループの顧客基盤やシステム上の優位性が損なわれ競争力が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③技術革新及び顧客需要の変化への対応について
当社グループが属するインターネット業界においては、AI技術の飛躍的な進化をはじめとして、市場及び顧客ニーズ、技術の変化が非常に速く、それに基づく新サービスの投入が相次いで生じております。
当社グループは、このような変化に迅速にキャッチアップすべく、当社プロダクト及びサービスへのAI機能の実装やAI活用によるオペレーションの効率化に積極的に取り組んでおります。また、最新の技術動向や企業ニーズ等を注視し、これら情報の収集やノウハウの習得を継続することで、それらの知見をサービス開発に活用しております。しかしながら、新技術や顧客需要の変化への対応が困難となる又は対応に遅れが生じる場合には、当社グループのサービスの競争力が低下し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④プラットフォームでのアプリ提供について
当社グループにおいて提供されるスマートフォン向けアプリは、プラットフォーム運営事業者であるApple及びGoogleにアプリを提供することが現段階における事業展開の重要な前提条件です。これらのプラットフォーム運営事業者の事業戦略の転換及び動向によって、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業運営に関するリスク
①特定事業への依存
当社グループの連結売上高の大部分は、主力のビジネスチャット「Chatwork」の収益により構成されております。中長期経営計画においてBPaaSドメインを新たな成長の柱として急拡大を図っておりますが、現時点における収益基盤は依然としてビジネスチャット「Chatwork」に大きく依存しております。そのため、当該サービスにおいて想定を超える市場環境の変化や競争力の低下等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ. フリーミアムモデルにおける課金プランへの移行について
「Chatwork」におけるユーザー獲得は、フリーミアムによるものが多くを占めており、課金ユーザーの獲得においても、フリープランによるユーザー獲得から有料プランへの転換(有料化)を促す手法が重要な役割を担っております。フリープランにおいては、コンタクト数、メッセージの閲覧可能期間、ストレージ容量等の一部機能に制限を設定するとともに 、有料プランに管理機能等の付加価値を追加しており、ユーザー企業における本格的な導入及び利用に際しては、一定割合にて有料プランへの移行が発生するものと想定しております。しかしながら、将来において、フリープランの範囲内で完結するライトユーザーの割合が増加した場合、有料プランの拡大に結び付かず、当社グループの事業成長が想定通りに進展しない状態となり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ. サービス価格について
当社グループの事業においては、顧客ニーズを踏まえた適正なサービス価格設定に努めておりますが、サービスの機能強化や競合対応、物価上昇への対応等を目的として、サービスにかかる価格改定を行う場合があります。今後において、価格改定については顧客及び競合状況等を慎重に判断した上で実施していく方針ですが、当社グループの価格戦略と顧客ニーズにミスマッチが生じた場合には、新規顧客獲得の停滞を招く可能性があります。さらに、価格改定を契機として既存ユーザーの解約率が上昇し 、期待した収益向上が図れない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります 。
②M&A及び資本提携について
当社グループは、長期ビジョンであるビジネス版スーパーアプリの実現に向けた事業規模の拡大とBPaaSの提供範囲拡張のための手法の一つとして、M&Aや資本提携を強化していきます。M&A前の段階において、対象会社の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを吟味した上で判断及び実行しております。しかしながら、投資後に偶発債務や未認識債務の判明等、事前の調査において認識できていなかったリスクが生じた場合や、投資後の事業の統合が計画通り進まない場合は、対象会社の株式価値や譲受けた事業資産の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を与える可能性があります。
(3)システム・情報セキュリティに関するリスク
①システムの安定性・安全性について
当社グループの事業は、そのサービス特性からサービス及びシステムについて高い安全性及び安定性が求められております。当社グループのサービスは、インターネットを介してサービスを提供する形態であり、自然災害、火災等の事故、外部委託事業者における障害発生により、通信トラブルが生じた場合、継続したサービス提供等に支障が生じる可能性があります。
また、当社グループのシステムにおいて、ソフトウエア又はシステム機器等の瑕疵・欠陥等によるトラブルが発生した場合、コンピュータウイルスやハッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合、サイトへの急激なアクセス増加や予測不可能な様々な要因によってコンピュータシステムがダウンした場合にも、同様のリスクがあります。
当社グループにおいては、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステム障害を回避すべく、定期的なバックアップ、システムの多重化等により未然防止策を実施しております。しかしながら、当該対応にも拘らず、何らかのトラブル等に起因して大規模なシステムトラブルが発生し復旧遅延が生じた場合、サービス継続に支障が生じた場合には、当社グループのシステム及びサービスに対する信頼性の低下やクレーム発生その他の要因により、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループのサービスのうちエンタープライズプラン及びKDDI Chatworkについては、サービス品質保証(SLA)を設定しており、サービスにかかるサーバー稼働率が設定された水準を下回った場合、利用料の一部を返還することとしており、障害等によって稼働率が低下しユーザー企業から返還申請が生じた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②情報セキュリティについて
当社グループの事業においては、サービス利用にかかるコミュニケーション等において、ユーザー企業等にかかる個人情報、機密情報及び通信の秘密が含まれており、これら情報にかかるデータ等を大量に取り扱っております。
当社グループは、役職員に対する個人情報取扱いにおける研修の実施、システム上のセキュリティ対策やアクセス権限管理の徹底に加え、ISO27001(情報セキュリティマネジメント)、ISO27017(クラウドセキュリティマネジメント)及びISO27701(プライバシー情報マネジメント)の各認証の取得、当該公的認証に準拠した規程・マニュアルの整備・運用等を行うことで、情報管理体制の強化に努めております。また、技術的な対策として、プロダクトに対し定期的に脆弱性診断(システム検査)を実施し、外部脅威への対策を行なっております。
なお、当社グループでは、第三者からのパスワードリストアタック(※)を想定し、ユーザーに対する二段階認証設定の喚起及び不正アクセスと見受けられる通信機器からのアクセスの遮断等の対策を講じることで、情報の漏洩防止にかかる一層の強化を図っております。加えて、 コミュニケーションツール全般において、なりすましによるフィッシングが多発しておりますが、当社においても監視体制を強化し、なりすましアカウントを停止する運用を行なっております。
しかしながら、このような対策をとっているものの、万が一、外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、その他想定外の事態の発生により個人情報が社外に流出した場合等、当社グループの社会的信用の失墜又は損害賠償請求の発生等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
※パスワードリストアタックとは、外部の攻撃者が独自に入手した何らかのシステムに係るユーザーIDとパスワードリストを用いて、様々なITサービスへの侵入を試みる行為を指します。
(4)組織・人材に関するリスク
①特定の人物への依存について
当社の代表取締役兼社長上級執行役員CEOである山本正喜は、当社設立以来、当社の経営戦略の構築や実行及び技術的判断において重要な役割を担っております。
こうした状況を踏まえ当社では、特定の人物に依存しない体制を構築すべく執行役員制度を導入し各部門責任者への権限委譲を随時推進する等により組織体制の強化を図り、安定的な経営体制の構築に努めております。
しかしながら、成長段階である現状において何らかの理由により、当人が当社の業務を継続することが困難となった場合は、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
②人材確保と人材流動性について
当社グループの人員は、2025年12月末現在658名です。当社グループは今後の事業の展開及び規模の拡大に応じて人材の確保及び育成を進めるとともに、業務執行体制の強化を図る方針です。
しかしながら、今後人材が機動的に確保できない場合、又は急な従業員の減少等があった場合には、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制についても一層の充実を図っていく方針ですが、事業の急速な拡大等により、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
③内部管理体制について
当社グループは、主力のビジネスチャット「Chatwork」を基盤としたプラットフォーム事業への転換による成長過程にあり、今後のさらなる事業拡大に対応するため、コーポレート・ガバナンス体制の充実を重要な経営課題として認識しております。現在、当社グループは急速な事業展開の途上にあり、組織規模も急拡大しております。
業務の有効性及び効率性、財務報告及び経営成績予測の信頼性の確保、ならびに事業活動に関わる法令等の遵守を徹底してまいりますが、事業の急速な伸展や組織の複雑化に対し、内部管理体制の整備が適時に追いつかなかった場合には、適切な業務運営に支障をきたし 、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)法的規制・コンプライアンスに関するリスク
①法的規制について
当社グループの事業は、「個人情報保護法」、「電気通信事業法」等、企業活動に関わる各種法令の規制を受けております。このうち、ビジネスチャット「Chatwork」の提供にあたっては、届出電気通信事業者としての届出を行い、ユーザーの通信の媒介にかかる通信の秘密の遵守等が義務付けられております。なお、当該届出について有効期限の定めはありません。また、BPaaS事業においては、顧客企業のバックオフィス業務を代行する事業の性質上、「個人情報保護法」をはじめとする各種法令等を遵守した事業運営に努めております。
当社グループの事業領域は拡大しており、国内外において今後新たな法令等の制定、又は既存の法令等の解釈若しくは運用の変更等により追加の規制を受ける可能性があります。現時点では特段認識しているものはありませんが、今後既存の規制への抵触あるいは何等かの新たな規制による当社グループの事業運営への影響が生じる場合は、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②知的財産権管理について
当社グループでは提供サービスの商標権等必要な知的財産権については登録を行い、また提供サービスの他社の知的財産権の侵害可能性についても弁理士等専門家を介して適宜確認をしております。当社グループはこれまで、特許権、商標権、意匠権等の知的財産権に関しては、他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはなく、知的財産権の侵害を行っていないものと認識しております。しかしながら、当社グループの事業に関連する知的財産権について、第三者における、当社グループが認識しない知的財産権が存在した場合、又は新たな特許等が成立した場合、当該第三者より知的財産権の侵害を理由とした損害賠償や使用差止め等の請求が行われることにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)その他の事項
①株式の追加発行等による株式価値の希薄化について
当社グループでは、当社グループの役職員(元役職員を含む)を中心に特定の等級以上の従業員に対して、中長期的な企業価値の向上に対するインセンティブとして新株予約権及び譲渡制限付株式を付与する制度を導入しており、今後も当該制度を活用する可能性があります。
これら新株予約権が行使された場合や譲渡制限付株式が付与された場合には、当社の株式が発行され、既存株主が有する株式の価値及び議決権が希薄化する可能性があります。
②固定資産の減損リスクについて
当社グループは、ソフトウエア等の固定資産を有しておりますが、固定資産の減損に係る会計基準等により、当社グループが保有する固定資産が、収益状況の悪化等の事由により、減損処理が必要になった場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて568,971千円増加し、6,682,954千円となりました。これは主に、現金及び預金が542,307千円増加、前払費用が154,593千円増加、投資その他の資産が269,530千円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて167,834千円増加し、4,683,025千円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が315,976千円減少、契約負債が242,964千円増加、株式報酬引当金が164,583千円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて401,137千円増加し、1,999,928千円となりました。これは主に、資本金が86,008千円増加、資本剰余金が86,008千円増加、利益剰余金が215,051千円増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は29.9%(前連結会計年度末は26.1%)となりました。
少子高齢化が進む日本社会において、社会福祉を支え国際競争力を上げるにあたり労働生産性の向上が最大の焦点となっています。特に日本の労働人口の69.7%を占める中小企業(注1)において労働生産性は長期で伸び悩んでおり、低労働生産性の根本原因となっております。労働生産性向上にはIT投資(DX)が重要でありますが、リテラシーや予算の問題が大きく投資が進んでおらず、80%以上の中小企業(注2)がDXに取り組めていないのが現状であります。
そのような環境において当社グループは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションのもと、人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間において、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会を実現することを目指し、仕事の効率化や創造的な働き方を実現するサービスの開発・提供に取り組んでおります。
このようなミッションのもと、現在の主力サービスであるビジネスチャット「Chatwork」は国内中小企業を中心とした顧客企業の労働生産性向上や働き方の多様化を支援しており、国内利用者数No.1(注3)のサービスとなっております。中長期のビジョンとしてこのビジネスチャットが中小企業市場で圧倒的なシェアを確立していることを強みとし、あらゆるビジネスの起点となるビジネス版スーパーアプリとしてプラットフォーム化を進めることで、さらなる中小企業のDX推進に貢献してまいります。
このビジョンを実現するための取り組みとして、当社はBPaaS(Business Process as a Service)を展開しております。BPaaSとは業務プロセスそのものをクラウドサービスとして提供し、企業がクラウド経由で業務アウトソーシング(BPO)を活用できる仕組みです。これにより、企業の業務負担を軽減し、より創造的な業務に集中できる環境を実現します。当社のBPaaSはビジネスチャット「Chatwork」を顧客の業務プロセスに組み込むことで煩雑なコミュニケーションを効率化し、業務を型化してサービスを提供することで、低コストで中小企業の生産性を向上させることを強みとしております。今後も、BPaaSを通じて企業の業務プロセスを最適化し、Chatworkを中心としたプラットフォームの拡大を推進することで、さらなる中小企業のDX化を支援してまいります。
当連結会計年度においては、中期経営計画2024-2026の2年目として、高成長と利益創出の両立に向けた体制構築と事業拡大に取り組んでまいりました。主な施策は以下のとおりです。
① Chatworkにおいてはプロダクト主導のPLG(Product-Led Growth)戦略を軸としたユーザー拡大戦略を推進いたしました。具体的には、パスワードレス機能の実装やアカウント登録プロセスの簡略化等により、利便性と新規登録完了率を向上させました。また、社労士向けシェアトップクラスのSaaS「社労夢」とのAPI連携を開始し、業務効率化の支援を通じたChatwork未利用ユーザーの招待・獲得を促進いたしました。
② BPaaSにおいては、2025年7月に当社グループ会社である株式会社kubellパートナーと株式会社ミナジンの経営統合を完了させ、成長スピードの向上とグループ管理の効率化を図りました。また、サービスブランドを「タクシタ」へ刷新してリブランディングを推進するとともに、採用代行(RPO)サービス「タクシタ採用」の提供を開始するなど 、中小企業のノンコア業務を幅広く支援するサービス拡充を加速させました。
③ 非連続な成長に向けたM&A・アライアンス戦略を積極的に推進いたしました。2025年11月には、経理業務DX支援の強化とFintech領域への参入を図るため、クラウド請求書処理サービス「ペイトナー請求書」の事業を譲り受けることを決定いたしました。また、同年12月には意思決定の迅速化と投資の柔軟性を高めるため、連結子会社であった株式会社kubellストレージを完全子会社化を決議いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は9,529,226千円(前年同期比12.5%増)、営業利益は485,065千円(前年同期比400.8%増)、経常利益は458,084千円(前年同期比506.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は215,051千円(前年同期は1,172,456千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、当社グループの報告セグメントは、従来「Chatworkセグメント」と「セキュリティセグメント」の2つに区分して報告しておりましたが、当連結会計年度より「プラットフォーム事業」の単一セグメントに変更しておりますので、セグメント別の記載を省略しております。
Chatworkアカウント事業KPI推移
(注1)中小企業庁「2025年版中小企業白書」2025年12月調査
(注2)独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査」2024年12月調査
(注3)Nielsen NetView Customized Report 2025年7月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。 調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKSを含む44サービスを株式会社kubellにて選定。
(注4)ChatworkにおけるAnnual Recurring Revenue(年間経常収益)。各四半期のChatwork売上高×4
(注5)導入社数は有料プラン導入先だけでなく、フリープランでの利用先も含んでおります
(注6)Daily Active Userの略。1日に1度以上Chatworkを利用したユーザーID数
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて192,307千円増加し、3,105,235千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、937,856千円の収入(前年同期は1,476,540千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益458,084千円の計上、減価償却費549,703千円の計上、株式報酬費用162,850千円の計上、契約負債が242,964千円増加したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、585,824千円の支出(前年同期は650,117千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出438,714千円、事業譲受による支出95,000千円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、156,689千円の支出(前年同期は14,594千円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出731,316千円、長期借入れによる収入500,000千円、株式の発行による収入75,500千円によるものであります。
当社は生産活動を行っていないため、記載を省略します。
当社事業は、提供するサービスの性質上受注実績の記載になじまないため、記載を省略します。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度における売上高は、9,529,226千円(前年同期比12.5%増)となりました。主な要因はChatworkを含むSaaSドメインが継続的な成長を果たしたことに加え、プラットフォームからのクロスセル施策によりBPaaSドメインが大幅に増加したことによるものであります。
当連結会計年度における売上原価は、2,925,595千円(前年同期比11.4%増)となりました。これは、事業拡大に伴い労務費やサーバー費用が増加したことによるものであります。この結果、当連結会計年度の売上総利益は6,603,630千円(前年同期比13.0%増)となりました。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、6,118,564千円(前年同期比6.5%増)となりました。これは、事業拡大に伴い人件費等が増加したことによるものであります。これにより、当連結会計年度の営業利益は485,065千円(前年同期比400.8%増)となりました。
当連結会計年度における経常利益は、458,084千円(前年同期比506.9%増)となりました。これは、営業外収益にてポイント収入額5,445千円等を計上する一方で、営業外費用にて支払利息19,977千円等が計上されたことによるものであります。
法人税等を243,032千円計上し、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、215,051千円(前年同期は1,172,456千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況の概要 ①財政状態の状況」をご参照下さい。
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社グループのビジネスモデルは、売上高の95%以上がサブスクリプション型のユーザー課金モデルとなっており、課金対象となっている既存顧客が利用を継続する限りにおいては、安定的な収入が計上されます。従って、今後の収益獲得の予測を考慮し事業戦略も踏まえ、どのように費用充当していくかが重要であると考えております。
今後の基本方針としては、プラットフォーム事業の拡大にかかる人件費や広告宣伝費といった販売促進に係る費用として充当しプラットフォーム価値の最大化を目指すとともに利益を生み出せる体制の構築を進めてまいります。そのうえで長期ビジョンであるビジネス版スーパーアプリの実現に向けたM&Aや新ビジネス開発といった成長投資資金の源泉としていきたいと考えております。
なお、資金の流動性については、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,105,235千円となっており、流動性を確保しております。
2023年度に作成した2026年度を最終年度とする中期経営計画では売上高CAGR30%、最終年度である2026年度売上高150億円、EBITDA15~22.5億円を目標としております。
当連結会計年度における売上高は9,529,226千円と2024年12月期の8,470,717千円に対して12.5%増加と伸長しております。引き続き中期経営計画の達成を目指してまいります。
当社は、2025年2月14日開催の取締役会において、2025年7月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である株式会社kubellパートナーを吸収合併存続会社、同社の子会社で当社連結子会社(当社の孫会社)である株式会社ミナジンを吸収合併消滅会社とする吸収合併について決議いたしました。 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
該当事項はありません。