当社グループは、2026年1月からの3年間を対象とした中期経営計画を策定しました。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
ローランド・グループの経営理念は、以下の3つのスローガンに集約されています。これらは、ローランド・グループが何のために存在し、どのような企業であろうとしているのかを表した、創業時から変わらない考え方です。
- 創造の喜びを世界にひろめよう
- BIGGESTよりBESTになろう
- 共感を呼ぶ企業にしよう
「創造の喜びを世界にひろめよう」
いつでも、誰でも、どこにいても、自分にあった音や映像の楽しみ方に一人でも多くの人がめぐり合える。そんなワクワクする世界の実現を、私たちは目指します。新たな作品を創りだす喜び、仲間たちと楽器を演奏する時の充実感、そして、それを多くの人と分かち合うひととき―無限に拡がる喜びの可能性を、追求し続けます。
「BIGGESTよりBESTになろう」
お客様一人ひとりにとって、常にBESTで特別な企業であること。私たちはそのためにたゆまず努力し、最善を尽くします。日々成長し続け、お客様の想いにこたえる。そしてまた、新たな夢や期待を寄せていただく。そんな信頼関係を大切にしていきます。
「共感を呼ぶ企業にしよう」
私たちは、支えていただいているお客様、取引先様、そして株主様など多くの方々に愛され、応援される企業を目指します。新しい価値を創り出す中においてもこうした方々の信頼を決して裏切らず、事業活動をよりよく理解していただく。そうして皆様からの共感を力にかえ、全てのステークホルダーにとっての事業価値を持続的に向上させていきます。
(2) 事業環境・重要課題認識
当社グループの属する世界楽器市場は、海外市場を成長ドライバーとして、概ね1%~2%程度の安定的な成長を続けてきましたが、近年では、地政学リスクや為替変動、物価上昇、中国市場の回復遅延など、不透明感の強い事業環境が続いています。コロナ後のサプライチェーンの混乱やディーラーの在庫調整は概ね終息したものの、2025年には新たに米国相互関税の影響も重なり、世界楽器市場の需要正常化には想定以上の時間を要しています。しかしながら、2025年後半より主力である北米市場を中心に、電子楽器分野には底打ちの兆しが見られることから、2026年以降は徐々に成長軌道へ回帰することが見込まれます。
AIやIoTをはじめとする技術革新は、音楽の楽しみ方や演奏スタイルを多様化させ、消費者の価値観に変化をもたらすことで、市場構造そのものを大きく変えています。一方で、先進国では、楽器演奏に挑戦したい、あるいは再開したいという膨大な潜在顧客が存在するものの、実際にはさまざまな障壁に直面し離脱してしまうという課題があります。また、新興国では高い経済成長に伴い楽器購入者が増加し、趣味として演奏を楽しむ層が拡大していますが、顧客が気軽に楽器に触れ、演奏を始められる機会は依然として限定されています。
こうした先進国・新興国双方の顧客課題に対し、近年の技術革新は有効な解決策となり得ます。最新技術を取り込み、また活用することのできる電子楽器は、これらの変化を追い風に、重要な成長機会を迎えると期待されます。
(3) 中期経営計画2026-2028
1.当社が実現したい未来

当社は、「次世代のユーザーと共に新たな音楽生活と音楽文化を創出し、音楽の未来を切り開く」ことを、実現したい未来に掲げています。人々があきらめていた演奏の喜びを実現し、日常の中に音楽体験が自然に根付いていくような新しい音楽生活を社会に生み出すことを目指します。同時に、当社の製品やサービスがミュージシャンの創造性を刺激し、まだ世界に存在しない音楽が芽生えるような、新たな音楽文化の創出にも挑戦します。
2.中期経営計画の位置づけ

中期経営計画(2026–2028)は、当社が描く未来の実現を加速させるための戦略的ステップとして位置づけています。前中期経営計画では、環境変化への対応に取り組みながら、基幹システム更新や研究開発拠点となる新本社建設など将来に向けた基盤整備を着実に進めてきました。本中期経営計画では、これらの基盤を確かな土台として、電子楽器の需要創造と体験価値(CX)向上に向けた投資を本格的に進め、持続的な成長が可能な高収益企業へのトランスフォームを推進します。
3.業績目標
中期経営計画の業績目標は以下のとおりです。
(注)2025年度に計上したDrum Workshop, Inc.に係る一時費用の影響を除く。
4.成長機会
当社は以下の成長機会を積極的に捉えていきます。
① 膨大な潜在層:主に先進国に数多く存在する「演奏離脱層」、「演奏関心層」へのアプローチによる新たな需要創出
② テクノロジーの進化:AIやIoTなどの先端技術の進展による電子楽器での演奏体験やサービスの高度化
③ 電子楽器化の拡大:アコースティック楽器の電子楽器化という長期トレンド
④ 新興国需要の拡大:1人当たりGDPの成長による中間層の購買力向上を背景にした新興国市場の拡大
5.重点戦略
① Direct Connect
顧客との直接的かつ継続的な接点を強化することを目的に、AI/IoTを実装した革新的な電子楽器の開発・販売、直販チャネルの拡大、データ活用プラットフォームの新規開発や既存サービスを強化し、これらを相互に連携させることで、顧客の演奏活動を支援し、体験価値の最大化を図ります。
1)Connected Instruments:Wi-Fiによるネット接続機能を標準搭載し、ソフト・クラウドと統合された新たな体験価値を提供する電子楽器。
2)Roland Retail:直営店“Roland Store”、直営店を基盤にしたダイレクトEコマース。
3)Roland Cloud:当社独自のVirtual instrumentsや製品のアップデータを提供し、顧客のLTVを最大化する基盤となるクラウドサービス。
4)Roland App(仮称):顧客が当社製品やサービスを最大活用するための日次タッチポイントとなるアプリ。
② Innovation
アコースティック楽器の電子化の潮流を加速させるとともに、アライアンス、共同研究・開発を積極的に推進します。
1)電子楽器化の拡大:ドラムやピアノでの電子楽器化の流れの促進に加え、電子管楽器のシリーズ拡大や電子化の進んでいないアコースティック楽器の電子化の促進。
2)共同開発による新規技術の開発:アライアンスや共同研究・開発、異業種・異分野とのコラボレーションを推進し、革新的な顧客体験を実現する新規技術の開発、新規製品、サービスを拡充。
③ 新興国販売拡大
新興国での楽器需要拡大に対応し、現地ニーズに適合した専用モデルの投入や、顧客のタッチポイントとなる新規チャネルの開拓等の新興国での取り組みを強化します。
1)中国ホビー市場の拡大:趣味需要が増加傾向にある中国でのホビー市場開拓。
2)インド、中南米、中東での販売強化:先進国を上回る市場成長が続き、文化を背景とした独自の音楽マーケットを保持する新興国での販売強化。
当社グループは、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の視点に代表される「サステナビリティ(持続可能性)」への取り組みにあたり、以下の認識の下、環境・社会を含む全てのステークホルダーの期待に応え、事業成長にもつながるテーマを中心に重要課題を整理しました。<5つの活動指針>で示すとおり一貫した「姿勢」で「意識」「実践」「開示」を一連のものとして課題対応を進め、取締役会が定期的な報告を受けてその状況を「監督」し、必要に応じて助言と支援を行います。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティの取組
当社の事業は、音楽・映像文化を通じて社会の持続的発展に貢献している一方で、環境や社会全体の安定と豊かさの下に成り立っています。そして気候変動や人権などのさまざまな課題に真摯に向き合い、その解決に貢献することは企業としての重要な責務であると認識しています。
環境・社会の安定や持続性が損なわれ、音楽・映像文化や当社事業が存続し得なくなる負の連鎖を避けるため、それぞれのサステナビリティを高め合う好循環を生み出す活動を、経営の重要課題に位置付け、取り組んでいます。

(2) 活動指針
当社グループでは、以下の活動指針を定め、音楽・映像文化の発展のために「創造」の価値を提供し続け、全ステークホルダーから「共感」いただける取り組みを通じて、地球環境・社会の課題解決と事業成長の両立に「BEST」を尽くします。
<5つの活動指針>

(3) 推進体制
サステナビリティ推進委員会は、執行役員会の付属機関として、担当執行役員を委員長とし、方針策定や取り組み状況の審議や承認を実施しており、四半期毎に年4回開催しています。重点課題等については、分科会やプロジェクトにて検討し、グループ全体への活動を促進していきます。また、リスク管理・コンプライアンス委員会と連携をしながら、ガバナンス体制の強化を進めています。
(4) マテリアリティ(重要課題)
当社グループは、持続可能な社会の実現と事業の成長を両立させるため、事業活動における重要課題を明確にしています。2026年度からの新たな中期経営計画の策定にあたり、専門的な知見を活用して課題特定のプロセスを整備しました。また、事業環境や社会からの要請の変化を踏まえ、下記の6つの重要課題と16の取り組みテーマを選定しました。引き続き、当社の事業環境や社会全体の変化に応じて、マテリアリティの定期的な見直しを実施していきます。
(5) 気候変動への対応(TCFD提言に沿った情報開示)
当社グループは、地球温暖化に伴う異常気象や災害の発生などの現象は、経済的損失につながるだけでなく、人類の文化的な営みや生活様態にまで深刻な影響を与える可能性があることを認識しています。人々が安心して暮らし、音楽・映像をはじめとした芸術文化が育まれる社会環境を維持するために、CO2排出量削減につながる貢献策や事業活動の効率化に取り組んでいます。
また、気候変動によって生じる当社事業に対するリスクや機会を適切に評価し対応を進め、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候変動関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿って、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの観点から、その状況を開示していきます。
ガバナンス
サステナビリティを巡る課題全般への対応として、取締役会がサステナビリティ基本方針を承認し、重要課題及びその取り組みの状況について定期的に報告を受けて監督する体制を定めています。気候変動問題を含む主要課題への取り組みはテーマ別の分科会で企画・実行され、執行役員会の附属機関として設置された「サステナビリティ推進委員会」がその推進状況を確認・協議することで、それぞれの執行部門への的確な指示と取締役会への定期報告の両方を担保する体制としています。ガバナンス体制については、「
戦略
IPCC(気候変動政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等が発行する報告書における複数のシナリオを参照し、以下の2つの対照的なシナリオを用いました。その想定から、当社事業に対する気候変動のリスクと機会について一定程度の発生可能性(確信度)が見込まれるものを特定し、それが顕在化する時期と財務影響を評価しました。
・ 1.5℃シナリオ:パリ協定での合意を踏まえ、脱炭素への取り組みが世界的に最も進む想定
- 産業構造やエネルギー政策が大幅に転換する過程で規制等が増加する「移行リスク」が高まる可能性があります。
- 当社事業は産業構造の転換や活動規制の影響は受けにくいものの、炭素税や排出権取引などのカーボンプライシングが企業全般を対象として導入された際には、その影響を受ける可能性があります。
・ 4℃シナリオ:世界的に気候変動対策が十分に進展せず、現構造のまま経済活動が継続される想定
- 気候変動が進行し自然環境の変化や災害が増加する「物理的リスク」が高まる可能性があります。
- 当社事業は自然資源(水や無垢木材)の使用は少なくその影響は受けないものの、突発的な自然災害によって事業の操業に影響を受ける可能性があります。しかし慢性的な影響までは見込んでいません。
<特定した気候変動リスク/機会の評価>
(注)1. 「短期」は1年以内、「中期」は5年以内、「長期」は5年超としています。
2. 単年度で5億円±2億円の損益影響を「中」程度とし、その上下をそれぞれ「大」「小」としています。
リスク管理
当社事業を取り巻くさまざまなリスクに対し的確な管理・実践を行うために、定期的に子会社を含むグループ全体より潜在リスク情報を集約し、社長がリスク管理責任者として委員長を務める「リスク管理・コンプライアンス委員会」においてその影響の重要度と対応方針を評価しています。また当委員会で評価されたリスクの内容は定期的に取締役会に報告されています。
気候変動で生じる移行リスクや物理的リスクについては、発生事象や対応策が既知の事業リスクと共通する点も多いため、上記の全社的リスク管理プロセスに統合する運用を行っています。
指標及び目標
当社グループでは2021年度よりCO2排出量の算定を行っており、その結果を以下の当社ホームページにて公開しています。
主力となる当社の電子楽器は総じて省電力であり、お客様の要望や環境への貢献を念頭にさらなる使用電力低減に継続的に取り組んでいます。また、日本、マレーシア、中国にある自社工場は大量の電力を必要としない組立工程が中心であり、さらに非化石価値を利用することで、スコープ2に相当するCO2の排出量を大幅に低減しています。サプライチェーン全体においては、自社だけでなく取引先も含めたCO2排出量削減や再生可能エネルギーの活用を着実に進めていきます。
責任をもってこれらの取り組みを実行するために、CO2排出量算定の精度向上と要因の分析を行い、SBT(注)の考えに沿って以下のように削減目標を設定します。
<CO2排出量削減目標>
・スコープ1及びスコープ2:CO2排出量を、2030年度に2022年度から42%削減
・スコープ3:CO2排出量全体の9割以上を占めるカテゴリ1、4、11、12を対象に、それぞれ2030年度に2022年度から25%削減
(注)SBT: Science Based Targetsの略称。2015年に採択されたパリ協定が求めるCO2削減水準に対して、科学的根拠に基づいて目標を定める方法
(6) 人的資本経営への取組
ガバナンス
当社グループは、人事戦略をグループレベルで策定・実行・牽引するためにCHRO(Chief Human Resource Officer)を設置しています。CHROは、国内外における「従業員エンゲージメント」「生産性」「各種指標」の動向を常に確認しつつ、国内人事部門及び海外人事部門との定例会議により全社の状況を把握し、必要に応じて指示及びアドバイスを行っています。また、重要な人事案件は執行役員会で討議し、人事政策の見直しを図っています。
なお、役員の選解任及び報酬制度・報酬金額については、指名報酬委員会での討議を経て取締役会へ上程しています。
戦略
<経営戦略と人的資本戦略>
当社グループでは、以下の「経営理念」「ローランドが実現したい未来」を実現するにあたり、<人の成長と組織の活性化>を最重要テーマの一つと位置づけ、各種人事施策に取り組んでいます。
経営理念:創造の喜びを世界にひろめよう/BIGGESTよりBESTになろう/共感を呼ぶ企業にしよう
ローランドが実現したい未来:次世代のユーザーと共に新たな音楽生活と音楽文化を創出し音楽の未来を切り開く
このことから、当社人事戦略における最重要ポイントは、各従業員が「豊かな発想とチャレンジ精神を持って自発的に創造性を発揮すること」及び従業員を取り巻く組織文化が「個々の従業員の多様性を受け入れ、共創的な交わりにより相乗効果を導くものであること」であると考えています。またガバナンスの観点からは、これら従業員個人と組織の活性度を常にモニタリングし、必要に応じて改善を施す仕組みを構築することで、継続的な人と組織の活性化を実現したいと考えています。
<近年の人的資本経営について>
当社グループは、特に2016年以降、人材の強化に向けてさまざまな改革に取り組んできました。
国内においては、従業員のモチベーション向上を目的として、人事考課制度及び報酬制度を個人の業績と成長をバランスよく重視しながら処遇する制度に改定しました。その他、要員計画に基づく採用管理や社内研修活動の強化、働き方の多様性を推進するためのテレワーク制度やフレックス制度の導入等を行いました。また、KPIとして「従業員エンゲージメント」と「生産性」を設定し、その向上に努めてきました。
一方で当社グループ売上の91%(2025年12月期現在)を占める海外においては、グローバルにおける人材最適化に向けて海外子会社とのリレーションを強化し、現地の労働条件や文化的背景を考慮の上、<グローバル人事基本ポリシー>に沿って各種活動を進めています。
[グローバル人事基本ポリシー]
・人事制度は“公正さ”と“社員のエンゲージメント向上”に主眼を置いて策定する。
・年齢/性別/人種/社歴によらず、成果・能力・会社への貢献に応じて処遇される制度設計を目指す。
・会社の成長に応じて、適切に社員へベネフィットが還元される人事制度を目指す。
<人的資本経営に関する考え方>
当社グループは創業以来、音楽、映像の分野で電子技術を使ったさまざまな提案を行い、多くの人に魅力ある価値を提供することで新しい市場を切り開いてきました。このような「創造」を中核とする企業としてのあり方は、当社グループの根本的な存在価値につながるものとして今後も継続していきたいと考えています。
このような観点から、[人事戦略ビジョン]として、目指すべき「人材」「組織文化」「ガバナンス」を以下のとおり定めています。
[人事戦略ビジョン]
人材 :豊かな発想力とチャレンジ精神を備え、あるべき姿に向けて自律的に行動する人材
組織文化 :互いの個性を尊重し合うことで各人の能力を十分に発揮し、共創により相乗効果を生み出すことのできる組織
ガバナンス :継続的なモニタリングにより人事施策を改善し、人と組織が成長し続ける仕組み

<各種人事施策方針>
当社グループの各種人事施策における方針は以下のとおりです。
指標及び目標
「創造」を事業の中核とする当社グループにとって、豊かな発想を持つ従業員の育成と共創的な組織文化の醸成は最重要テーマとなります。そして、その源泉となるのは、個々の内発的動機につながる「従業員エンゲージメント」であると認識しています。
従って当社グループでは、人事戦略ビジョンを実現するための中核指標として「従業員エンゲージメント」を重視し、目標を2028年までに3.8(5段階中)と定め、定期定量的に推移を調査するとともに、全ての人事施策が従業員エンゲージメントの向上に寄与することを目指しています。
・従業員エンゲージメントの調査結果推移
また、従業員エンゲージメント向上による業績への貢献度を計るための指標として、「生産性(Added Value÷Personnel Expenses)」を独自の計算式で定期的に確認し、中長期での継続的な向上を目標として定めバランスの良い人事戦略の遂行に努めています。
・生産性推移
<ご参考:各種指標>
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

上の図で※を付している項目は、リスク管理・コンプライアンス委員会にて特定された特に重要なリスク及びリスクへの対策で以下に詳細を記載しています。
各リスクはリスクの内容に応じて分類され、リスク発生時のインパクトと発生可能性、中期経営計画の重点戦略との関連性に応じて評価されます。各リスク項目は担当部門にてリスク低減活動が行われ、リスクレベルに応じてそれぞれ担当部門、担当執行役員、リスク管理・コンプライアンス委員会にて定期的にモニタリングされます。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(a) 棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(b) 固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。
なお、Drum Workshop, Inc.の固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(c) 投資の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。
当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く世界経済は、米国の関税政策による混乱や、世界中に広がりつつある地政学リスク、不安定な為替動向など、引き続き不確実性の高い状況が継続しました。
当社が展開する電子楽器市場では、コロナ禍に伴う特需の反動減や小売店の在庫調整が一巡し、全体としては回復基調が見られました。主要市場の米国では、様々な懸念は存在するものの好調に推移し、また低迷の続いていた中国市場においても、当社製品群の需要は回復に向かいました。欧州においては、楽器小売店間の競争激化により、一部の小売店が倒産するなど減速が見られましたが、今後存在感の高まりが期待される新興国は引き続き好調に推移しました。
一方で、米国の関税政策の大幅な転換により、サプライチェーンやコスト面では新たな課題も顕在化しました。当社は関税影響の低減を目的とし、コストのゼロベースでの見直しを実施するとともに、主要国における価格調整や生産地の最適化を速やかに開始しました。これらの成果に加え、プロダクトミックスの改善効果等もあり、影響は概ね吸収することができました。
このような大きな外部環境変化の中、当社では適切な対応を迅速に進めると同時に、中期経営計画の最終年度として「需要創造」、「シェア拡大」、「LTV(ライフタイムバリュー)向上」、「基盤強化」にも取り組みました。
「需要創造」においては、既存製品のラインアップ強化や主力製品群のリニューアルに加え、新たな市場創出にも注力しました。具体的には、前期発売の電子ドラムのハイエンド・モデル「V-Drums 7シリーズ」に始まる新世代V-Drumsの流れを受けたミドル・モデル「V-Drums 5シリーズ」、「V-Drums 3シリーズ」を発売しました。また、ビンテージ製品として位置付けられている、1980年代を中心に発売されたリズムマシン「TRシリーズ」の現代版として、新開発デジタル音源に加え、Roland史上約40年ぶりとなる新開発アナログ音源を搭載した「TR-1000」を発売しました。加えて、新たな形態の製品として、フルート型の電子管楽器「Aerophone Brisa」を発売し、今後電子化の拡大が期待される管楽器市場における、認知拡大と新規ユーザーの獲得を図りました。
「シェア拡大」においては、ポータブルキーボード市場再参入の足掛かりとして、前期に発売した「GO:KEYSシリーズ」のバージョンアップを実施し、製品の魅力向上と市場浸透に取り組みました。
また新興国においては、人口増加と中間層の購買力向上が進むインド、インドネシアや中南米等での販売体制強化に注力し、製品面でも専用モデルを発売しました。
世界の主要都市へ出店を進めている直営店舗「ローランドストア」、新興国を中心に出店を進めている「ストア・イン・ストア」については、市況を鑑み出店を厳選したものの、販売実績は好調に推移しました。
「LTV(ライフタイムバリュー)向上」においては、Roland Cloudの新規サービスやサウンド・コンテンツ、また製品を長く楽しむためのアプリ等を継続的にリリースしました。V-Drumsの新シリーズにはWireless LANを搭載し、よりスムーズなRoland Cloud経由でのサウンド拡張が可能となっています。
「基盤強化」においては、前期に導入した経営基幹システム「SAP S/4HANA」の安定稼働に加え、当期は需要予測とそれに基づく生産計画をオートメーション化しました。これにより市場の状況をより柔軟かつ迅速にオーダー、生産に反映することが可能となりました。さらに10月には、浜松市の新本社「Roland Inspiration Hub」社屋が竣工しました。市内に点在していた研究開発部門、生産部門、管理部門などの機能を一体化し、社員同士がアイデアを生み出しながらクリエイティブに働ける環境を実現しました。
当連結会計年度の売上高は、100,952百万円(前期比1.5%増)となりました。製品カテゴリーごとの販売状況(対前期比)は以下のとおりです。
(鍵盤楽器)売上高27,223百万円(前期比1.3%増)
電子ピアノは、苦戦が継続していた中国で回復の動きが見られました。その他の主要地域においては、中型タイプがやや低調であるものの、ポータブルタイプは好調に推移しました。
ポータブルキーボードは、前期及び当期投入の新製品効果により、堅調に推移しました。
(管打楽器)売上高29,364百万円(前期比2.7%増)
電子ドラムは、前期及び当期に発売した主力新製品群が大きく貢献し大変好調に推移しました。アコースティックドラムでは、米国関税政策に関連する生産影響やインフレの影響等により伸び悩みました。
電子管楽器は、新たにフルート型の製品を投入しアドオンとなりましたが、主力市場である中国において需要減少、競争激化の影響を受けました。
(ギター関連機器)売上高25,149百万円(前期比0.6%増)
ギターエフェクターは、受注残の解消や新製品群の貢献、また定番製品の底堅い需要により好調に推移しました。
楽器用アンプにおいては、前第2四半期にモデルチェンジした主力機種が好調に推移しましたが、屋外使用に最適な製品群に需要低下が見られました。
(クリエーション関連機器&サービス)売上高13,060百万円(前期比3.4%増)
シンセサイザーは、前期及び当期に投入した新製品群が貢献し大変好調に推移しました。
ダンス&DJ関連製品では、欧州を中心に既存製品の需要減少が見られましたが、当第4四半期に発売した大型新製品は大変好調に推移しました。
ソフトウエア/サービス分野では、ユーザーのLTV(ライフタイムバリュー)を高めるためのコンテンツやサービスの提供をRoland Cloudや外部チャネルを活用し継続的に行い、売上高は計画以上に増加しました。
(映像音響機器)売上高3,057百万円(前期比4.4%減)
ビデオ関連製品は、前期投入の新製品効果がありましたが、配信需要が一巡し関連製品の販売が鈍化しました。
価格適正化の効果により利益は増加しましたが、関税影響や人件費、広告販促費等の販管費の増加により、当連結会計年度の営業利益は9,412百万円(前期比5.4%減)となりました。
(c) 経常利益
営業外収益は195百万円、営業外費用は585百万円となりました。営業外費用では為替差損316百万円が発生しました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は9,022百万円(前期比7.3%増)となりました。
特別利益362百万円には、受取和解金361百万円、特別損失4,112百万円には、米国を拠点とする連結子会社のDrum Workshop,Inc.(以下、DW)の固定資産に対する減損損失3,860百万円が計上されています。税金費用はDWの繰延税金資産の取崩し等により法人税等調整額1,724百万円が計上された結果、3,089百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は2,168百万円(前期比63.7%減)となりました。
ROE(自己資本利益率)は、自己株式の取得及び消却を実施したものの、上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことから、5.0%(前期比8.9ポイント減)となりました。
ROIC(投下資本利益率)は、上記のとおり営業利益が減少した一方で、運転資本が減少したことにより、15.2%(前期比0.9ポイント増)となりました。
当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。
(注)金額は、販売価格によっています。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
総資産は、前連結会計年度末と比較して1,891百万円増加し、83,477百万円となりました。その主な要因は、棚卸資産が1,826百万円、無形固定資産が4,418百万円それぞれ減少した一方、次項に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が1,397百万円、有形固定資産が4,668百万円、退職給付に係る資産が2,566百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末と比較して7,209百万円増加し、42,113百万円となりました。その主な要因は、仕入債務が2,110百万円、借入金が3,669百万円、未払費用が524百万円、繰延税金負債が607百万円それぞれ増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末と比較して5,318百万円減少し、41,364百万円となりました。その主な要因は、自己株式の消却などにより純資産の控除科目である自己株式が1,262百万円減少し、主要国通貨に対する円安基調により為替換算調整勘定が1,423百万円、退職給付に係る調整累計額が1,351百万円それぞれ増加し、また親会社株主に帰属する当期純利益が2,168百万円あった一方で、自己株式の消却や配当金の支払いなどにより剰余金が11,503百万円減少したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して7.6ポイント減少し、49.2%となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度において現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,397百万円増加(前年同期は1,595百万円増加)し、期末残高は15,876百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益及び運転資金の減少により、13,699百万円(前年同期に得られた資金は11,717百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出により、6,439百万円(前年同期に使用した資金は1,193百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、主として長期借入れによる収入があったものの、自己株式の取得による支出や配当金の支払いなどにより、7,417百万円(前年同期に使用した資金は9,658百万円)となりました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関と当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は14,000百万円です。
当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。また事業活動により創出される付加価値の最大化とその適正な分配を通じて、全てのステークホルダーの共感を得ながら持続的な企業価値の成長を図ります。
株主還元につきましては、持続的かつ安定的な配当を行うとともに、株式市場動向や資本効率等を考慮した機動的な自己株式の取得も適宜行うことで、中計3ヵ年累計で連結総還元性向50%を目指し、成長投資資金の留保が必要な場合も、DOE(自己資本配当率)5.0%を下限目標とします。なお当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
[参考情報]
当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。なお、比率(%表示)は売上高の構成比を示しています。
(注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。
2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高を含みます。
3.中国本土での売上高になります。
(賃貸借契約)
※2025年12月に更新日が到来したため、契約を更新しています。本契約において、借主である当社には追加3年の更新オプションが付与されており、当社の意思で更新が可能になっています。
当社グループの研究開発活動は、グループ全体で利用可能な要素技術開発と、製品カテゴリーに特化した技術開発があります。要素技術には、楽音合成、モデリング、音響効果、音響解析、高効率符号化等の理論構築、電子楽器の心臓部である音源とエフェクター用オリジナル・システムLSIやその上で動作するデジタル信号処理システムの開発があります。また、USBやBluetooth、Wireless LAN等の通信規格を利用したオーディオやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)の伝送を行う通信技術及び、当社のネットワークサービスであるRoland Cloudのプラットフォームの開発も行っています。2024年には、「Roland Future Design Lab」という新しい開発組織を発足し、AIやWeb3といった新しい技術の調査、研究、開発に取り組んでいます。一方で、製品カテゴリーに特化した技術としては、鍵盤、パーカッションや管楽器などの演奏のためのセンサー技術、ギター関連事業製品のサウンド・エフェクト技術、ビデオ映像機器用の映像処理技術などの開発があります。
当連結会計年度の具体的な研究開発活動は次のとおりです。なお、当社及び連結子会社の事業は、電子楽器の開発、製造及び販売であり、区分すべき事業セグメントが存在しないため単一セグメントとなっており、セグメント情報に関連付けては記載していません。
(a)鍵盤楽器
電子ピアノ製品において、当社は長年モデリング音源技術による表現力向上に取り組んできました。上位モデルである「LXシリーズ」においては、最新のモデリング音源と、鍵盤、ペダル、再生系を高度に連携する「ピアノ・リアリティ・テクノロジー」を搭載しています。ピアノの発音をより高い精度でモデリングした音源、弾き方による音の違いを忠実に再現する鍵盤センシング技術、スピーカーシステムと信号処理による立体感のある音場再現技術を搭載し、ピアノ演奏の表現力をさらに高めました。一方、エントリーモデルのポータブルキーボード「GO:KEYS 3」「GO:KEYS 5」では、当社音源技術「ZEN-Core」(注1)とコード検出技術を組み合わせた自動伴奏機能を搭載しています。独自アルゴリズムによって、演奏に合わせてアレンジや音量がリアルタイムに変化するインタラクティブな自動伴奏機能を搭載することで、伴奏の臨場感を高めています。
(注1)オリジナル・システムLSIやコンピューター上で動作する拡張及びカスタマイズ可能なシンセサイザー音源をいいます。
(b)管打楽器
電子ドラムにおいては、2024年9月に発売したフラグシップ音源「V71」の技術を活用した下位音源「V51」「V31」を開発し、これらの音源を使ったドラムセットを2025年10月に発売しました。これによりVシリーズ音源は全機種共通でベストなドラム音色を提供できるようになりました。一方で操作性では、ライブや音楽制作、自宅練習など、ユーザーのニーズに合わせて製品を選べるよう、それぞれユーザー・インターフェースを最適化しています。またドラムパッドもデザインを一新し、クローム・フープとラバー・リム採用により打感を向上させたタム・パッド「PD-Pシリーズ」、その下位モデルの「PD-Hシリーズ」を新ラインナップとして追加しました。
また、電子ドラムの音源モジュールとパットの接続方法を変える新しいワイヤレス・システム「DrumLink」(注2)を搭載したワイヤレストリガーとワイヤレスハブをDrum Workshop社(以下、DW社)と共同開発しました。これらはV-DrumsシリーズやDW社とのコンバーチブル・ドラム・キット「DWe」に対応しており、ワイヤレストリガーと音源の間のケーブルを無くすことで、ドラム製品のセットアップが従来以上に自由になりました。
電子パーカッションにおいては、アコースティック・ハンドパンを電子化した「Mood Pan MN-10」を2025年7月に発売しました。ハンドパンの演奏性はそのままに、各国の民族音楽に合わせたスケール設定や、エフェクトの設定、パッドごとのキー設定など、電子ならではの機能を追加し、音色を含めたパラメーターをコントロールするソフトウエア「Mood Pan Plus」も同時リリースしました。
コンテンツ面においては、Roland Cloudと連携した新規ドラム音色のリリースを継続しています。2024年10月からVシリーズ音源用に市場投入した「V-Drums Instrument Expansions」を継続投入し、マルチ・サンプルされたアコースティック・ドラム音色や電子ドラム音色をVシリーズ音源に追加することで、音源のサウンドバリエーションを充実させることができます。加えて内蔵音色や外部音色と自由に組み合わせて、カスタム・キットを制作することも可能です。また名曲のドラム・サウンドをV-Drumsで再現した「V-Drums Kick Pack」もVシリーズ音源用に新たにリリースしました。これらコンテンツにより、製品のライフタイム・バリューの向上を実現しています。
電子管楽器においては、フルートのデザインとキー配置を採用しながら、多彩な音色、豊かな表現力、使いやすさなど電子楽器ならではの特長を備えた「Aerophone Brisa」を2025年11月に発売しました。これらの特長を実現するために自然な管楽器表現を追求した新しいサウンドエンジンである「SuperNATURAL Winds」や、全ての奏者にとって自然で扱いやすい息のコントロールを実現するデュアル・ブレスセンサーを新規開発し搭載しています。
(注2)DrumLinkは、電子ドラムのパッドやドラム・トリガー用のワイヤレス・テクノロジーです。ドラム専用に設計されており、最大30のパッド接続が可能で、ケーブル接続時と同等の超高速レスポンスと確実なパフォーマンスを実現しています。
(c)ギター関連機器
BOSSブランド製品においてもミュージシャンに新たな表現力と創造力を提案するため、新規技術開発に注力を続けています。2025年2月には、新次元の演奏体験を実現するV-Guitarプロセッサー「VG-800」を発売しました。ギター、ベースギターの各弦を独立して取り出すことができるディバイデッド・ピックアップ「GK-5」「GK-5B」と組み合わせることで、さまざまな種類のギターやシタール、バンジョーといった弦楽器サウンドの演奏が楽しめます。なかでも、かつてのアイコニックなサウンドで多くのファンを持つGR-300サウンドや、バイオリンのサウンドをモチーフとした新開発のVIOギターが特徴的で、得られるサウンドの幅が広がりました。
各弦を独立してピックアップできる性能を活かし、弦ごとのチューニングを自在に設定も可能です。近年では一般的となってきたヘビーなサウンドが得られるダウンチューニングや、独特の響きをもたらすオープンチューニングなども瞬時に設定完了します。このような機能は特にツアーミュージシャンの機材を減らすことにも貢献しており好評を得ています。
ギターエフェクトにおいては、ロータリー・スピーカーにより生み出される特徴的な揺れと豊かな空間的な広がりを細部に至るまで再現するコンパクトペダル「RT-2」を2025年8月に発売しました。クラシックなロータリー・サウンドに加え、新規開発した3種類のロータリー・サウンドを搭載し、シンプルな操作でロータリー・エフェクトに求められる多くの機能をコントロールすることが可能です。2025年9月には、時代を超えて愛されるBOSSのアイコニックなサウンドを体験できる革新的なコンパクトペダル「PX-1」を発売しました。「PX-1」には、1977年に登場したコンパクトペダルの初代3モデルを含む計8モデルがプリインストールされており、搭載する強力なDSP(Digital Signal Processor)により、オリジナルのペダルが持つサウンドはもちろん、特有のレスポンスや特徴的なノイズ成分まで再現することが可能です。また、有償の「モデル・パス」ライセンスにより、以降提供される新しいエフェクトに入れ替えることを可能にしています。2025年10月には、新たに開発した高度なアルゴリズムの採用により、楽器のキャラクターや弾き心地を維持したまま、自然な音程変化を実現するピッチシフター「XS-100」と「XS-1」を発売しました。「XS-100」は、搭載したエクスプレッション・ペダルやフットスイッチで±4オクターブの範囲をコントロールし、従来のピッチシフターを超えるダイナミックな演奏表現を実現しています。「XS-1」は「XS-100」と同様のアルゴリズムをコンパクトペダルのシンプルな操作性に落とし込み、より直感的なチューニング切り替えを実現しています。
アンプ関連製品では、洗練された質の高いレコーディングやシームレスなアッテネーション(信号や音量を減衰させること)を可能にした真空管アンプの「WAZA Tube Amp Expander Core」を2025年2月に発売しました。当社独自の設計思想である「Tube Logic」(注3)に基づいて開発されたアナログ設計のリアクティブ・ロードを搭載しており、真空管アンプの特性を損なうことなく最適な音量をコントロールすることができます。また、高品位なレコーディングを実現する2つの機能を備えており、多くのプレイヤーが愛用する真空管ギターアンプの活躍の場を広げるコンパクトなロードボックスです。
(注3)真空管アンプの入力から出力までの各パーツやコンポーネントの精密な動作、さらにそれぞれの相互作用によって発生する複雑な振る舞いを徹底的に分析し、アンプ全体をトータルに設計する設計思想です。
(d)クリエーション関連機器&サービス
シンセサイザーカテゴリーにおいては、ステージキーボードの新たなフラッグシップモデルとして、「V-STAGE88」と「V-STAGE76」を2025年2月に発売しました。これは、長年にわたり培ってきた当社の音源技術の粋を集め、まさにその集大成と言える製品です。「V-STAGE」には、V-Pianoテクノロジー、Virtual Tone Wheel、スーパーナチュラル・ピアノ、そしてZEN-Coreという、当社が誇る4つの革新的なモデリング音源が堅牢な筐体に凝縮されています。それぞれの技術が持つ豊かな表現力と、これまでの開発で培われた膨大なノウハウが融合することで、どんなステージにおいてもプレイヤーの最高のパフォーマンスを引き出すことができるステージキーボードです。
Dance&DJカテゴリーにおいては、新世代リズムマシン「TR-1000」を2025年10月に発売しました。「TR-1000」は、伝統的な「TR-808」「TR-909」を継承するアナログ・サウンドに最新のデジタル音源とサンプリング技術を融合し、幅広いジャンルの音楽制作に対応します。直感的な操作性と多彩なエフェクト機能を備え、ライブパフォーマンスやスタジオワークで高い創造性を発揮します。
ネット配信ユーザーに向けては、「BRIDGE CAST」シリーズをリリースしており、ビデオキャプチャー機能を統合することで、ゲーム機の映像と音声の取り込みを可能にした「BRIDGE CAST X」もラインナップされています。2系統の接続が可能なUSB-C端子とHDMI入力端子によって複数の機器に接続し、シンプルな配線の機材環境を実現するとともに、直感的なユーザー・インターフェースでゲーム実況の高品質なリアルタイム配信が可能です。さらに、同シリーズで最もコンパクトなゲーミング・オーディオ・ミキサー「BRIDGE CAST ONE」では、操作性の高い大きなノブ一つで、プレイ中でもチャットやゲームの音量をシンプルに調整できます。手のひらサイズの小型ボディながら、上位モデル譲りの高ゲインを誇るマイク用プリアンプや、配信者のトークやチャット音質を向上させる様々な音声処理機能を搭載しました。場所を取らず、持ち運びもしやすいため、ゲーム対戦遠征先や旅行先でも優れたサウンドでのゲームプレイやこだわりの配信が可能です。
音楽・メディア制作者向けのクラウドを利用したソフトウエア音源のサブスクリプション・サービスであるRoland Cloudにおいては、ネットワーク上のプラットフォームの整備、サービスの拡大を継続しています。BOSSのエフェクターをソフトウエア製品化した「BOSS Effects Pedals」シリーズを2025年5月より継続リリースし、ソフトウエア製品の種類とユーザーを拡大しています。2025年11月には「Roland Future Design Lab」とNeutone社にて共同開発を行った、音色変換のAI技術が搭載されたエフェクター「LYDIA」のプロトタイプを発表しました。急速に発展するAI技術を活用し、ユーザーのクリエイティビティを刺激する楽器体験をユーザーに提供すべく、研究開発を進めています。
(e)映像音響機器
アフター・コロナ以来、ステージのリモートでの演出が一般化した一方で、従来からのライブ演出も復調し、多種多様なイベントが活況です。このような状況において、当社のAVミキサーのVRシリーズや、ビデオ・ミキサーのVシリーズはそれらイベントでの需要に応えています。最新のVシリーズとしては、操作性や安定性に加えて、現在求められる高い汎用性やより高度な映像演出を可能にした「V-80HD」があります。この「V-80HD」とPCをHDMIケーブル1本で接続するだけのセットアップで、高品質なテロップや動きのあるグラフィックを合成して、映像演出のクオリティを高めるソフトウエア「GRAPHICS PRESENTER」も公開中です。「GRAPHICS PRESENTER」のコンテンツは、Roland Cloudから無償でダウンロードできます。
以上のような研究開発活動の成果により、当連結会計年度の研究開発費は、