第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営方針

当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。」を掲げております。「お客様の声を敏感にとらえ、ガステクノロジーを通じて、あらゆる産業と共に豊かな社会の実現に貢献する。コアビジネスであるガス事業で人と社会と地球の心地よい関係を創り、未来を切り拓く。」このような思いを企業活動の基本方針とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指します

 

(2) 中長期的な経営戦略

当社グループは、2014年5月に定めた長期経営ビジョンの中で売上収益1兆円を目指すこととし、この長期経営ビジョンのもと、2015年3月期から3ヶ年の中期経営計画「Ortus Stage 1」では数値目標を達成し、2018年3月期からは4ヶ年の中期経営計画「Ortus Stage 2」に取り組んでおります

現中期経営計画の重点戦略は、「構造改革」「イノベーション」「グローバリゼーション」「M&A」ですが、その最大の成果として、2018年12月に米国Praxair, Inc.の欧州事業を買収し、2019年2月にドイツの Linde Aktiengesellschaftの子会社である Linde Gas North America LLCからHyCO事業の一部並びに関連資産を買収し、グローバルな産業ガスの事業規模を大きく拡大させました。その結果、2019年2月に「Ortus Stage 2」の最終年度となる2021年3月期の計画値を変更いたしました。しかしながら、当第4四半期連結会計期間後半から世界規模で拡大が始まった新型コロナウイルス感染症による世界経済悪化の影響により、この計画値の達成は困難な状況にあります。目標としていた数値の達成は困難な状況にありますが、2021年度から始まる次の中期経営計画につなげるべく、現中期経営計画の基本方針及び重点戦略にそった取組みを着実に継続してまいります。

 

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(3) 会社の対処すべき課題

当第4四半期連結会計期間後半から世界規模の拡大が始まった新型コロナウイルス感染症は、世界経済に重大な影響を与え、当社グループの2021年3月期における連結業績の悪化と財務体質改善のスピード低下が予想されます。しかしながら、当社グループの事業基盤は、中期経営計画の重点戦略である「構造改革」「イノベーション」「グローバリゼーション」「M&A」の推進により、着実に強化されてきました。当社グループは、当面の課題として、世界経済の正常化に合わせて成長軌道への回復が図れるよう、生産性の向上や新規開発製品の展開などを進めるとともに、投資案件の厳格な管理などにより財務体質の強化に注力していきます

前連結会計年度に実施した米国Praxair, Inc.の欧州事業の買収により構築された日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極体制において、ガス利用技術のグローバル展開などグループ総合力の強化に向けた取り組みが順調に進んでいます。2020年10月1日に予定されている持株会社体制への移行により、そうした取り組みを加速させることで、事業規模の更なる拡大と収益力の向上を進めていきます。また、純粋持株会社は、グループ全体の保安・品質とコンプライアンスを強化する取り組みを推進していきます。

2020年度には、2021年度から2025年度までの5ヶ年にわたる次期中期経営計画を作成いたします。次期中期経営計画では、「経済価値と社会価値(ESG、SDGs)の共創による持続的成長」を重要テーマとする方針です。

 

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 経営方針・事業に関するもの

① 設備投資について

当社グループは、国内外に工業ガスの製造拠点を有しておりますが、大口顧客向けには、顧客の敷地・隣接地に空気分離装置等を設置しパイピングによるガス供給(オンサイトプラント方式)を行っております。オンサイトプラント方式は、顧客への安定供給と強固な収益基盤の確保というメリットがありますが、供給先である顧客の操業率の低下や、生産拠点の統廃合、海外移転などにより設備の全部又は一部が不要になり、かつ、契約による補償でカバーできない場合には、設備の除却損等の発生により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります

 

② 製造コストについて

主力の酸素、窒素、アルゴンの製造コストのうち大きな割合を占める電力コストが原油やLNG価格の高騰、為替変動などの要因により大幅に上昇し、それを販売価格に転嫁できない場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

③ 海外進出について

当社グループは、重点戦略として「グローバリゼーション」、「M&A」を掲げ、海外におけるオンサイト事業の拡大やM&Aを積極的に実施し、現在、米国、欧州、アジア・オセアニアを中心に海外で事業を展開しております。設備投資やM&Aの実行に際しては、市場動向や顧客ニーズ、契約等について事前に審査しておりますが、これらの国・地域における市場動向、政治、経済、慣習、宗教、テロ、大規模災害その他の要因によって、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

④ 法規制等について

社グループは、米国、欧州、アジア・オセアニアを中心に事業を展開しておりますが、進出国において予想外の法規制の変更、新規法令の制定や行政指導があった場合、対応コストの発生により経営成績に影響を及ぼす可能性があります

また、当社グループは、国内外において環境に配慮した事業活動を行っておりますが、環境関連法規の改定によって規制強化が図られた場合には、対応コストの増大により経営成績に影響を及ぼす可能性がありますまた、当社グループは、特殊ガス、機器・装置関連の製品を海外への輸出をおこなっており、「外国為替及び外国貿易法」を遵守する必要があります。そのため、法令違反を未然に防止すべく、当社グループでは安全保障輸出管理プログラムを定め、また、eラーニングや研修等による社員教育など対策を行っております。それにもかかわらず、なお当社グループの役員又は職員が法令等に違反し、罰金、行政処分(輸出の禁止や包括許可の取り消し)を受ける場合や規制強化が図られた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

らに、当社グループは、国内外において事業を遂行する上で、訴訟や規制当局による調査及び処分に関するリスクを有しており、当社グループに不利益な決定がなされた場合、当社グループの事業展開、経営成績、財政状態及び信用に重大な影響を及ぼす可能性があります

 

⑤ 人材確保について

当社グループの目標達成には、生産、研究開発、マーケティング、販売、物流、管理等の各事業分野において有能な人材が不可欠であり、また、事業運営を行う上で、関連法規で要求される資格や技能を有した人材の確保が必要となります。雇用情勢や労働需給の変化により、こうした人材の確保が計画通りに進まない場合は、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 技術・保安に関するもの

① 技術開発について

当社グループは、オンリーワン・ナンバーワン技術で世界メジャーへの仲間入りを目指すため積極的な技術開発活動を行い、今後の事業拡大を目指しておりますが、新製品・新技術の開発にはリスクが伴います。たとえば、商品化や事業化までに長い期間を要するような場合、市場投入のタイミングを逸してしまう可能性や、他社の新技術・新製品、代替製品により当社グループ製品の競争力が低下する可能性があります。また、産学官協同や企業間による共同開発では、連携がうまく進展しない場合や関連市場の状況に大きな変化があった場合などには、期待していた成果が得られない可能性があります

② 知的財産について

当社グループは、独自開発した技術による事業展開を基本として、必要な知的財産権の取得を推進しておりますが、当社グループの技術や商品を保護するために十分であるという保証はありません。また、第三者が当社グループの知的財産権を侵害して不正に使用する可能性があります。

一方、当社グループが事業展開している分野については、第三者の知的財産権を常に調査監視して、第三者の有効な知的財産権は、代替技術の開発又は技術的な回避策を講じることにより使用しない、当該第三者から使用する権利を得るなどの対策をとり、侵害の防止に努めており、これまで当社グループが第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を提起された例は非常に少ない状況にあります。

しかしながら、当社グループが将来的に他社の知的財産権を侵害しないという保証はなく、訴訟を提起された場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 製品安全及び保安について

当社グループは、高圧ガス及び関連する機器類の製造・販売等の事業を行っており、これらの製品については、品質管理とその記録の徹底、及びすべての製品について販売前に安全審査を行い、製品に起因するリスクを適切に管理しておりますが、すべての製品に欠陥や品質不良、故障が生じないという保証はありません。製品に万が一欠陥や品質不良、故障が生じた場合には、顧客からの信頼の低下や損害賠償の負担などにより経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

た、製造・販売等を行う高圧ガスには、高圧力や極低温による危険性の他、液晶や半導体関連向け製品等の毒性・可燃性を有するガスも含まれております。これら製品の製造・供給については、取り扱う従業員について階層別の教育の他、応募型の教育を行っています。特にテクニカルアカデミーでは危険体感学習を取り入れ、設備事故だけでなく労働災害事故の撲滅を目指した教育を徹底し、保安の確保に万全を期していますが、ガスそのものの危険性を解消することは不可能です。万が一、漏洩・発火・爆発等で人身や設備に多大な損害が生じた場合には、操業停止などにより当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

(3) 財務に関するもの・その他

① 為替レートの変動について

当社グループは、特殊ガス、機器・装置関連で原材料等の海外からの調達や製品の輸出を行っております。また、家庭用品等で海外からの製品の輸入を行っております。当該取引に関連しては、外貨建てで行っている取引があることから、為替予約などにより為替レートの変動リスク回避に努めておりますが、急激な為替の変動に対処できない場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、在外連結子会社の外貨建財務諸表金額は、連結財務諸表作成過程において円換算されるため、為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

② 金利の変動について

当社グループは、中期経営計画に掲げる重点戦略に基づき、積極的な設備投資、M&Aを実施し、その資金を主に金融機関からの借入や社債によって調達しております。2019年3月期に実施した米国Praxair, Inc.の欧州事業の買収のための調達は、大部分を変動金利による借入もしくは一定年数後に固定金利から変動金利に変更されるハイブリッドファイナンスで行っており、今後の金利変動によっては、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 自然災害、不測の事故、感染症等について

地震等の自然災害が発生した場合、当社グループの事業拠点が重大な損害を受ける可能性があります。特に地震発生の可能性が高い国内では、全国に分散して製造拠点を有しているものの、大規模製造拠点に被害があった場合、生産能力の大幅な低下は避けられず、売上収益の減少や巨額の修復コストの発生により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、人為的要因を含むその他の不測の事態により重大な事故が発生した場合や大規模な感染症が発生した場合は、当社グループの事業活動、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの緊急事態発生に備え当社グループでは、事業継続計画(BCP)に基づく情報収集体制を整え、中核となる事業の継続や事業の早期復旧への取り組みを進めております

 

④ 中期経営計画について

中期経営計画の目標は、事業環境の変化やその他様々な要因により目標を達成できない可能性があります。

 

⑤ ㈱三菱ケミカルホールディングスとの資本関係について

三菱ケミカルホールディングスは当社発行済株式数の50.59%の株式を所有しております。また、同社は、2014年5月13日付で締結いたしました資本業務提携関係のさらなる強化及び企業価値の向上を目的とした基本合意書の中で、当社に対する持株比率の維持について合意しており、現状において持株比率を増減させる方針はないと認識しております

かしながら、今後、同社グループとの資本関係に変更が生じた場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります

 

⑥ のれん及び無形資産について

当社グループは、企業買収等に伴い、のれん及び無形資産(以下、「のれん等」という。)を連結財政状態計算書に計上しております。当社グループが将来新たに企業買収等を行うことにより、新たなのれん等を計上する可能性があります。当社グループは、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産について毎期減損テストを実施し評価しております。経済の著しい悪化等により対象事業の成長率が大幅に低下したり、市場利率等の上昇により処分コスト控除後の公正価値及び使用価値の計算に用いられている割引率が大きく上昇した場合などには、回収可能価額が著しく減少して減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 情報管理について

当社グループは、営業・技術に関する重要情報、顧客情報その他関係者の個人情報を保有しております。

これら重要情報・個人情報を含む業務上の情報は、クラウド及びサーバでの管理や、事業拠点の防犯・盗難対策の推進を通じて、情報漏洩のリスク低減に努めております。また、情報セキュリティに関する規程・基準類の整備、情報管理に関する責任者・担当者の配置、社員への継続的な教育等を通じて管理体制の強化を図っております。

しかしながら、不測の事態により情報漏洩が起きた場合、企業価値の毀損、社会的信用の失墜、流出の影響を受けた顧客その他関係者への補償、市場競争力の低下等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 気候変動等環境課題について

地球温暖化等環境課題に関する取組みや気候変動等のリスクを企業の財務情報として開示する要請が高まっています。当社グループは、全社的に環境マネジメントを推進し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しております。当社グループが事業展開する各国において、炭素税の賦課や排出権取引制度に代表される温室効果ガス排出規制が導入された場合、間接的な温室効果ガス排出量が多い産業ガス事業の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、気候変動による自然災害の増加や渇水による水資源の不足等は当社グループの製造拠点に影響を与える可能性があります。なお、世界の平均気温が上昇した場合、空気分離装置における原料空気圧縮機の動力が増加し、電力使用量が増加するリスクがあります。

 

⑨ 新型コロナウイルス感染症の影響について

当社グループの主力製商品である産業ガスは、生活必需品の製造プロセスや各種工場の保安向けに利用されるとともに、医療現場でも利用されるため、各国当局による事業活動の制限対象には指定されることなく、関係者の感染防止に取り組みながら、各地域における事業活動を継続しております。しかしながら、顧客工場の稼働率低下により産業ガスの出荷は減少することが見込まれるため、2021年3月期の当社グループの経営成績について、前連結会計年度に比べ売上収益は2.4%の減収、営業利益は12.7%の減益を予想しております。ただし、この予想は、2021年3月期第1四半期連結会計期間における出荷への影響が最も大きく、第2四半期連結会計期間からは徐々に回復し、第3四半期連結会計期間以降はほぼ正常化することを前提としています。したがって、新型コロナウイルス感染症の再拡大などにより、産業ガスの出荷が想定以上に減少するなどした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態により重大な影響を及ぼす可能性があります

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

① 業績全般

 当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)における当社グループの事業環境は、米中貿易摩擦などの影響を受け、国内では、主要関連業界を中心に生産活動が弱まりました。エレクトロニクス関連においては、電子材料ガスの出荷は、国内では前期並みでしたが海外では減少しました。一方、米国では製造業の生産活動は底堅く、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷は前期並みに推移しました。

 しかし、当第4四半期連結会計期間後半から、新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大し、当社グループにおいても欧州ガス事業とサーモス事業の業績に影響が出ました。

 このような状況の下、当連結会計年度における業績は、売上収益8,502億39百万円(前連結会計年度比 14.8%増加)、コア営業利益903億37百万円(同 37.2%増加)、営業利益939億21百万円(同 40.5%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益533億40百万円(同 29.2%増加)となりました。

 なお、コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

売上収益

740,341

850,239

109,898

14.8

コア営業利益

65,819

90,337

24,517

37.2

  非経常項目

1,043

3,584

2,540

-

営業利益

66,863

93,921

27,058

40.5

  金融収益

2,294

1,150

△1,144

-

  金融費用

△7,074

△15,938

△8,863

-

税引前利益

62,083

79,133

17,050

27.5

  法人所得税

△18,373

△24,095

△5,721

-

当期利益

43,709

55,038

11,328

25.9

 親会社の所有者に帰属する当期利益

41,291

53,340

12,048

29.2

 非支配持分に帰属する当期利益

2,417

1,697

△719

-

 

② セグメント業績

セグメント業績は、次のとおりです。なお、セグメント利益はコア営業利益で表示しております。

 

〔国内ガス事業

 産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの売上収益は、主要関連業界である鉄鋼・非鉄・金属加工・輸送機器及び化学向けを中心に前期に比べ減少しました。また、エレクトロニクス関連での電子材料ガスの売上収益は、前期並みとなりました。機器・工事では、2018年10月に買収した医療機器販売会社アイ・エム・アイ㈱の収益貢献がありました。

 以上の結果、国内ガス事業の売上収益は、3,561億45百万円(前連結会計年度比 2.1%減少)、セグメント利益は、287億37百万円(同 3.6%減少)となりました。

 

〔米国ガス事業〕

 産業ガス関連では、製造業での生産は堅調であり、バルクガスを中心に売上収益は増加しました。オンサイトでは、化学メーカー向け等の新規案件の稼動が開始したことに加え、2019年2月に買収したHyCO事業※の貢献もあり、増収となりました。機器・工事では、エレクトロニクス関連での売上収益は減少しました。

 以上の結果、米国ガス事業の売上収益は、1,988億69百万円(前連結会計年度比 6.2%増加)、セグメント利益は、222億63百万円(同 42.4%増加)となりました。

※天然ガス等から水蒸気改質装置などで分離される水素(H2)・一酸化炭素(CO)を、石油精製・石油化学産業などにパイプラインを通じて大規模供給する事業。

 

欧州ガス事業

 スペインではオンサイトのガスが前年を下回りましたが、ドイツ、ベネルクス、北欧などでバルクガスを中心に前期の売上収益を上回りました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、スペイン、イタリアなどでは3月の売上収益が前年同月比で減収となりました。

 以上の結果、欧州ガス事業の売上収益は、1,655億64百万円、セグメント利益は、248億54百万円となりました。なお、2018年12月に米国Praxair, Inc.から買収した欧州事業を前第3四半期連結会計期間より当セグメントで開示しております。

 

〔アジア・オセアニアガス事業〕

 産業ガス関連では、バルクガスの売上収益は、主に中国で減少したことに加え、フィリピン、タイでも減収となりました。LPガスは、豪州での出荷は堅調でした。エレクトロニクス関連では、電子材料ガスの出荷は前期を下回りましたが、機器・工事が大きく増加し、売上収益は増加しました。

 以上の結果、アジア・オセアニアガス事業の売上収益は、1,045億41百万円(前連結会計年度比 1.5%減少)、セグメント利益は、99億52百万円(同 8.8%増加)となりました。

 

サーモス事業

 サーモス事業は、国内で前期より新たに投入したフライパンの販売に注力し、売上収益に貢献しましたが、長梅雨や暖冬などの天候不順の影響により、主力のスポーツボトルや保温弁当箱の販売が低迷し、売上収益は前期を下回りました。海外でも、日韓問題、香港でのデモ、米中貿易摩擦などによる景気減退の影響により、工場出荷は前期を下回りました。また、当第4四半期連結会計期間の後半には新型コロナウイルス感染症の拡大により、海外の生産工場の稼働停止に加え、国内でのインバウンド需要も縮小し、販売数量が減少しました。

 以上の結果、サーモス事業の売上収益は、251億18百万円(前連結会計年度比 9.6%減少)、セグメント利益は、72億24百万円(同 21.4%減少)となりました。

 

 各セグメントごとの売上収益及びセグメント利益の状況は以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

売上収益

セグメント利益

売上収益

セグメント利益

売上収益

増減率(%)

セグメント利益

増減率(%)

国内ガス事業

363,951

29,808

356,145

28,737

△7,806

△2.1

△1,071

△3.6

米国ガス事業

187,323

15,634

198,869

22,263

11,546

6.2

6,628

42.4

欧州ガス事業

55,101

6,567

165,564

24,854

110,462

-

18,287

-

アジア・オセアニアガス事業

106,164

9,149

104,541

9,952

△1,623

△1.5

802

8.8

サーモス事業

27,800

9,189

25,118

7,224

△2,681

△9.6

△1,965

△21.4

調整額

-

△4,531

-

△2,695

-

-

1,836

-

合計

740,341

65,819

850,239

90,337

109,898

14.8

24,517

37.2

  (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

     2.上記の金額に、消費税等は含まれておりません。

 

③ 経営成績

 当連結会計年度における売上収益は8,502億39百万円となり、前連結会計年度に比べ1,098億98百万円の増収となっております為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べUSドルで2円12銭、ユーロで4円85銭、豪ドルで6円96銭の円高となるなど、売上収益は全体で約99億円少なく表示されております。

 売上原価は5,226億80百万円(前連結会計年度比 493億47百万円増加)、販売費及び一般管理費は2,421億29百万円(同 373億40百万円増加)、その他の営業収益は106億23百万円(同 58億74百万円増加)、その他の営業費用は56億65百万円(同 17億24百万円増加)、持分法による投資利益は35億33百万円(同 3億2百万円減少)となっております。以上の結果、営業利益は939億21百万円となり、前連結会計年度比で270億58百万円の増益となりました。また営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いたコア営業利益は903億37百万円となっており、前連結会計年度比で245億17百万円の増益となりました。非経常的な要因により発生した損益の主な内容は、固定資産売却益64億90百万円、減損損失19億10百万円などとなっております。

 金融収益は11億50百万円(同 11億44百万円減少)、金融費用は159億38百万円(同 88億63百万円増加)、これにより税引前利益は791億33百万円となり、前連結会計年度に比べて170億50百万円の増益となりました。主な内容は、受取利息が2億50百万円(同 3百万円増加)、受取配当金が9億円(同 2億55百万円減少)、支払利息が138億95百万円(同 68億22百万円増加)などとなっております。

 これらの結果、法人所得税と非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は533億40百万円となり、前連結会計年度比120億48百万円の増益となりました。

 

(2) 財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は1兆7,517億32百万円で、前連結会計年度末比で192億82百万円の減少となっております。為替の影響については、前連結会計年度末に比べ期末日レートがUSドルで2円16銭の円高、ユーロで5円1銭の円高となるなど、約522億円少なく表示されております。

〔資産〕

 流動資産は、現金及び現金同等物の増加や営業債権の減少等により、前連結会計年度末比で201億58百万円増加し、3,673億2百万円となっております。

 非流動資産は、のれんや無形資産の減少等により、前連結会計年度末比で394億40百万円減少し、1兆3,844億30百万円となっております。

〔負債〕

 流動負債は、社債及び借入金の減少等により、前連結会計年度末比で3,872億73百万円減少し、3,319億3百万円となっております。

 非流動負債は、社債及び借入金の増加等により、前連結会計年度末比で3,631億52百万円増加し、9,791億35百万円となっております。

〔資本〕

 資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による増加や、利益剰余金の配当、在外営業活動体の換算差額の減少等により、前連結会計年度末比で48億39百万円増加し、4,406億93百万円となっております

 なお、親会社所有者帰属持分比率は23.4%で前連結会計年度末に比べ0.4ポイント高くなっております。

 

 2019年11月に借入総額25億ユーロ及び200億円のシンジケートローンに基づく借入を実行し、本シンジケートローンにより調達された資金を2018年12月に米国Praxair, Inc.から欧州事業を買収する際に調達していたブリッジローンの返済に充当しました。その結果、流動負債が大幅に減少し、非流動負債が大幅に増加しました。

 

(3) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フロー

 税引前利益、減価償却費及び償却費、法人所得税の支払額又は還付額等により、営業活動によるキャッシュ・フローは1,500億84百万円の収入(前連結会計年度比 513億98百万円の収入の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フロー

 有形固定資産の取得による支出、有形固定資産の売却による収入等により、投資活動によるキャッシュ・フローは626億29百万円の支出(同 6,923億40百万円の支出の減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フロー

 短期借入金の純増減額、長期借入れによる収入、長期借入金の返済による支出等により、財務活動によるキャッシュ・フローは462億42百万円の支出(同 7,111億68百万円の支出の増加)となりました。

 これらの結果に、為替換算差額等を加えた当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、1,000億5百万円(同 403億85百万円増加)となりました。

 

 「(2) 財政状態」で記載のとおり、2019年11月に実行されたシンジケートローンの借入及びブリッジローンの返済により、財務活動によるキャッシュ・フローのうち、短期借入金の純増減額は大幅に支出が増加し、長期借入れによる収入は大幅に増加しました。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

 前連結会計年度における欧州事業、HyCO事業及び医療機器販売会社の買収により、当社グループの生産品目は従前に増してより広範囲かつ多種多様となりました。また、受注生産形態をとらない製品も多く、受注生産製品の規模は、当該買収の結果により、当社グループ全体のビジネス規模に対し小規模な割合となりました。これらの理由から、当連結会計年度より、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

② 販売実績

 セグメントごとの販売実績については、「(1) 経営成績 ②セグメント業績」に記載のとおりであります。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により国際会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 及び 3.重要な会計方針」に記載しております。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金又は金融機関からの借入金、社債等により調達しております。また、当社グループとしての資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。

 資金の流動性については、安定的な営業活動によるキャッシュ・フローに加え、金融機関とコミットメント・ライン契約等を締結することで十分な手元流動性を確保しております。

 

(7) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 中期経営計画「Ortus Stage 2」に対する達成状況については、以下のとおりであります。

 

2019年3月期実績

(Ortus Stage 2-2年目)

2020年3月期実績

(Ortus Stage 2-3年目)

売上収益

7,403億円

8,502億円

コア営業利益

658億円

903億円

コア営業利益率

8.9%

10.6%

海外売上収益比率

47.9%

55.5%

ROCE(注1)

6.2%

6.4%

調整後ネットD/Eレシオ(注2)

1.54

1.45

(注)1.ROCE

当社ではコア営業利益と資本、有利子負債のバランスを重視し、コア営業利益を投下資本(有利子負債残高+親会社の所有者に帰属する持分)で除して算出した「ROCE」で資本効率を示しております。

   2.調整後ネットD/Eレシオ

当指標は、2019年2月の数値目標変更の際に追加しました。調整後純有利子負債(有利子負債残高-資本性負債-現金及び現金同等物)を、調整後親会社所有者帰属持分(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)で除して算出した「調整後ネットD/Eレシオ」で、財務健全性を示しております。なお、資本性負債とは、ハイブリッドファイナンスで調達した負債のうち、格付機関から資本性の認定を受けた額です

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(吸収分割契約)

 当社は、2020年1月22日開催の取締役会において、2020年10月1日(予定)を効力発生日とする会社分割(吸収分割)方式により持株会社体制へ移行すること及びその準備を円滑に進めるために分割準備会社を設立することを決議いたしました。また、かかる持株会社体制への移行に伴い、持株会社となる当社は、2020年10月1日(予定)に商号を「日本酸素ホールディングス株式会社」と変更することを決議いたしました。

 なお、かかる持株会社体制への移行及び定款の一部変更については、2020年6月19日開催の第16回定時株主総会にて関連議案が承認され、必要に応じ所管官公庁の許認可が得られることを条件として実施いたします。

 本吸収分割の概要は、以下のとおりであります。

 

(1) 本吸収分割の目的

 当社は現中期経営計画「Ortus Stage 2」の下で「グローバル化の推進」を掲げ、日本、米国、アジア・オセアニア地域において着実に産業ガス事業を拡大してまいりました。更に2018年12月に米国Praxair,Inc.の欧州事業の一部を買収し、当社グループの産業ガス事業は日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極体制となりました。世界の政治経済状況がめまぐるしく変化する中で、当社がさらにグループを発展させていくためには、これまでの国内事業中心の経営体制から脱却し、グローバルガスメジャーとして競争力のあるグループ運営体制を構築することが必要と判断し、以下の事項を企図して、持株会社体制へ移行することを決定いたしました。

 

① 権限委譲による意思決定スピードの向上と適切な経営資源の配分

それぞれの地域における市場と顧客の変化に的確に対応するため、各地域への権限委譲を進め、意思決定のスピード向上を図ります。その一方で、持株会社となる当社は、成長性を踏まえた適切な経営資源の配分等、グループ全体の戦略立案、コンプライアンスの確保、リスク管理体制の強化を進めてまいります。

 

② 事業執行責任、実績の明確化

日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極による事業推進体制のもと、各地域における事業執行責任を明確化します。日本については持株会社体制への移行により、国内ガス事業を承継する子会社は当該事業の執行に特化することで、他の3極とともに持続的な事業成長を目指してまいります。

 

③ 各地域の強みや優位点を共有展開したグループ総合力の強化

当社グループは、各地域において事業分野や技術の領域でそれぞれの強みを持っています。持株会社となる当社が各地域の強みをグローバルに共有展開する推進役となることで、グループ総合力を強化してまいります。

(2) 本吸収分割の方法

 当社を吸収分割会社とし、当社が100%出資する子会社である大陽日酸分割準備会社を吸収分割承継会社とする吸収分割により、国内での産業ガス及び関連機器の製造・販売に関する事業を承継させる予定です。

 

(3) 本吸収分割の日程

2020年2月4日 分割準備会社(㈱大陽日酸分割準備会社)設立

2020年5月15日 取締役会における吸収分割契約の承認

2020年5月15日 吸収分割契約締結

2020年6月19日 定時株主総会における吸収分割契約に関する議案の承認

2020年10月1日 吸収分割の効力発生日、持株会社体制への移行(予定)

 

(4) 吸収分割承継会社が承継する資産・負債の状況

 吸収分割承継会社が当社から承継する権利義務は、効力発生日において、本吸収分割に係る吸収分割契約に定めるものといたします。なお、吸収分割承継会社が当社から承継する債務につきましては、重畳的債務引受の方法によるものといたします。

 

(5) 本吸収分割に係る割当ての内容

 吸収分割承継会社である大陽日酸分割準備会社は、本吸収分割に際して普通株式10万株を発行し、これを全て吸収分割会社である当社に割当て交付いたします。

 

(6) 本吸収分割に係る割当ての算定根拠

 ㈱大陽日酸分割準備会社は当社の完全子会社であり、また本吸収分割に際して大陽日酸分割準備会社が発行する株式の全てが分割会社である当社に交付されることから、大陽日酸分割準備会社が交付する株式数については、両者で協議の上決定しており、相当であると判断しております。

 

(7) 吸収分割承継会社の概要(2020年3月31日時点)

商号

株式会社大陽日酸分割準備会社

本店の所在地

東京都品川区小山一丁目3番26号

代表者の氏名

代表取締役社長  市原 裕史郎

資本金の額

25,000千円

事業内容

産業ガス及び関連機器の製造・販売(ただし、本吸収分割前に事業を行う予定はありません)

(注)株式会社大陽日酸分割準備会社は、2020年10月1日付けで社名を大陽日酸株式会社に変更予定です。

 

 

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)では、「進取と共創。ガスで未来を拓く。」を企業理念として、産業ガス事業の拡大を進め持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

研究開発において、当社独自のガステクノロジーを基盤とした、ガスアプリケーション、環境、ガス分離精製、エレクトロニクス、医療・ライフサイエンス、ファインマテリアル、先端技術分野に向けた新商品・新技術の開発に取組むことで収益拡大に貢献しています。また、知的財産の有効活用と特許出願についても推進しており、2019年12月末時点において当社保有特許件数は798件となっています。

当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は3,389百万円であり、その内訳は「国内ガス事業」に2,691百万円、「米国ガス事業」に658百万円、「サーモス事業」に39百万円となっております。主な研究開発活動の概要は次のとおりです。

 

〔国内ガス事業〕

国内ガス事業においては、当連結会計年度末現在、つくば研究所、山梨研究所、SIイノベーションセンター及び京浜事業所の4拠点が連携して研究開発を実施しています。

近年の当社の開発体制として、2019年10月に新たにデジタルソリューションセンターを設立し、自社生産工場の操業最適化などAI・IoTを用いてデジタル革新に取り組むとともに、顧客の要求に対応しています。また、オープンイノベーションとして、海外を含めたベンチャー企業との事業提携を通じて最新の技術を取り込み、当社保有技術との相乗効果を発揮して開発商材の上市を加速します。

(ファインマテリアル)

・先端技術分野では、AM(アディティブ・マニュファクチャリング)事業を、グローバル規模で進む第4次産業革命の中心分野とみなして当社の注目する事業の一つとしており、コア技術開発とトータルソリューション提案を軸とした事業戦略を推進しております。先行する欧米マーケットとのシナジーも最大限活用し、現状では売上収益数億円の事業規模から、数年以内に数十億円規模への拡大を目指します。

・新素材分野では、高配向カーボンナノチューブ「CNT-uni」、高機能フッ素樹脂、金属ナノ粒子等を開発しました。中でも、当社独自技術により合成した銅ナノ粒子を用いた光焼成用導電性ペーストやパワー半導体用のシート状接合材は、電子機器や自動車部品への展開が期待されています。

(ガスアプリケーション)

燃焼分野、溶接・切断分野及び低温・食品分野を中心に、産業ガスの使用に関する様々な工業製品を開発しております。

・燃焼分野では、電炉の製鋼プロセス向けに省電力貢献をしている酸素燃焼用バーナ・ランスに酸素予熱機能を組込む事で超音速流を形成し、溶解時間を従来より最大50%短縮する「SCOPE-Jet OxHeat」を開発しました。

・炭素繊維市場向けに、製造プロセスからのNH3やHCNを含む排ガスを効率良く除害処理する「Innova-FLASH」を開発しました。

・溶接分野では、日酸TANAKA株式会社と共同で、「サンアーク DS-TIGアドバンストーチ」を開発しました。特殊な冷却方法とガスシールド方法を採用することで、従来のTIG溶接電源でもキーホール溶接が可能となりました。

(環境関連)

・2020年2月に太陽光発電電力を利用したオンサイト型CO2フリー水素の燃料電池フォークリフト充填システムが完成しました。

・高温超電導電力機器を-200℃以下まで冷却可能なネオンガス冷凍機「NeoKelvin-Turbo」は、モスクワ市電力公社の超電導限流器向けに納入され、商用運用が開始されています。

(ガス分離精製)

・ガス発生装置分野では、2019年7月にファイバーレーザ加工機向けに鉄やアルミの切断の専用機とした新モデル(LT60F)を上市しました。本装置のアシストガスにより、レーザカット時に発生する金属溶融物を低減させることで切断品質の向上が可能となりました。また、当社のPSA式窒素ガス発生装置「Nitrocube」の遠隔サポートサービス加入件数も増加し、顧客より好評を得ています。

(エレクトロニクス)

エレクトロニクス分野では、社会のデジタル化により半導体需要は拡大し、プロセス材料の使用量増加や半導体製造装置の大型化が進んでおります。これらの動きに積極的に対応し、電子材料ガスの国内トップシェアを維持しております。

・客先工場のスマートファクトリー化を実現する新たなガス供給システムであるインテリジェント・ガス・サプライングシステム「IGSS」を開発しました。各種監視機能を備え、容器の自動搬送、AIによる消費予測と容器位置情報把握、設備の運転データの記録とこれらをタブレットに集約できるガス監視システムで構成されております。

・半導体製造プロセスで利用される窒素ガスの監視について、熊本大学との共同研究により、金属有機構造体(MOF)を感湿剤とした高応答性、高感度を満足する小型かつ安価な微量水分計を開発しました。

・当社グループ会社のRASIRC社で製造・販売している高濃度H2O2ガス供給装置(Peroxidizer)について、既存酸化剤の使用よりも良質なAl2O3薄膜及びTiO2薄膜を高速成長できることを実証いたしました。

・「THVPE法による高品質バルクGaN成長用装置」を科学技術振興機構(JST)のNexTEPプログラムに基づいて東京農工大学と共同で開発しました。従来法と比べ高温(1,200~1,400℃程度)で結晶成長させることで3倍以上の成長速度で高品質かつ厚みのある結晶成長を実現し、安価で高品質なバルクGaN結晶の大量生産に近づきました。

 

(医療・ライフサイエンス)

医療・ライフサイエンス分野では、2015年に国内3基目の「酸素-18 安定同位体標識水(以下、Water-18O)」製造プラントを増設し2016年より「Water-18O」の製造を開始しています。この製造プラントには酸素安定同位体17Oを酸素蒸留法により分離する技術を適用しており、分離した17Oを用いた「酸素-17 安定同位体標識水(以下、Water-17O)」の製造に国内で初めて成功しました。この「Water-17O」は、革新的な17O-MRI脳疾患診断の造影剤として注目されています。また、当社では細胞自動凍結保存装置「クライオライブラリー」を始め、各種細胞保存関連商材を産学官に納入しています。

・2019年2月よりGMPに準拠した厳格な品質管理の下、高品質な「Water-17O」を安定供給しています。

 

〔米国ガス事業〕

米国ガス事業においては、コロラド州ロングモント研究所を拠点にエレクトロニクス分野における高純度材料ガスの製造、精製、分析技術の開発を行っております。グローバル市場において、めまぐるしく変化する顧客のニーズをいち早く捉えるため、グループ会社間でマーケティング活動の共有化や製造及び物流を含めたサプライチェーンの最適化に取り組み、高品質、高付加価値製品の開発に活かしております。当連結会計年度は、半導体製造プロセス用ガス分析技術の対象範囲拡大と併せて、アジア量産工場におけるガス製造プロセス改善及び高品質化に貢献してまいりました。

ガスアプリケーション分野においては、ニュージャージー州を拠点として、食品産業分野の顧客を中心にガス利用提案を行っております。当連結会計年度は、これまで開発した液体窒素を大量に使用する食品冷凍装置に加え、食品包装ガス混合装置の受注に注力し、新規顧客を獲得しました。また、山梨研究所で開発されたガス精製装置を米国で受注するなど、当社技術を活用した米国市場の開拓が着実に進んでおります。

外部リソースとの積極的な協業を推進するオープンイノベーション施策においては、米国ベンチャー企業のSulfaTrap LLC社と連携し、顧客へ超微量硫黄分を除去可能な精製剤を販売するとともに、AM関連の米国装置メーカーと連携しガス供給装置を販売するなど、ガス事業とのシナジー創造を推進しております。

 

〔サーモス事業〕

サーモス株式会社は、「人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案します」という企業理念に従い、断熱技術を利用することで省エネルギーに貢献するとともに、快適なライフスタイルを実現すべく、積極的な商品開発を推進しております。

当連結会計年度は、年々伸び続けているタンブラー市場において、広口で口当たりが良く飲みやすいように口元を丸くし、持ち運びできるようにシンプルでお手入れしやすいフタを設けた真空断熱ケータイタンブラーの新商品を開発しました。さらに、色付きの陶器風デザインをあしらった真空断熱タンブラーを開発しました。セラミックコーティングを施すことで陶器製タンブラーをイメージさせるとともに、食器洗浄機対応機能も備えてお手入れ性の向上も図りました。また、ステンレス製の持ち易いグリップをレーザー溶接により金属本体に取り付けた大容量の真空断熱ジョッキも開発し、タンブラー商品の拡充をおこないました。

スポーツカテゴリーでは、山での厳しい条件に対応した山専用ボトルに750mlの容量の商品を追加するとともに、カラー、グラフィックの変更をおこなった真空断熱ボトルを開発しました。さらに、昨年開発した自転車のボトルケージに収まる専用設計の真空断熱ストローボトルに追加する形で、保温、保冷の両方が可能な真空断熱ケータイマグを開発しました。

ホットランチカテゴリーでは、フタの開けやすさにこだわり、内部が減圧ないし加圧状態でもフタが開けやすいクリックオープン構造のフタを搭載した真空断熱スープジャーの新商品を開発しました。

キッチンウェアカテゴリーでは2018年の年末に発売を開始したフライパンで新たにプラズマ超硬質コーティングを施し、圧倒的な耐久力を有したフライパンと炒め鍋を開発しました。また、軽量タイプで使いやすいガス火専用のフライパン、炒め鍋、玉子焼きフライパンの新商品開発もおこないました。

これらを初めとして、当連結会計年度に投入した新商品は91機種となりました。このように積極的な新商品投入を続けることにより、サーモスブランドは「環境に配慮するとともに新しいライフスタイルやそれを可能にする商品を提案するブランド」として、市場やエンドユーザーから高い評価を受けております。

 

 (注) 上記の金額に、消費税等は含まれておりません。