(1) 経営方針
当社グループの企業理念の根幹にある価値観は、「しなやかに変化し、独創の価値を生み出し提供する」ことにあります。
「しなやかに変化する」とは、
・既存の価値観に固執せず積極果敢に新しい価値観を取り込むこと、
・変化をいとわず変化の中にこそ勝機を見出せること、
・柔軟な軌道修正や大胆な創造的破壊ができ、それらに応じて自らを再定義できること
「独創の価値を生み出し提供する」とは、
・既成概念にとらわれることなく、顧客ニーズの本質を見極め、そこに一歩でも近づける商品サービスの創造と提供を追求し続けること、
・顧客の要望に応えるだけでなく、確信をもってその本質に顧客を導くこと
であります。
当社グループが企業理念に謳うこの「しなやかに変化しながら、独創の価値を生み出し提供する」という価値観は、当社グループの黎明期でこそ“生き残る術”でありましたが、それは“成長を支える人と組織のあり方”へ、そして“未来に受け継ぐべき企業文化”へと着実に進化してまいりました。
そして、この価値観を実践することによって当社グループが果たすべき使命は、事業を通じて人と社会の活力ある発展に貢献することと考えております。
創業以来、130年超の期間において、当初は染物業とその技術の海外輸出をもって、また近年においては収益不動産とそれを取り巻く付加価値の組み合わせの提供によって、当社グループはこの使命を果たし続けてきたと自負しております。そして今、すべての企業が向き合う新型コロナウイルス感染拡大による経営環境危機は、当社グループにとりましてまさに「しなやかに変化する」ことができるかどうかの試金石になるであろうと認識いたしております。
(2) 経営環境
① 当期の経営環境
当連結会計年度における国内経済は、依然として先行き不透明な状況に終始しました。期中においては、世界的な金融引締めや国際紛争に起因する金融資本市場の変動、物価上昇、サプライチェーンにおける制約、急激な為替変動など、経済環境の目まぐるしい変化が相次いで発生し、今後も予断を許さない状況が継続するものとみられます。新型コロナウイルス感染症に関しては、拡大防止に配慮した「新しい生活様式」への適応が進んだものの、引き続き感染再拡大には注視する必要があります。
当社グループの主要な事業領域である都心部の収益不動産売買市場は、低金利などの資金調達環境を背景として好調に推移しております。当社グループが注力する10億~20億円規模のオフィス用・居住用収益不動産に対しては、安定的なキャッシュ・フローを求める投資家を中心として底堅い需要が存在し、取引価格が上昇傾向にあります。
東京都心5区のオフィスビルの賃貸市場は、ハイクラスオフィスを中心に平均賃料の下落が続き、空室率も横ばいで推移していることから、軟調な状況となっております。一方で、「ウィズコロナ」においてオフィスに求める価値・ニーズが変化したことにより、トレンドを捉えた仕様の中小型オフィスには底堅い需要が存在しています。
また、東京都内の居住用マンションの賃貸市場は安定的な需要に下支えされ、平均家賃が上昇しており堅調に推移しております。
当社グループの拠点がある米国のロサンゼルスにおいては、政策金利の大幅な引上げにより資金調達環境の様相が変化したものの、収益不動産売買市場はインフレに伴う平均家賃の上昇を背景として好調に推移しております。
このような事業環境のもと、当社グループの主要な事業である収益不動産販売事業は、投資家・入居者のニーズを的確に捉える「商品企画力」を軸として、仕入・販売を一体的かつ戦略的に推進してまいりました。仕入れに関しては、ニーズに沿った適切な商品企画を立案し、収益性の向上を見据えることで、過熱する競争環境においても、積極的な推進が可能となりました。その結果、当期末の収益不動産残高は過去最高水準を更新し、大幅に拡大しております。また、販売に関しては、物件の仕入れ時から“有望な買い手ニーズ”を想定して活動することで、効率性・利益率ともに向上し、当社グループの業績を牽引いたしました。
海外不動産事業は、ロサンゼルスの収益不動産における仕入・商品化・販売サイクルの回復に注力いたしました。また、現地パートナーとの共同事業である分譲タウンハウス開発や物件オーナーの売却仲介にも積極的に取り組み、事業拡充が進んでおります。
② 今後の見通し
今後の見通しにつきましては、金融資本市場の変動や国際情勢、新型コロナウイルス感染症の影響により、先行き不透明な経済環境が続くと考えられます。特に、不動産売買市場は金融資本市場の影響を強く受ける性質を持つため、国内においても金融引締め局面が到来する可能性を考慮して事業戦略を遂行していく、難しい局面が想定されます。
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、足元の過熱化した競争環境に対応すべく、商品企画力の強化を進め、利用者ニーズへの適合や環境認証の取得を積極的に進めてまいりました。こうした商品企画力は、今後の不確実性の高い状況でも有効かつ再現性があり、当社の競争優位性の源泉になると考えております。「第1次中期経営計画」に掲げる目標達成に向けては、収益不動産販売事業における商品企画力を軸にした仕入・販売の一体的推進を継続して進めてまいります。
「第1次中期経営計画」最終年度である2023年12月期の連結業績計画は、下表の通り、売上高40,000百万円、EBITDA2,730百万円、経常利益1,870百万円、税引前当期純利益2,000百万円という目標を掲げています。2023年12月期はその達成に向けて、上記の収益不動産販売事業の積極的推進に加えて、様々な観点において蓄積を進めることが肝要であると考えております。すなわち、マーケティング力、販売ネットワーク、DX、そして何より人的資本投資など、来るべき飛躍のための蓄積を積極的に進めてまいります。
この他、当社グループは事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しております。当社グループの主力事業は、不動産のもつポテンシャルを最大限に活かし、人々の生活や社会活動の活性化を促すという点において、社会的意義を有する「不動産再生事業」です。さらに、マテリアリティ(重要な経営課題)への取組みを推進することで、当社グループが社会に提供する価値を極大化し、企業価値の向上に努めてまいります。
(注) 当社グループでは、当連結会計年度の経営目標を「業績計画」として開示しております。「業績計画」は経営として目指すターゲットであり、いわゆる「業績の予想」または「業績の見通し」とは異なるものであります。なお、業績の予想については、その時点におけるグループ全体の確度の高い情報および合理的であると判断される情報を基に、各四半期における進捗の見通しを「フォーキャスト」として適時更新し開示しております。
① 第1次中期経営計画で目指す姿
当社グループは、2021年5月13日付公表の「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)において目指す将来像として下図の4点を掲げております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)より抜粋》
a.SDGs経営の推進
当社グループは、サステナブルな社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上に向けた取組みを重要な経営課題と認識し、取締役会での議論を経て、4つのマテリアリティを特定しました。

《マテリアリティ概念図(当社コーポレートサイトより)》
各マテリアリティの考え方及び目指す姿は以下のとおりです。
イ. 活かしてつなぐ不動産再生
世界的な社会環境の変化や危機に対し、当社グループが主力とする収益不動産販売事業を通じた社会課題の解決を目指します。
<目指す姿>
・不動産と地域社会の活性化に寄与し、ステークホルダーの期待に応える。
・不動産の再生事業を通じて、より環境と社会にやさしい不動産へ昇華させ、循環型社会に寄与する。
ロ. 働きがいとイノベーションの創出
人的資本の強化や革新的技術の追求によって競争優位の源泉を確立し、当社グループの持続的かつ加速度的な成長の促進と、社会への提供価値の最大化を目指します。
<目指す姿>
・多様な人材が個性を発揮し、自ら進化し続けられる組織文化を醸成することで、企業成長を加速する。
・社内外の多様な知見やテクノロジーを柔軟に組み合わせることで、社会に価値を提供し続ける。
ハ. 安心と安全の提供
時代とともに変化するステークホルダーのニーズへ適合し、信頼を獲得し続けることを目指します。
<目指す姿>
・ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを継続し、社会的信頼を構築し続ける。
・高い防災性を備えた不動産の提供によって、安心・安全な地域社会の実現に寄与する。
ニ. 企業価値を高めるガバナンス強化
激しい変化に柔軟に適応し、持続的に企業価値を向上させるべく、ガバナンス体制の継続強化とステークホルダーとのパートナーシップの発揮を目指します。
<目指す姿>
・意思決定の迅速化と透明性向上を図り、社会・環境変化に柔軟に対応していくことをもって企業の持続性を高め、あらゆるステークホルダーの期待に応える。
・人権尊重を含めたコンプライアンス意識の高い組織風土を醸成し、ステークホルダーから信頼を獲得し続ける。
なお、当社グループのサステナビリティに関する詳細情報はコーポレートサイトをご確認ください。
(https://www.adwg.co.jp/sustainability/)
b.「複利の経営」への転換
当社グループは、超過利潤を持続的に実現し続ける「複利の経営」に転換するべく、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を上回る状態を目指しております。そのため、Debt性の資金調達手段の拡充を企図し、クラウド・ファンディングや銀行保証付き私募債の発行を積極的に推進しております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)における超過利潤の推移》
c.「プライム市場」への上場
当社は、2022年4月に東京証券取引所による市場再編に伴って「プライム市場」へ移行いたしました。一方で、移行基準日時点(2021年6月30日)において、当該市場の上場維持基準の内、流通株式時価総額について基準を充たしていないことから、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示しております。計画期間は「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)の結果が公表される2024年12月期としており、同計画の達成を通じて超過利潤を実現し「複利の経営」に転換することで、企業価値の増大を企図しております。
d.「5年後3割」への通過点
当社グループは、イノベーションを可能にし、既存の延長線上にない成長を実現するべく、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を両立させた「両利き」の経営を目指し、2025年12月期における“脱”不動産事業(将来的に第2の柱とする不動産領域以外の事業)収益の割合を3割に到達させる長期目標を掲げてまいりました。そのための手段の一つであるコーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)の推進を通じて、今般新たに「ファイナンス・アレンジメント事業」を開始しております(2022年8月26日公表)。今後もDXやM&A等を活用し、新たな価値創造に取り組んでまいります。

《チャールズ・A. オライリー、マイケル・L. タッシュマン(著)『両利きの経営』、東洋経済新報社、2019》
② 資本コストについての考え方
WACC(加重平均資本コスト)を引き下げる観点からは、社債に代表される負債性資金の調達が有効と判断しておりますが、一方で投資適格となりうる格付けの取得には、一定以上の純資産額、時価総額が前提となるところであり、ガイダンスで示した規模感はその最低目安であると考えております。
2021年5月13日公表の「第1次中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期)」では、「超過利潤を創出する経営」「時価総額の向上」の実現を基本方針の1つとしており、WACC(加重平均資本コスト)の算定には、一定の前提として、株主資本コスト8%、有利子負債コスト1.5%、税率35%を用いております。資本資産価格モデルから導き出される株主資本コスト、いわゆるCAPMについては、自社で算定し把握につとめてまいりますが、WACC(加重平均資本コスト)の算定には用いません。なお、長期的な企業経営の観点からは、ガイダンスで示した規模感へ至る成長過程において資金需要に応じて、柔軟にエクイティ・ファイナンスの検討、実施を必要とすることがあり、WACC(加重平均資本コスト)は一定ではありません。当社グループが投資家や株主の皆様の期待に応えるためには、中長期的な成長の実現が最も重要であると認識し、進捗を明瞭に開示し、当社への投資に際して期待できる収益の検討材料を提供してまいります。
<当社グループの目指す規模感(ガイダンス)>
※ガイダンスの実現スケジュールに時間軸は置かないものとしております。
③ 継続して対処すべき課題
a. 好循環事業サイクルへの転換
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながらコントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出すビジネスモデルです。これに対し現状は、「第1次中期経営計画」の達成に向けてアグレッシブな拡大基調にあるため、残高拡充のための仕入れが収益確保のための販売を追従する状態にあります。通常期にも増して積極的な仕入れを展開することにより、好循環の事業サイクルに転換する必要があります。
b. 資金調達手段の多様化
当社グループは、収益不動産販売事業のバリエーションとして、不動産小口化商品事業や開発事業などを国内外において積極的にラインナップし、事業全体の拡大を図っております。いずれも旺盛な資金需要があるため、金融機関からの借入を中心としつつクラウド・ファンディングやSTO※を活用するなど、資金調達手段をさらに多様化する必要があります。また継続的な超過利潤の創出のためには、EquityとDebtの最適なバランスを検討しつつ資本効率を高める必要があることから、資金調達手段の多様化はますます重要となってまいります。
※ STO…Security Token Offering:ブロックチェーンを活用したデジタル証券による資金調達
c. 人的資本投資の強化
複雑化する事業環境や加速する変化の中にあり、当社グループが更なる成長を果たしていくためには、経営戦略に合致した人的資本への投資が必要不可欠です。当社は予てより新卒採用に注力してまいりましたが、こうしたファーストキャリア人材の早期戦力化をはじめ、中堅社員のマネジメント力強化、また幹部候補社員の選抜と育成など、すべての階層において適切な教育プログラムを導入し、成長を促進する必要があります。また多様な人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成や職場環境の整備も、継続して実施する必要があります。
d. DX推進の加速
当社グループが「第1次中期経営計画」を達成し、さらにそこから先も持続的に成長を果たしていくためには、事業や経営のスピードと効率を格段に高めること、すなわち生産性の向上が喫緊の課題です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用はそのキーとなるものであり、優先度を高めかつ全社横断的に取り組む必要があります。またDXはスピードや効率化といったオペレーション改革に留まらず、それを活用した新たな事業機会の創出や獲得まで視野に入れるべきであり、「収益に寄与するDX」を掲げ積極的に取り組んでまいります。
e. 新たな事業の柱の構築
当社グループは国内における収益不動産販売事業を主力として成長をしてまいりましたが、今後それに匹敵する第二・第三の事業の柱を構築する必要があります。既存事業の延長においては、海外事業や不動産小口化商品事業の成長に期待し経営資源を相応に充当してまいります。加えて既存の不動産事業領域を超えた事業を構築するために、CVC事業やM&A等の手法を果敢に活用し、新たな事業機会の創出を企図します。そうした手法を活用しやすくするという狙いで、すでに持株会社体制への移行を実施しており、今後はその具現化を進めてまいります。
以下において、当社グループの事業展開その他に関するリスク要因になる可能性があると考えられる主な項目を記載しております。当社グループといたしましては、必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる場合には、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金利動向及び地価動向等の経済情勢の影響を受けやすく、当社グループにおいてもこれらの経済情勢の変化により各事業の業績は影響を受けます。当社グループでは、不動産にかかるリスクの軽減と同時に、収益の極大化を図ることができるよう経済情勢の動向に注意を払っておりますが、予測を上回る変化によって不動産市況に変調をきたし、想定した以上の資産価値の下落を生じるような事態になった場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
(2)収益不動産所在地域の偏在及び自然災害やパンデミックの発生
当社グループが保有または管理している収益不動産は、経済規模や顧客ニーズを考慮に入れ、国内においては首都圏、海外においては主に米国ロサンゼルスを中心とする地域という、賃貸資産としての安定稼働性の高い地域に偏在しております。地震その他の自然災害やインフルエンザ等の感染症の感染拡大等、当該地域における局地的な事象の影響で、当該地域の経済活動に支障が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、管理業務を受託している賃貸マンションやオフィスビル、商業施設のオーナー及び入居者、収益不動産の売主及び買主等の顧客情報を保有しており、今後も当社グループの業容の拡大に伴い保有する情報が増加し精緻化することが予想されます。当社グループといたしましては、これら顧客情報を正確かつ最新の内容に保つよう努めるとともに、内部の情報管理体制の徹底により顧客情報の保護に注力しております。しかしながら、不測の事態により顧客情報の漏洩や詐取等の流出があった場合、損害賠償や信用低下等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
当社グループは金融機関からの資金調達に際して、特定の金融機関に依存することなく、案件ごとに金融機関に融資を打診し、融資実行を受けた後に各プロジェクトを進行させております。しかしながら、何らかの理由により計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業展開が影響を受ける可能性があります。また、有利子負債の主な返済原資は収益不動産の売却代金ですが、売却時期や売却金額等の条件が想定から悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、収益不動産の取得等のための資金を金融機関からの借入により調達しており、連結貸借対照表における有利子負債残高は、2022年12月期末において、連結総資産の60.9%を占めます。当社グループといたしましては、資金調達手段の多様化に積極的に取り組んでまいりますが、市場金利が上昇する局面においては支払利息等の増加により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
③ 資金調達手法の多様化の遅延または頓挫
当社グループは、事業拡大に伴う旺盛な資金需要に対応するべく、過去に4回のライツ・オファリングを実施するなど、直接金融市場における資金調達を積極的に実施してまいりました。一方で「第1次中期経営計画」で述べているように、超過利潤を創出する経営に転じるためには、EquityよりもDebt性の調達に比重を置く必要があり、クラウドファンディングを用いた調達や、STOなど多様な調達手法の研究を進めておりますが、経験値や情報あるいは専門人材等の観点から、それらが遅延または頓挫した場合、資金調達力が大きく低下する可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける他、超過利潤創出ができない可能性があります。
当社グループの各事業は、不動産及びその周辺事業はもとより、各種事業領域における専門性の高い知識と豊富な経験を有する人材によって成り立っており、人材こそが当社グループの経営資源の核となるものであります。したがいまして、代表取締役をはじめ各部門を管掌する取締役、部門業務を執行する部門長等の特定の幹部人材、及び各部門の中枢を担う人材が、何らかの理由により業務遂行が不可能または困難となり適切な人材が適時に代替できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成を図ることやリモートワークの活用、フレキシブルな時間管理など働き方改革への適切な対応等を実施することで、新卒・中途入社に関わらず、採用市場における競争力を高めることを目指しておりますが、当社グループが求める人材の確保が充分にできない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、国内外において、法令に基づく許認可や、各種の税法及び外国為替管理の規制等の適用を受けております。当社グループは、法的規制の遵守を徹底しており、現時点において当該許認可の取消し等の事由は発生しておりませんが、何らかの理由により、当該許認可が取消され又はそれらの更新が認められない場合等には、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに、業績が影響を受ける可能性があります。また、今後の法律改正又は規制の動向によっては、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
なお、当社グループが取得している許認可等は次のとおりです。
(7)米国事業を取り巻く法規制等の諸要因の変更
当社グループは、米国のロサンゼルスに拠点を置き、主に日本国内の投資家を対象顧客として、不動産販売事業を行っております。ロサンゼルスの不動産業界は、米国の着実な景気回復に伴い、中古住宅の価格は引き続き高水準でありますが、日本国内の投資家が所有する海外不動産に対する税制の見直しや、米国現地での法規制の影響等で投資に対する合理性が低下する他、新型コロナ感染の再拡大によって賃料の滞納が発生し、当社グループの米国での事業に影響が及ぼす可能性があります。
(8)コーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)における投資先企業の業績低下
当社グループのコーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)は、DXなど当社グループの事業を相乗的に成長発展させる可能性を獲得すべく、業種業界を限定せず、独自の技術・サービスを持つ国内外のスタートアップ企業等に対して投資を行うものであります。したがいまして、実質的な投資リターンを求めるというよりも、マーケティングコストあるいは研究開発費用に近しい位置付けと考えております。ただし、投資であることに変わりはないため、事前には当該企業の詳細なデューデリジェンスを、投資実施後は当該企業の事業進捗に対する定期的にモニタリングを徹底し、可能な限りリスクを回避するよう努めております。しかしながら、投資先企業の業績によっては、投資の回収ができなくなること及び評価損の計上が必要になる可能性があります。
(9)新型コロナウイルス感染拡大の直接的・間接的影響
当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大のリスクに対応するため、従業員及びその家族、取引先やステークホルダーの健康・安全確保と感染拡大防止を最優先事項とし、在宅勤務や時差出勤の活用、出張・対面営業においても感染防止対策を講じて新型コロナウイルスの影響の極小化を図っておりますが、当社グループの役職員において重大な感染クラスターが発生した場合、また政府による緊急事態宣言等が再度発出され営業活動に支障をきたすような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
① 収益不動産販売事業への影響
経済の停滞によるオフィス需要の停滞などの影響から、今後の不動産市況が再び不透明に転じた場合、当社グループの主要な顧客である個人富裕層を中心とした投資家不動産オーナー、事業法人・機関投資家等の投資マインドが低下する可能性があります。
② 金融機関からの融資の影響
不動産融資に対する金融機関の方針の変化などにより、当社グループ及び当社顧客の資金調達に影響を及ぼす可能性があります。
③ リノベーション・改修事業に係る工事への影響
物流の停滞による資材の遅れや、コロナウイルス感染症拡大抑制のための工事中断、工事時間短縮などの施策により、リノベーション・改修工事が遅延する可能性があります。
④ 賃料収入への影響
(国内)
当社グループが保有する不動産のテナントからの家賃収入が滞る可能性があります。また、テナント撤退に伴う空室率の上昇、テナント入替による賃料減額など賃料収入に影響を及ぼす可能性があります。一方、政府による家賃支援給付金などの政策効果で、当社グループの賃料収入への影響が軽微となる可能性もあります。
(米国)
米国事業においては、投資家に不動産を販売後、当社グループでマスターリースし、管理運営すると同時に賃料収入を得ているケースがあります。コロナウイルス感染症に伴い米国政府により発出された立ち退き訴訟停止措置(実質的な賃料支払い猶予)により、テナントの賃料に延滞等がある場合には影響を受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における売上高は27,856百万円(通期計画達成率92.9%)、EBITDAは1,515百万円(通期計画達成率116.6%)、経常利益は953百万円(通期計画達成率119.2%)、税引前利益は910百万円(通期計画達成率113.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は527百万円(通期計画達成率117.2%)となりました。
(単位:百万円)
(注)1.(不動産販売)は「収益不動産販売事業」、(ストック)は「ストック型フィービジネス」、「税引前利益」は「税金等調整前当期純利益」、「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」をそれぞれ省略したものです。
2.EBITDA(償却等前営業利益):営業利益+償却費等
償却費等には減価償却費、ソフトウエア償却費、のれん償却費等のキャッシュアウトを伴わない費用を含みます。
セグメントの概況は次のとおりです。なお、当社グループでは営業利益をセグメント利益としております。
(収益不動産販売事業)
売上高22,314百万円、EBITDA1,713百万円、営業利益1,711百万円となりました。
収益不動産を取り巻く活況な環境の下、需要を見極めた的確な商品企画を軸にした仕入れから販売までの好サイクルにより競争力が高まったこと、また不動産小口化商品販売事業において金融機関との提携による販売ネットワークの拡充が奏功したことにより、好調に推移しました。
仕入高は28,159百万円となりました。かねてより注力してきた組織力強化が奏功し積極的な仕入活動を行った結果、優良物件の仕入を行うことができました。
その結果、収益不動産残高は41,476百万円((注)2.参照)となり、前連結会計年度末より12,562百万円上回りました。
収益不動産販売事業は、当社グループ全体の業績をけん引する重要な事業ですが、「第1次中期経営計画」の中間進捗としては、概ね計画通りの実績となったほか、収益不動産残高の水準を過去最高値に高めることができ、計画達成に向け堅調に推移していると判断しております。また数値面のみならず、仕入れのための組織力や商品企画力など、次につながる定性面での成果も得ることができたと認識しております。
(ストック型フィービジネス)
売上高5,868百万円、EBITDA1,335百万円、営業利益1,235百万円となりました。
当社グループが保有する収益不動産からの賃料収入を収益の柱としているため、好調な収益不動産販売事業に連動し安定的な売上・利益を確保することができました。
なお、同ビジネスにおける「ストック型」の主な売上としては、株式会社エー・ディー・パートナーズの管理収入、ADW Management USA, Inc.の賃料収入など、また「フロー型」の主な売上としては、株式会社スミカワADDの工事・改修収入などがあります。
収益不動産の期中平均残高は、10億~20億円規模の収益不動産の積極的な取得が寄与したことから物件単価が上昇し、前連結会計年度の27,796百万円に対し当連結会計年度は34,876百万円に増加しております。
ストック型フィービジネスは、当社グループの業績の安定性を担保するための重要な位置付けであります。その観点においては、まずは株式会社エー・ディー・パートナーズのプロパティ・マネジメントが今以上に収益力を高める必要があると認識しております。特に、収益不動産販売事業で取り扱う商品が大型化し、かつオフィス物件のウェイトが高まっている昨今にあり、それらに対する対応力を、効率化と並行して高めていく必要があります。
(注)1.各セグメントの営業利益は、全社費用等のセグメントに配賦しない費用及びセグメント間の内部取引による営業費用控除前の数値であり、その合計は連結営業利益と一致しません。
2.収益不動産残高41,476百万円には、東京国税局から過年度の消費税に関する更正通知を受領したことに伴い資産計上している消費税等引当見積額(11百万円)を含めておりません。
3.「ストック型フィービジネス」のうち、中長期保有用もしくは短期販売用の収益不動産からの賃料や、販売済みの収益不動産のプロパティ・マネジメント受託によるフィー収入等を「ストック型」、内装・修繕工事フィー、顧客リレーションから派生的に得られる仲介収入を「フロー型」と位置付けております。
当連結会計年度においては、優良な収益不動産の仕入れを積極的に進めた結果、現金及び預金が1,008百万円減少し、また販売用不動産及び仕掛販売用不動産は12,562百万円増加し、有利子負債(短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、社債及び長期借入金)は9,436百万円の増加となりました。
これらの要因等から、前連結会計年度と比較し、純資産は1,040百万円増加しました。配当により利益剰余金164百万円の減少がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益527百万円の計上の他、第三者割当増資による新株予約権の行使が進み、283百万円の資金の増加、為替換算調整勘定524百万円の増加がありました。
資産合計と負債純資産合計は、前連結会計年度末と比較し、11,311百万円増加しました。
当期連結貸借対照表の詳細は以下のとおりです。
「構成比」は、資産合計(負債純資産合計)に対する比率を示しています。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は53,359百万円となりました。うち、販売用不動産及び仕掛販売用不動産が41,488百万円(構成比77.8%)、現金及び預金が7,425百万円(構成比13.9%)を占めています。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、37,501百万円となりました。うち、有利子負債が32,515百万円(構成比60.9%)を占めています。
(純資産)
純資産合計は、15,857百万円となりました。うち、資本金及び資本剰余金が11,561百万円(構成比21.7%)を占めています。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、7,423百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果、資金は11,454百万円減少しました。これは、税金等調整前当期純利益910百万円を計上した一方で、棚卸資産の取得により、資金が12,262百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度の営業活動においては、全ての利益項目において通期計画を上回る業績を計上しつつ、商品企画を軸とした仕入活動の遂行と物件の大型化が営業効率を向上させたことで、優良な棚卸資産の仕入れを行うことができました。
投資活動の結果、資金は142百万円増加しました。これは、投資有価証券の取得による支出438百万円があった一方、貸付金の回収による収入649百万円があったことが主な要因です。
当連結会計年度の投資活動においては、コーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)を継続して推進しました。また、米国住宅債権投資における債権回収が順調に完了しました。
財務活動の結果、資金は10,074百万円増加しました。これは、支出面では配当金の支払い163百万円の他、借入金の返済、クラウドファンディング、社債の償還による支出が合計18,367百万円あった一方で、収入面では新株予約権の行使による収入281百万円があったこと、新たな借入金、クラウドファンディング、社債の発行による収入が合計28,335百万円あったことが主な要因です。
当連結会計年度の財務活動においては、第三者割当により発行した新株予約権の行使が行われた他、クラウドファンディングや銀行保証付きSDGs私募債を活用し、資金調達手法がさらに多様化しました。
当社グループは、収益不動産販売事業、ストック型フィービジネスが主要な事業であり生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
当社グループは、収益不動産販売事業、ストック型フィービジネスが主要な事業であり受注活動を行っていないため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成されております。その作成に当たり、会計方針は原則として前連結会計年度と同一の基準を継続して適用するほか、引当金等につきましても過去の実績等を勘案し合理的に見積りを行っておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループ(当社及び連結子会社)の主たる研究開発活動の方針、概要は以下のとおりです。
「しなやかに変化しながら、独創の価値を生み出し提供することによって、人と社会の活力ある発展に貢献」するという企業理念に基づき、「"脱"不動産事業収益3割」を中期的な目標として、プロジェクト当たり利益額と事業スピードを長所とする当社グループ主力である収益不動産販売事業における「不動産市況の影響を受けやすい」「資金投下額が大きい」という課題対策を基本方針として、研究開発を推進しております。
当社グループは、2020年12月に、完全子会社である株式会社エンジェル・トーチを通じてコーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)に進出し、DX(デジタルトランスフォーメーション)加速を背景に、投資ソリューションを大きく拡張する可能性を持つような知見、独自の技術・サービスを持つ国内外のスタートアップ企業に対して投資を行うことで、投資ポートフォリオの拡大とともに、CVC事業活動体制の最適化と拡大を図り、当社グループの独創の価値を生み出し提供することを目指してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額につきましては、当社グループの研究開発活動が業務の一環として行われているものであることから、区分計上しておりません。