第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)会社の経営基本方針

当社グループは、「豊かな共生世界の実現」をパーパス(社会における存在意義)に掲げ、生活者・顧客の立場にたって、心をこめた“ESG視点でのよきモノづくり”を行い、世界中の人々のこころ豊かな未来と、人と地球が共に生きる持続可能な共生世界の実現に貢献することを目指しています。

私たちは、企業理念である「花王ウェイ」をグループ全員で共有し、考え方や行動の拠り所として日々実践し、清潔・美・健康の領域を中心に、時代の変化に対応しながら130年余り事業を展開してきました。

2009年には、人類だけでなく自然界にもよき存在であるようにと「環境宣言」を行い、自然と調和するこころ豊かな毎日を目指して、その歩みをさらに一歩進めました。2019年には新たなESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(以下、KLP)を発表し、ESGを経営の根幹に据えることを宣言しました。

しかし今、私たちが使命に掲げる「豊かな共生世界」を実現するための土台である人の生命に危機が及んでいます。そして今後もその脅威は、私たちの生活を根幹から脅かす存在であり続けることが予想されます。

このような中、私たちはこの切実な社会的課題に花王らしいアプローチで取り組んで行きます。生活や生態に加え、人の生命を守ることを強く意識し、未来のいのちを守る会社になっていきます。「きれいを こころに 未来に」を新しいコーポレートスローガンに掲げ、地球が生きる場として持続的にきれいに保たれること、社会が持続的に豊かであること、そして人が危害から守られて笑顔で暮らせること、これらすべてを実現するために貢献していきます。

結果として、これらが財務的な成果、そしてステークホルダーへの還元へと繋がり、この仕組み自体が持続していきます。今後も花王グループは、より高いレベルでの企業価値向上を目指していきます。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標

① 長期経営戦略

当社グループは2030年までにあるべき姿として、持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献との両立によって、これまでの『グローバルで存在感のある会社「Kao」』になるという将来像をさらに一歩進め、『グローバルで存在価値のある企業「Kao」』を目指します。ESGを通じて将来にわたって、人・社会・地球にとって価値のある存在になっていきます。

私たちは、環境(E)においては、ゼロ浪費、カーボンゼロ、さらにその先のカーボンネガティブを目指します。社会(S)においては、無駄な消費がなくなることを願い、その人に寄り添った唯一無二のパーソナライズを進めていきます。そして、ガバナンス(G)をしっかりと効かせながら、志を共にする仲間と共に正道を歩んでいきます。最小限の資源で最大の価値を生み出す、"Maximum with minimum"を経営の指針として、より良い明日をつくるために今後も我々は成長し続けます。

 

グローバルで存在価値のある企業「Kao」

■持続可能な社会に欠かせない企業

■高社会貢献&高収益グローバル企業

■ステークホルダーへの成長レベル還元

2030年財務目標(結果として)

・売上高 2兆5,000億円

・営業利益 4,000億円

・連続増配継続 41期

 

 

② 中期経営計画

2021年から2025年までの5年間は、2030年までにあるべき姿を実現させていくための礎となる重要な期間です。そのために花王グループ中期経営計画「K25」では、Vision(ビジョン)を「持続可能で豊かな社会への道を歩む Sustainability as the only path」と定め、3つの目的を掲げます。

持続可能な社会に欠かせない企業になるためには、2019年に発表した新ESG戦略 KLPを積極的に進め、無駄なモノは極力つくらないサステナブルな自走社会をリードしていかなければなりません。そして、KLPに関する投資を必ず財務的な成果「未来財務」に繋げていきます。

投資して強くなる事業への変革については、「Another Kao(もうひとつの花王)」を始動しています。私たちは、切実な悩みを抱える生活者のために、これまで培ってきた技術や知見、デジタルトランスフォーメーション(DX)を最大限に活用し、「未来のいのちを守る」新たな事業を生み出します。同時にその基盤となる従来の事業に新しい力を加え、「Reborn Kao(基盤花王)」として再活性化させます。

そして、これら2つの目的を達成するためには社員の活力は欠かせません。3つ目の社員活力の最大化については、社員一人ひとりが自ら掲げる大きな挑戦を最大化できるように新たな目標管理制度「OKR(Objectives and Key Results)」を導入しています。さらには、社外からの人財登用を積極的に行うと共に社外との協業も進めています。

これら3つの目的を達成することで、結果として、売上・利益は過去最高(売上高 1兆8,000億円、営業利益 2,500億円、EVA 1,000億円、連続増配 36期)を達成し、社員、消費者・顧客、取引先、株主等会社を取り巻く多くのステークホルダーに成長に見合う高レベルの還元を目指していきます。

これからも花王グループは、「花王ウェイ」に掲げる「正道を歩む」を実践しながら、より良い明日をつくるために同じ志をもつステークホルダーと共に、これらの目標を実現させていきます。

 

花王グループ中期経営計画「K25」

■Vision(ビジョン)

持続可能で豊かな社会への道を歩む Sustainability as the only path

 

コーポレートスローガン

きれいを こころに 未来に

 

■方針(目的)及び主な進捗状況

目的(1)持続可能な社会に欠かせない企業になる

〔目標〕

サステナブル自走社会をリードする:ESG投資=未来財務

〔主要成果〕

・カーボンリサイクル(炭酸ガスを原料に転換する)

・ポジティブリサイクル(資源の再利用により新事業を創造する)

・ストップパンデミック(感染症対策・予防領域を強化する

〔主な進捗状況〕

環境問題や人権問題等、多くの社会課題は、それぞれが深く関わり合っており、ひとつのターゲットだけを狙っていては解決しない複雑さを持っています。当社は、このターゲット間の関連性を解き明かし、適切なビジネスモデルをデザインすることで、同時に複数の課題の解決を後押しできると考えています。これが、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を両立させるために、当社が目指すビジネスモデルの基本的な考え方です。
 

■プレシジョン・ライフケア
 プレシジョン・ライフケアとは、当社が提唱する、健康課題に対し、その原因を精確に同定もしくは推定し、さまざまな角度から適切なソリューションを提供する取り組みです。株式会社アイスタイルと皮脂RNAモニタリングを用いて自分の肌に合う化粧品を選べる仕組みの開発、株式会社NTTドコモと仮想人体生成モデルを用いた一人ひとりに最適なヘルスケアソリューションの開発、そして株式会社ミルボンと美容室でのビューティヘルスケアサービスの確立に向けた3つの共同取り組みを開始しました。今後もさらに多くのパートナー企業との共創と社会実装・事業化を進めていく予定です。
■蚊の忌避剤
 タイにおいて、安全かつ心地よい使用感により、日々の生活の中で蚊から肌を守る「ビオレガード モスブロックセラム」を発売すると共に、幅広い官学民パートナーとの協業を通じてデング熱被害の低減を目指す「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトを開始しました。タイのお客様から喜びの声をいただいたことに加え、日本でも話題となりました。今後、多くの方にお使いいただけるよう、使い方や使用場面の幅を広げるための商品仕様バリエーションの拡充を図ります。また、タイ以外のエリアにも活動を拡大するため、パートナーと協力しながら、国ごとに異なる関連規制への迅速な対応に取り組んでいきます。

 

■ケミカル関連の新規事業
 廃PET活用高耐久アスファルト改質剤は、2021年にウエルシア薬局株式会社の運営する新店舗駐車場に採用されたことが反響を呼び、他の小売店舗への施工に加え、高速道路パーキングエリアや物流会社集配拠点への採用が増加し、社会実装が着実に進みました。一般道路への活用については、静岡県磐田市の協力のもと施工及び耐久性評価を進めています。使用量拡大に対応するために、リサイクルシステムが確立している飲料の廃PETではなく、現在焼却処分されている工業用途の廃PETフィルムのリサイクルシステム確立を目指し、廃PET排出企業や地方自治体との協業を進めると共に、高速道路や一般道路へ広く展開するための舗装会社との協業を推進していきます。海外展開の検討も進めており、グローバルでの貢献を目指します。 

 

目的(2)投資して強くなる事業への変革

〔目標〕

もうひとつの花王始動と基盤花王を強くする:“未来のいのちを守る”を軸とするグローバル躍進

〔主要成果〕

・新事業:プレシジョン・ライフケア関連事業の始動

・既存事業:高収益コア事業への抜本改革

〔主な進捗状況〕

世界が急速に変化する中、花王グループは、経営の安定性と飛躍的な発展を両立するためには、既存事業の拡充に専念するだけでなく、ビジネスモデルを大きく転換する新たな事業の創出が不可欠だと考えています。「K25」では、既存事業の再生(Reborn Kao)と、これまでの花王スタイルとは異なる新事業の創成(Another Kao)の両輪で、投資して強くなる事業への変革を進めています。


■Reborn Kao:経営戦略に基づく3領域資本配分
 成長戦略における役割に基づき、事業を「安定収益領域」「成長ドライバー領域」「事業変革領域」の3つに区分し、経営戦略としてメリハリを利かせた資本配分を行うと共に、各事業戦略においても区分を強く意識した議論や意思決定を行っています。そのために、事業別ROIC等の指標を活用しながら、企業全体のEVA向上との関係を明確化すると共に、成長ドライバー領域の化粧品事業、ケミカル事業、スキンケア事業、業務用衛生品事業の4事業に引き続き投資を集中し、既存事業の高収益事業への早期転換を進めています。
■Another Kao:新事業の創成
 Another Kaoとして、今までの花王グループではできていなかった新事業や新ビジネスモデルへの挑戦を進めています。例えば、ヘルスケア領域では、2022年にタイで発売を開始した蚊の忌避剤、2023年から事業化予定の皮脂RNAモニタリング技術を活用した郵送検査サービスやB2B衛生ソリューションサービス等に取り組んでいます。第一三共ヘルスケア株式会社とのOTC医薬品共同開発にも着手しました。デジタル領域では、株式会社Preferred Networksとの共創による仮想人体生成モデル等を活用した事業化を進めています。そして、廃PET活用高耐久アスファルト改質剤のような、サーキュラーエコノミー領域での事業拡大や新事業も見据えた検討を進めています。

※仮想人体生成モデル:健康診断等で得られる身体に関する項目から、ライフスタイル(食事、運動、睡眠等)や性格傾向、嗜好性、ストレス状態、月経等の日常生活において関心の高い項目まで、幅広く多種多様な1,600以上の項目を網羅的に備え、これらがどのようなパターンで現れるのかを示すことができる統計モデル

 

目的(3)社員活力の最大化

〔目標〕

活動生産性2倍:挑戦の見える化とオープンイノベーション

〔主要成果〕

OKR(Objectives and Key Results)の導入(挑戦と貢献度に応じたフェアな報酬)

専門人財の積極的な活用と共創

デジタルを活用した生産性向上(2023年完了)

〔主な進捗状況〕

企業が強くなるためには、ワクワクした社員の活力は欠かせません。花王グループは、多様な人財の一人ひとりが大きな志を持ち、互いを尊重し高め合いながら、ひたむきに挑戦をしていく組織を目指しています。
 

 

■社員活力最大化に向けた人財施策
 2021年より、社員の挑戦を促す新しい人財活性化制度Objectives and Key Results (OKR)や社員からの新規アイデア公募制度0★1(ゼロワン)Kaoプログラムを導入し、チャレンジする組織風土の醸成・強化に取り組んでいます。各職場ではOKRが共通言語となり、部門を超えた連携や活発な意見交換、新たな提案が行われています。社員エンゲージメントサーベイでは、国内の80%の社員が挑戦を意識した目標設定をしていると回答しています。0★1Kaoにおいては2022年12月末までに90件の提案が行われ、うち23件が実現化に向けた検討を開始しています。海外におけるOKRの導入とこれに連動した評価制度の改定については、各国各社の状況にあわせて拡大を進めています。今後は、社員一人ひとりの挑戦を支援し最大値を引き出すマネジャーの育成、多様なチャレンジを認める評価制度への信頼性向上、そして、そのために不可欠な対話の促進に取り組んでいきます。

 

③ 目標とする経営指標

当社グループは、投下資本のコストを考慮した真の利益を表すEVAを経営の主指標としています。その本質は、株主等の資金提供者の視点を持って、資本を効率的に活用し利益を生み出すことにあります。EVAを継続的に増加させていくことが企業価値の増大につながり、株主だけでなく全てのステークホルダーの長期的な利益とも合致するものと考えています。そして事業規模の拡大を図りながら、EVAを増加させることを事業活動の目標としており、個別事業の評価、設備や買収等の投資評価、年度ごとの業績管理や報酬制度等に活用しています。

 

(3)会社の対処すべき課題

気候変動、水や森林資源の枯渇等の環境問題及び人権問題、高齢化社会の進行等の社会問題はますます深刻化しています。加えて、新型コロナウイルス感染症の長期化により、世界の人々の意識や生活様式は変容し、花王グループの事業を取り巻く市場構造にも大きな変化が生じました。また、当期は、原材料価格の高騰や物流費の上昇、国際社会の多軸化・分断化に伴う地政学的リスクの増大等があり、経営環境も不透明な状況が続きました。
 このような変化の中で、花王グループは、社会課題の解決に軸足を据えて、環境に負の影響を与える既存の大量生産・大量消費型のビジネスから脱却し、無駄なモノはつくらず、お客様に長く愛される魅力ある商品を生み続ける循環型モデルへ転換しなければなりません。そして、中期経営計画「K25」はこの目指すモデルを実現するための事業基盤を構築する大変重要な計画です。
 花王グループはこの「K25」を達成するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたお客様との絆づくりを進め、届けるべき価値から逆算したゴール志向の新しい商品開発プロセスへの革新を進めています。また、投資効率を重視し、優先順位を明確にしながら、ESGを中心に据えた経営方針及び経営戦略に合致する戦略的投資、M&Aをスピード感をもって実行していきます。そのために、これまで強みとしてきたマトリックス型の運営を進化させて、適宜必要な当事者が果敢に判断を行っていくスクラム型の意思決定体制への改革を進めています。
 さらに、花王グループの活動を客観的な視点から検証し、多様な視点で議論を行うガバナンス体制、またコンプライアンスやリスク・危機管理視点も踏まえた内部統制システムのさらなる強化も引き続きしっかりと取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ESG戦略(Kirei Lifestyle Plan)

花王は、「2030年までに達成したい姿」である「グローバルで存在価値ある企業『Kao』」を達成するため、経営の中核にESGの視点を導入しています。ESG視点のよきモノづくりを通じて、事業成長と社会のサステナビリティへの貢献を実現していきます。

 

① ガバナンス

花王は、グローバルの大きな変化に対する迅速な対応を強化するとともに、事業機会の拡大と社会課題の解決を目指し、柔軟で強靭なESGガバナンスを構築しています。社外委員が参加する組織が経営層に監督・助言する機能や、経営判断がイノベーションや取り組みに変換され、的確かつ迅速に実行に移される機能が備わっていることが特徴です。取締役会がリスクや機会を含むESGに関する監督の責任を持ち、そのもとで社長執行役員及び配下の各組織体が業務執行を担っています。

ESG全体の業務執行については、ESGコミッティを最高機関とした体制が担っています。ESGコミッティは、ESG戦略に関する活動の方向性を議論、決定し、取締役会に活動状況を報告します。社外の視点を反映させるため外部有識者で構成されるESG外部アドバイザリーボード、ESG戦略を遂行するためのESG推進会議、4つの重点課題について確実かつ迅速に遂行するESGステアリングコミッティがあり、各部門の活動を推進しています。

中でもESG外部アドバイザリーボードは、ガバナンスにおいて重要な役割を果たしています。世界の動向、花王の取り組み状況に関する助言は、各分野、世界の各地域で活躍されている委員ならではの活きた知見・観点から生み出されるものであり、経営の意思決定に効果的に反映されています。環境分野の2名、社会分野の2名、ガバナンス分野の1名で構成されています。

ESGに関するリスク管理は内部統制委員会(年2回開催、委員長は代表取締役 社長執行役員)で、機会管理はESGコミッティ(年6回開催、議長は代表取締役 社長執行役員)で実施しています。

 


 

② 戦略

花王は、中期経営計画「K25」において「未来のいのちを守る」「Sustainability as the only path」をビジョンに掲げ、ESG経営への強い意志を表明しています。事業活動をとりまく国際情勢は一層大きく変動することが予測されますが、そこで想定されるリスクの低減や、事業機会の創出を図り、レジリエンスを強化するため、ESG戦略の重要性が一層高まっています。

花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」は、生活者を主役としたESGの具体的な活動の方向性と将来への意欲的な意気込みを表したものです。「花王のESGビジョン」と、それを実現するための戦略、3つのコミットメントと19のアクションから構成されています。この戦略に基づき、生活者のこころ豊かな暮らしや社会のサステナビリティの実現を目指して展開した花王のESG活動が、リスクの低減や事業機会の創出につながり、ひいては事業成長を実現し、生まれた利益がステークホルダー、生活者や社会に還元されていくサイクルを形成していくと考えています。

現代の深刻な社会問題に対応し、サステナブルな社会を実現するためには技術革新が必須だと言われていますが、花王はイノベーション提案に基づく、“よきモノづくり”に注力しており、本質研究に立脚した革新的技術を組み込んだESG視点でのよきモノづくりは、花王の持続的な成長を支え、人、社会、地球に大きなインパクトを与えることができると考えています。

 


 

③ リスク管理

花王は、強靭なESGガバナンスのもと、リスク低減と事業機会創出を確実にするため、リスク管理及び機会管理を強化しています。

リスク管理においては、リスクの重要性をリスク・危機管理委員会で定期的にモニタリングしています。その中でも経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクは「コーポレートリスク」として、経営会議でリスクテーマとリスクオーナーを選定し、リスク・危機管理委員会で進捗管理をしています。各部門やグループ会社で管理可能なリスクは、各組織が中心となって対応しています。機会管理においては、花王グループ全体で重点テーマを管理し、優先順位の設定とESG投資を促進する仕組みを構築し、戦略的な事業展開につなげています。

 

④ 指標と目標

花王は、野心的な指標と目標を設定することで、ESG戦略の方向性を明確にし、的確な進捗管理を可能とすることで、ESG戦略を着実に実行しています。花王のESG戦略、「Kirei Lifestyle Plan」の19のアクションごとに指標と目標を設定しています。上記ESGガバナンスにおいて各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しています。

 

 


 

 

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)

気候変動は、現在並びに将来世代が豊かな生活文化Kirei Lifestyleを実現することに対する大きなリスクとなっています。「花王ウェイ」において「豊かな共生世界の実現」を使命として掲げる花王グループでは、地球温暖化の緩和と適応の両面から積極的に活動を推進しています。花王グループはTCFDに賛同し、気候変動に関する情報開示を積極的に実施し、投資家との対話を行っています。パリ協定が示す「平均気温上昇を1.5℃に抑えた世界」を実現することが将来の生活者のKirei Lifestyle実現に必要だと認識し、「Kirei Lifestyle Plan」の重点取り組みテーマの一つとして「脱炭素」を掲げ活動を進めています。

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

① ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、ESG戦略のガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1)ESG戦略(Kirei Lifestyle Plan) ①ガバナンス」を参照ください。

 

② 戦略

気候変動により平均気温が4℃上昇することは、社会に非常に大きな影響を及ぼすことから、世界全体が気温上昇を1.5℃に抑えることを目指していることに意味ある貢献をすることが、重要であると認識しています。

花王は1.5℃、2℃、4℃シナリオでシナリオ分析を実施しています。なお、1.5℃と2℃シナリオにおいては、リスク・機会の傾向は同じですが、1.5℃の方が2℃よりそのスピードが早くなり、活動レベルが高くなると認識しています。

 

(主な事業リスクと機会)

 

 

1.5℃/2℃

4℃

花王グループの戦略

移行

炭素税の導入・引き上げ

炭素税が世界中で導入され、負担コストが上昇

炭素税の導入はほとんど進まない

1.5℃シナリオに沿った、Scope1+2 CO2排出削減量目標を設定

プラスチック規制の導入

再生プラスチック需要増により再生プラスチック単価が上昇し、調達コスト増

再生プラスチック需要は大きく増加しない

プラスチック循環型社会に向けた活動を継続・強化

原材料価格の上昇

化石由来原材料の使用が制限され調達コスト増

化石由来原材料需要が増加し、調達コスト増

化石由来原材料の使用量の最少化を継続・強化、売価への転嫁

生物多様性の保全

新規農地開発の制限、認証品調達規制等によりパーム油やパルプの調達コスト増

過剰な農薬・化学肥料による水質・土壌汚染の浄化等によりパーム油やパルプの調達コスト増

生物由来原料の使用量の最少化を継続・強化、売価への転嫁

消費行動の変化

エシカル製品の需要が全世代で拡大し、売上増

エシカル製品の需要が一部世代で拡大し、売上増

エシカル製品を開発・上市、生活者への啓発

物理

自然災害

被害が大きくなる

被害が甚大化する

拠点リスク調査と対策

気温上昇

夏物製品の需要期間が長くなり、売上増

夏物製品の需要期間がより長くなり、売上増

夏物製品開発の強化

 

 

③ リスク管理

気候変動に関する主なリスクは、ESG戦略のリスクに含めて管理しています。詳細については「(1)ESG戦略(Kirei Lifestyle Plan) ③リスク管理」を参照ください。

 

 

④ 指標と目標

2021年、当社グループは「2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブを目指す」という方針のもと、2030年目標を設定・更新しました。

・スコープ1+2 CO2排出量(絶対量)削減率

-55%(対2017年)※1

・使用電力における再生可能電力の比率

100%※2

・ライフサイクルCO2排出量(絶対量)削減率

-22%(対2017年)

・削減貢献量※3、※4

10,000千トン-CO2

 

※1 1.5℃水準に沿った目標として、SBTイニシアティブ(企業が気候変動分野において野心的な活動を促進するために設立されたイニシアティブ)の認定を取得

※2 RE100(企業が自らの事業で使用する電力を再生可能エネルギー100%化することを目指す国際的イニシアティブ)に加盟

※3 気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)及び京都議定書第7回締約国会合(CMP7)で合意された7種の温室効果ガス

※4 当社グループの製品によって社会全体で削減された排出量

 

当社グループのCO2排出量推移は以下のとおりです。2022年は生産拠点のあるタイ、マレーシア、フィリピンでグリーン電力証書の活用等により2017年比削減率26%を達成しました。引き続き、アジアにおける再生エネルギーの利用によるスコープ2 CO2排出量の削減を進めるとともに、スコープ1 CO2排出量の削減にも取り組んでまいります。

 


 


なお、上記の表で記載しているCO2排出量情報については、欧州の非生産拠点の一部において2017年から再生可能エネルギーによる電力を購入していることが判明したため、「花王サステナビリティレポート 2022」に開示している「スコーブ2 CO2排出量の推移」の情報を一部更新して記載しております。

 

詳細については2023年5月に発行予定の「花王サステナビリティレポート 2023」を参照ください。

www.kao.com/jp/corporate/sustainability/

 

(3)人的資本

「人」は会社にとっての最大の資産です。多様な人財が集い、社員一人ひとりが持つ無限の可能性を引き出し、大きな活力を生み出すとともに、その活力を組織として最大限に活かす人的資本経営を進めています。仕事の達成や社会への貢献を通じて、個人と企業がともに成長する環境と風土づくりを推進しています。

 

① ガバナンス

人財戦略に関しては、取締役会における経営視点での方針の議論を経て、経営トップを委員とする「人財企画委員会」にて具体的な課題や施策(重要な組織の新設・改編、主要ポジションの任免、人員・人件費に関する計画や重要な人事施策の新設・改廃等)に関する検討と決裁、進捗状況の共有を行っています。

また活動をグループ全体で推進するために、グローバル共通の仕組みを導入し、活用しています。たとえば、グローバル人財情報システムによる人財情報の活用、グローバル共通のOKR・等級制度・評価制度・教育体系・報酬ポリシーによる人財マネジメント・育成の強化等です。

これらの活動は、人財戦略部門統括を責任者とし、国内外グループ各社の人財開発部門と連携をとりながら進めています。

また、日本においては主要部門に人事機能を設置するとともに、現場の社員一人ひとりの育成とキャリア開発を担当するキャリア・コーディネーターを配置しています。

主要部門及びグループ各社の人財開発責任者による会議を定期的に開催し、花王全体の人財開発の方針、グループ各社の活動状況等について共有・議論しています。

 

人財開発の推進体制


② 戦略

「平等から公平へ」、「相対から絶対へ」、「画一・形式から多様・自律へ」という3つの基本方針を掲げ、人財開発活動を進めています。

 

人財戦略は中期経営計画「K25」の基本構想に基づき、「社員活力の最大化」と「多様な人財の最大活用による組織力の最大化」を二つの柱と定めました。これらを実現する為に、特に以下の3点を重点施策として取り組んでいます。

・挑戦を推奨する組織風土の醸成

・専門性の高い多様な人財の能力発揮

・効率的で柔軟な働き方の実現

 

それぞれの施策は都度効果を確認していますが、定期的に社員エンゲージメントサーベイを実施することでも社員意識の確認を行っています。2022年は、国内花王グループにおいて社員エンゲージメントサーベイを実施しました。社員活力最大化に向けて内容を大きく見直すとともに、日本の労働安全衛生法に基づき実施しているストレスチェック制度も含んだ形で実施しました。調査結果については外部専門家による検証を共有する部門報告会を実施するとともに、職場ごとに強みや課題を共有し、より良い職場の実現に向けた改善活動につなげる取り組みを行いました。また、国内の社員代表と経営陣による意見交換の場である花王フォーラムや、社員懇談会を実施し、エンゲージメントの強化に努めました。これらの議論や対話の内容は社内のサイトや事業場の厚生委員会を通じて社員に広く周知・共有を行っています。

 

K25実現に向けた人財開発活動の位置づけ

K25実現に向けた具体的な活動としては、3つの基盤的アクションと7つの戦略的アクションに落とし込んで進めています。それぞれのアクションが相互に連携しながら、前述の3つの重点施策につながっています。

 


 

a.戦略的アクション:チャレンジを認める評価・処遇・表彰

多様なチャレンジを認めることで、社員一人ひとりの成長を支援し、最大値を引き出すことを目指しています。表彰制度をリニューアルし、職場での「日々の感謝(レコグニション)」、部門にとって手本となるチャレンジ・連携を皆で称え合う「部門賞」、部門・会社の域を超え全社的に表彰する「社長賞」と、頑張る社員を応援する制度にしました。この改定により、2022年は過去5年の平均に比べて2.6倍の案件、2.4倍の社員が表彰されました。今後はさらに、大志に向けた小さな一歩を称える取り組みを強化していきます。

2021年にスタートした0★1Kaoは社員からの新規アイデア公募制度です。社員自らが自由に夢の実現に向け提案でき、チャレンジを促進する場として発展しています。

中でも、保育園向けおむつサブスクリプション子育てサポートサービス「すまいる登園」、一部のチェーンストアと協働がスタートした「循環型オリコンによる環境負荷低減及び店頭作業生産性向上」は、花王が取り組むESG経営にも寄与しています。

 

b.戦略的アクション:キャリア自律と自ら学ぶ能力開発

経営環境が大きく変化する中、社員自ら目指すキャリアを考え、そのために必要な能力を獲得することが求められています。社員一人ひとりの能力開発のために、リーダーシップ、マネジメントを高める研修プログラム、自己啓発プログラム等の提供を行い、経営に求められる「次世代リーダー」や「グローバル人財」、「DX人財」の育成を推進しました。今後はさらに「自ら学び」「学び続け」「お互い学び合う」自律型教育体系にシフトすることで、多様な個の挑戦に応え、組織の対話の質・量を高め、個と組織の連携を生み出すことを目指します。

 

 

c.戦略的アクション:挑戦と成長を前提とした適正配置、多様な活躍の場の創出

社員の持つ能力や可能性は無限であるとの考えのもと、社員一人ひとりが活躍できるキャリア開発の実現を目指しています。“能力・キャリア開発支援(SeEDS: Self Education & Development Scheme)”とキャリア・コーディネーター制度のもと、社員のキャリア志向を丁寧に把握するとともに、社員の適性を判断し、所属上長と連携しながら、社内外への異動や配置を行いました。2022年は438件の部門を越えたローテーションを実施し、長期的な視点での社員の能力・キャリア開発につなげるとともに、Another Kaoと呼ばれる新規事業や強化分野にも人財を戦略的に集中させ、中期事業計画実現のための足掛かりとしています。また、社員が花王グループで勤務することによって培った経験・能力・スキルを発揮する場は、花王グループ内だけでなく、社外の様々な連携機関に広がっており、その社会的要請も高まっています。2022年12月末時点で70名の社員が花王グループでの経験を活かし、社外で活躍しています。2022年には、社外で貢献したい社員を公募する制度を試験的に導入しました。150名以上の社員から応募があり、2023年以降の本格実施に向け準備を進めています。

※ 能力・キャリア開発支援(SeEDS: Self Education & Development Scheme)

年に1回、本人が業務を通じて得たスキルや希望するキャリアの方向性を申告し、上長との面談を通じて、個別キャリア開発を計画的に推進する制度。

※ キャリア・コーディネーター

国内花王グループにおいて、社員一人ひとりの能力・キャリア開発を推進する役割。主に各部門・各社の人事担当から任命。

キャリア・コーディネーターは、キャリア面談や“能力・キャリア開発支援”での社員の申告内容、上長による育成計画をもとに、社内外への異動や配置を行う。

 

d.戦略的アクション:戦略的タレントマネジメント

花王グループの不連続な成長を実現していくために必要な変革・新たな価値創造をけん引していくビジネスリーダーを計画的に育成し、サステナブルな組織運営を実現するための仕組みを推進しています。シニアマネジメント・スペシャリストにあたる重要ポジションの将来の後任候補となるタレントをキャリアステージの早い段階から見出し、計画的で積極的な教育・配置任用・課題付与を行い、将来の花王グループをリードする人財を育成しています。

 

e.戦略的アクション:フレキシブルワークの実現

花王グループでは工場の交替勤務者や店頭美容職等を除きフレックスタイムを導入しており、また研究開発職には専門業務型裁量労働制を導入しております。また、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、在宅勤務制度に代表されるリモートワークを拡大し、働く時間だけではなく就業場所や環境の多様化を図りました。2022年は社員間のコミュニケーションや連携・共創をより進めるために、一定の出社時間を確保するような働き方を試行してきました。その結果、出社率は概ね50%と上昇しましたが、業務特性も考慮したより効果的なコミュニケーションや業務遂行が各職場で行われることとなりました。例えば主要会議や商談、採用・研修、発表会・討論会等はそれぞれの目的に合致した柔軟な開催形態を選択・実施するようになりました。

 

f.戦略的アクション:先端技術活用による業務の能率化

リモートワークと出社を組み合せたハイブリッドな働き方が進む中、オフィス環境もより社員の創造性を発揮した柔軟な働き方を促進するためのレイアウトに変更しました。WEB会議エリア、WEB配信スタジオの設置等IT設備や環境も働き方の変化に合わせ進化させてきました。また、以前よりRPA(Robotic Process Automation)やチャットボットの活用による定型業務、問合せ業務の削減や効率化を進めて来ましたが、それらに加えて業務アプリケーション開発によるプロセスの改善や効率化も積極的に進めています。

 

g.基盤的アクション:OKRの活用

K25の3つの方針の一つに、「社員活力の最大化」を掲げていますが、社員と組織を活性化するための代表的な取り組みとして、2021年よりOKR(Objectives and Key Results)を導入しています。花王グループのOKRでは、社員一人ひとりが「世の中をより良くするために、花王グループをより良い企業にするために、仕事を通して達成したいこと」を「事業貢献」「ESG」「ワンチーム&マイドリーム」の3つの軸で目標を自ら掲げ、取り組みを進めています。高く挑戦的な目標を設定すること、結果だけでなくプロセスを評価することで、社員エンゲージメントの向上を図るとともに、組織全体の活性化を目指しています。

現在、花王(株)においては全社員に導入、国内グループ各社においては90%の社員に導入しています。海外グループ各社においても段階的に導入を進めております。

社員一人ひとりが立てた目標を全社員で共有することもOKRの大きな特徴の一つです。所属する部署や担当する職種の枠を超えて、同じ夢や目標を持つ社員同士がつながることで、幅広い支援・協働が可能となり、一人では達成困難な目標の実現可能性を高めています。2022年はOKRを花王グループの全社員で共有できるシステムを構築しました。情報へのアクセスが容易になったことで、社員同士のつながりがより発展しています。

 

OKRのさらなる浸透に向けた活動も継続的に行っています。チャレンジを認め合う場づくり(チャレンジ共有会等)を進め、国や地域、立場を超えた連携を促しています。また、これらの活動を推進するため、オンラインを中心とした「対話キャンペーン」、中堅マネジャー向けの研修を実施し、職場での活発なコミュニケーションを支援しました。社員一人ひとりの大きな挑戦への意欲を喚起するとともに、全社員が一人ひとりの活動をお互いに知ることができ、チームとしての学び合い、助け合いも促進されています。

 

h.基盤的アクション:DE&I推進

Diversity & Equity推進活動として、多様な人財一人ひとりが働きやすい環境の中で定着し、公正に機会を得るために必要な支援を行っています。また、Inclusion推進活動では、社員全員が花王の目指すDE&Iを理解・実践するとともに、一人ひとりが安心して自分の考えを発信し、健全な議論ができる組織風土の醸成に取り組んでいます。

〇 体制

D&I推進部がグループ全体のDE&I推進活動を計画・実行しています。海外では現地のDE&I推進責任者と連携し、それぞれの課題に合わせ各地域で推進しています。

 

〇 Diversity & Equity推進活動

DE&I視点での人財開発、女性・LGBTQ+・外国籍・障がい、及び育児期・介護期といった属性の活躍推進に取り組んでいます。様々な意思決定の場に多様な視点が入るよう、多様な背景を持つ人財の雇用と活躍を推進しています。

 

<女性活躍推進>

最も多くの人財に関わり、花王の成長に不可欠なDiversity要素として、特に日本を中心に女性活躍推進活動を進めています。取締役会の女性比率を2025年までに30%にするという目標を掲げて改善を進めるとともに、意思決定層における女性比率の向上に向け、そのパイプラインとしての管理職層の女性を増やす取り組みとして、2030年までに女性社員管理職比率を女性社員比率と同じにするという目標に向け、3つの重点アクションに取り組んでいます。

 

[トップマネジメントの女性の状況]

 

2020年

2021年

2022年

男性

(人)

女性

(人)

女性比率

(%)

男性

(人)

女性

(人)

女性比率(%)

男性

(人)

女性

(人)

女性比率(%)

取締役 ※1

7 (3)

1 (1)

12.5

7 (3)

1 (1)

12.5

7 (2)

2 (2)

22.2

監査役 ※1

4 (3)

1 (0)

20.0

4 (3)

1 (0)

20.0

4 (3)

1 (0)

20.0

執行役員 ※2

26

1

3.7

26

2

7.1

27

3

10.0

 

※ 各年1月1日時点

※1 ()の数字は、全体人数のうち社外取締役、社外監査役の人数

※2 取締役兼務も含む

 

[女性の状況]

 

2022年

従業員
(%)

管理職
(%)

達成率
(%)

当社グループ

52.9

30.5

57.7

当社及び国内子会社

55.9

22.4

40.1

アジア

44.6

47.6

106.6

欧州

49.9

40.8

81.7

米州

51.2

53.3

104.2

 

※ 12月31日時点

※ 従業員は正規雇用の従業員及びフルタイムの無期化した非正規雇用の従業員を含む

※ 達成率は、女性社員比率に対する女性管理職比率の割合であり、女性管理職比率を女性社員比率と同じにするという目標に対する達成度を示す

 

 

 

 

 

 


その中で、「意欲高く働くための育児両立支援」に関しては、男女問わず1か月以上の育児休職からの復職予定者とそのパートナーを対象に、育児休職者復職前セミナーを十年来実施しています。2022年は、「働き続ける」から「意欲高く働く」へと目的をシフトし、育児中の社員も、自身の描くキャリアの実現に向けてより前向きに仕事に取り組むことを後押しする内容へと改編しました。また、育児期社員自身及び職場での主にマネジメントによる性別役割分業意識の払拭を目指し、男性社員の育児休職取得を促進しています。取得率は年々向上し、2022年度は国内花王グループで95.6%と高い水準となっています。2022年4月からは、育児休職から社員が希望する時期に復職できるよう、新たな復職支援施策として企業主導型保育園の利用を可能とする「子育てみらいコンシェルジュ」を導入しました。

これらの取り組みの結果、女性管理職比率は年々向上しており、2022年末時点で国内花王グループの女性社員比率は55.9%、女性管理職比率は22.4%となっています。

 

<男女間賃金格差>

女性活躍の一つの指標である男女の賃金の差異は当社グループで78.1%となっています。当社グループでは、同じ役割であれば男女で賃金の差は設けていないため、この差は、主に日本において給与が高くなる傾向にある勤続年数の長い社員における男性比率が高いこと、また、給与の高い職群の社員における男性比率が高いことによるものと考えています。そのため、男女の賃金の差異の解消の方針として、女性活躍推進の取り組みにより、女性の定着をさらに向上するとともに、管理職や上級管理職、役員の女性比率を女性社員比率に対して適正に上げることを実行していきます。

 

〇 Inclusion推進活動

社員一人ひとりがお互いの多様な背景を理解し適切な行動ができるようになるための啓発活動、及び心理的安全性とアンコンシャスバイアスへの理解を深める活動に取り組んでいます。

 

<DE&Iへの理解や関心の向上>

国内花王グループではInclusion推進計画を策定し、女性・LGBTQ+・外国籍・障がい・育児両立・介護両立等の各テーマにおいて毎月2〜3件のコンテンツを公開し、グループ社員のDE&Iの理解促進と職場での実践の定着につなげています。2022年は、社員の多様性と公平性に注目して、職場でのエピソードを紹介することで、特に当事者以外の社員がDE&Iを身近に感じ、自分事としての意識の高まりや行動を変えるきっかけとなることを目指し、多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりの素顔にフォーカスして紹介する企画を開始しました。

 

<多様性を組織の力にする風土醸成とスキル向上>

多様性を強みとし、対話を通じてチームで成果を上げる組織風土づくりに向け、心理的安全性とアンコンシャスバイアスを啓発の重点テーマとしています。2022年は、参加者が自職場の心理的安全性を高める気づきを得ることを目的に「心理的安全性ワークショップ(基礎編)」を開催しました。

これらの取り組みの結果、社員エンゲージメントサーベイにおける「Inclusiveな組織風土」に関する設問の肯定回答率は69%(国内花王グループ)となっています。68%を目標として引き続き活動を展開します。

 

 

i.基盤的アクション:健康開発推進

花王の事業活動の源泉は、いきいきとしたGENKIな社員であり、そのベースは社員の健康です。花王は、健康経営®を推進し、社員活力を最大化するため、社内外の健康基礎情報の解析とヘルスケア知見から生まれた商品やヘルスケアソリューションを自社の健康開発に取り入れ、社員と家族が参画する実践型の活動を進めています。

また、自社の取り組みのうち優れた事例や知見については、地域・職域・生活者の皆さまに積極的に展開し、すこやかで心豊かな生活の実現を支援しています。

また、「花王グループ健康宣言」を行い、企業として健康経営®に取り組むことを社内外に公表しました。「花王グループ健康の日」や健康中期計画「KAO健康2025」を設定し、取り組みを推進しています。

※ 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 

 

〇 花王グループ健康宣言

私たちは、日々いきいきと
健康づくりに取り組むとともに
社内外のエビデンスに基づいた確かなヘルスケアを
社員・家族だけでなく
地域・職域・生活者のみなさまへ展開し
すこやかでこころ豊かな暮らしをともに実現していきます。

 


 

〇 花王グループ健康の日

世界保健デー(WHO)が設立された記念日である世界保健デー(4月7日)を花王グループ健康の日と定めました。社員とその家族に向けた健康増進活動を積極的に推進するとともに、商品・サービスを通じて世界の人々の暮らしと健康を支えていくことをメッセージとして発信しています。

 

〇 健康中期計画 KAO健康2025

KAO健康2025では、一人ひとりのより良い状態の実現を通じて、ヘルスケア意識の高い社員と家族が、活気ある職場、社会づくりを推進していくことを目指します。

主な取り組みとしての6つの取り組み(生活習慣病・がん・禁煙・メンタルヘルス・女性・シニア)に加え、治療と就業の両立支援や有害業務者管理とリスクアセスメントにも取り組んでいきます。また社員だけでなく家族や友人もともに参画できる健康づくりを提案していきます。

 

 

〇 組織体制

社内の健康経営®を推進するため、花王健康保険組合と健康開発推進部のコラボヘルスにより、健康施策の立案を行っています。また、事業場・支社には「健康実務責任者」及び「健康実務担当者」を配置し、産業医・看護職とともに担当エリアの健康施策に取り組んでいます。

海外各社へは日本の推進状況を情報共有し、具体的な健康施策は各国・地域の方針に従うこととしています。

また、花王社内で取り組んだ優良事例を地域へ展開するためGENKIプロジェクトを設置し、社外向けの健康ソリューションの提供を行っています。

 


 

〇 健康づくりマネジメントシステムの推進

健康づくりマネジメントシステムとは、花王グループ健康宣言実現に向けたPDCAサイクルのことです。前年の健康データを各事業場で分析し、産業保健計画を立案しています。また今後のアクションプランや事業の改善を行うため、健康白書の見方を学ぶ健康白書勉強会や、保健指導検討会、保健スタッフ会議等を行い、健康施策のブラッシュアップを行っています。

 

〇 社内技術の活用 GENKI-Action

花王はヘルスケアに関する事業において、「内臓脂肪と“くらし”に関する研究」「歩行と健康に関する研究」等に長年取り組んできました。その過程で得られたさまざまな知見は、製品開発だけでなく、健康増進プログラムとして社員と家族の健康づくりに活用されています。この独自の健康づくりを「Kao GENKI-Action」と呼んでいます。健康につながる“くらし”を無理なく、楽しく継続できるよう、健康的な環境づくりの支援や自社製品を使った応援を行っています。

また、「Kao GENKI-Action」のプラットフォームとして花王社員向けの健康コミュニティサイトGENKIウェブを活用し、日々の生活記録や、健康イベント等を実施しています。

 

〇 教育と浸透

2022年から、4月7日を「花王グループ健康の日」として、自分自身の健康について考えるきっかけとなる取り組みを展開しています。

これは、4月7日が世界保健機構(WHO)の「世界保健デー」であることを受けて実施するもので、2022年はWHOのテーマ「Our Planet, our Health」に合わせ、地球環境と健康について考え、具体的な行動を「健康宣言」として登録してもらう取り組みを行いました。他にも社内で様々なキャンペーン、セミナー、各種健康増進活動を展開しています。

 

 

③ リスク管理

会社の事業活動において、多様な人財が集い、一人ひとりが持てる能力と個性を最大限発揮できることが重要です。人財の流動性が高まる中、採用競争力が低下して計画通りの人財獲得が進まなくなること、社員の離職により組織の総合力が低下することが最大のリスクと考えています。社員に成長の機会を提供し、活躍しやすい環境を整えることで、リスク低減に努めています。

 

④ 指標と目標


※ 特に記載がない限り、当社グループで集計

※ 従業員は正規雇用の従業員及びフルタイムの無期化した非正規雇用の従業員を含む

※1 日本の連結対象会社のうち、花王ロジスティクス㈱、伊野紙㈱含まず

※2 日本の連結対象会社のみ

※3 花王㈱のみ

※4 日本の連結対象会社のうち、伊野紙㈱含まず

 

 

3 【事業等のリスク】

(1)リスクと危機の管理体制

花王グループ中期経営計画「K25」では、Vision(ビジョン)を、「持続可能で豊かな社会への道を歩む Sustainability as the only path」と定めて、3つの目的(1)持続可能な社会に欠かせない企業になる、(2)投資して強くなる事業への変革、(3)社員活力の最大化を掲げて取り組んでいます。詳細については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を参照ください。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学リスクの顕在化等、事業環境は不透明な状況が続いています。また、事業がグローバルに拡大し、様々な分野で構造的変化が進む中、事業を取り巻くリスクの変化に迅速かつ適切に対応する必要があります。このような事業環境に対して、当社グループは、次のようなリスクと危機の管理を進めています。

当社グループは、経営目標の達成や事業活動に悪影響を与える可能性を「リスク」、このリスクが顕在化した状態を「危機」と定義し、内部統制委員会の下の関連委員会の一つであるリスク・危機管理委員会が、「リスク及び危機管理に関する基本方針」に基づいて、リスクと危機の管理体制と活動方針を定めています。そして、部門、子会社、関連会社は、この活動方針に基づいて、リスクを把握、評価し、対応策を策定、実行することでリスクを管理しています。また、危機発生時には、緊急事態のレベルに応じた対策組織を立ち上げ、迅速かつ適切に対応することで、被害、損害の最小化を図ります。リスクと危機の管理活動は、経営会議が定期的(年1回)及び適時確認し、取締役会が承認しています。内部統制委員会はリスクと危機の管理状況をモニタリングし、管理の有効性を確認しています。詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

持続的な利益ある発展と社会のサステナビリティへの貢献に悪影響を与えるリスクとして、特に重要な次の15の主要リスクを、リスク・危機管理委員会、経営会議の審議の下で選定しています。そして、これら主要リスクの中で、経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクを「コーポレートリスク」としてテーマを決めて取り組んでいます。コーポレートリスクのテーマは、年1回、社内リスク調査の結果分析、外部環境の分析、経営幹部ヒアリングをもとに、リスク・危機管理委員会で検討を行い、経営会議でリスクテーマとリスクオーナー(各リスクテーマの責任者:執行役員)を決定しています。リスクオーナーは対策チームを立ち上げて検討を進め、年4回開催するリスク・危機管理委員会で進捗管理を行っています。(主なコーポレートリスクのテーマと対応を「主な取り組み」に記載しています。)

リスクと危機の管理活動のプロセス


これら主要リスクは、5年以内に顕在化する可能性があるリスクです。なお、主要リスクの記載順は重要性を反映しており、当連結会計年度末における認識です。記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらが投資家の判断に影響を与える可能性があります。

 

(2)主要リスクの内容と主な取り組み

主要リスクの内容

主な取り組み

原材料調達に関するリスク

(背景)

当社グループで使用している天然油脂や石油関連の原料の市場価格は、世界景気、地政学的リスク、需給バランス、異常気象、為替の変動等の影響を受けます。

また、原材料はパーム油や紙・パルプ等の自然資本に大きく依存しており、省資源、地球温暖化防止、生物多様性保全等の環境側面、安全・衛生、労働環境、人権等の社会側面に十分配慮し、持続可能な調達を実現することで、企業としての社会的責任を果たしていく必要があります。

 

(リスクと影響)

原材料の市場価格に急激な変動が生じた場合、目標とする利益が得られない可能性があります。

また、原材料には、調達上希少な原材料も一部含まれており、安定調達に関わるリスクがあります。需給の変動等による市況の急激な変化や、サプライヤーのトラブル発生により製品の市場への供給に支障をきたした場合、目標とする売上高、利益が得られないだけでなく、当社グループの信用の低下につながる可能性があります。

また、サプライチェーン上の何らかの理由で、持続可能で責任ある調達への取り組みが不十分と見なされた場合、当社グループのブランドイメージ、信用の低下につながる可能性があります。

 

(対応策)

当社グループは、原材料価格の上昇に対して、原価低減や売価への転嫁等の施策を行い、その影響の軽減を図っています。安定調達に関わるリスクに対しては、主力サプライヤーでの設備増強と、リスク分散のためのセカンドサプライヤーの育成を実施しています。また、サプライヤーとの契約見直しや協働を積極的に行いリスク低減を進めています。

一方、持続可能で責任ある調達の実践に向けて、“サプライチェーンにおけるESG推進ガイドライン”を公表し、サプライチェーン上での人権保護や環境保全の確認を進めています。特にリスクの高いサプライチェーンをハイリスクサプライチェーンと定義し、本質的な課題解決に向けて、サプライヤー並びにNGOとの連携の下、取り組んでいます。また、原材料の使用量削減や、非可食バイオマス由来の原材料等への転換にも取り組んでいます。

Sedexによるサプライヤーのモニタリング、サプライヤーのコンプライアンス違反ゼロに向けた監査体制の整備、CDPサプライチェーンプログラム等の取り組みを通じてサプライヤーとの連携を強化しており、さらに、パーム油の持続可能なサプライチェーンの構築を目指し、インドネシアの小規模農園に対し、「生産性向上と持続可能なパーム油に対する認証取得を支援するプログラム」を現地のパートナーと協働で実施しています。

これら取り組みを積極的かつ透明性をもってステークホルダーに公開しています。

社会課題への対応に関するリスク

(背景)

気候変動、プラスチックごみ問題、水資源の枯渇、原材料調達に関する環境・人権の問題、そして、高齢化社会の進行や衛生等の社会課題の増大は、生活者の環境や健康等に対する意識を高め、エシカル消費の潮流やサステナビリティに対する顧客ニーズの高まりをもたらしています。特に、気候変動は重要な課題であると認識しています※1

これら社会課題の解決に向けて、当社グループは、「環境問題」「高齢化」「パンデミック」「多様化の影響」を花王が重視する社会課題として定め、中期経営計画「K25」を実行するとともに、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(KLP)を推進しています。原材料の調達から生産、製品の使用、廃棄に至るあらゆる段階でのイノベーションを目指すとともに、社会・環境の両視点から花王が優先的に取り組むべき19の重点取り組みテーマについて野心的な目標を設定し、全社全部門がそれぞれの役割の中で取り組んでいます。それらの推進並びに進捗管理を通じて、社会のサステナビリティへの貢献を目指すと同時に、活動内容を積極的にステークホルダーに開示しエンゲージメントをすることに努めています。

 

(リスクと影響)

こうした社会課題の解決に向けた取り組みが目標に対して不十分である、あるいは不十分と見なされた場合、製品やサービスを消費者や顧客に受け入れていただけず、目標とする売上高、市場シェアが得られない可能性があります。また、KLPでコミットメントしたKPIの進捗状況を十分に示せないと、「ウォッシュ」※2と捉えられる等企業価値の低下につながる可能性があります。

上記リスクに加え、気候変動については、※1に記載している移行リスク(炭素税の導入・引き上げ、プラスチック規制の導入、原材料価格の上昇、生物多様性の保全)と物理的リスク(自然災害)があります。

 

(対応策)

KLPと事業のより一層の一体化を目指して、ESGコミッティのもとに、重点的に取り組むべきテーマを推進する4つのESGステアリングコミッティを2022年4月に発足させ、ガバナンス体制を強化しました。ESGステアリングコミッティは「脱炭素」「プラスチック包装容器」「人権・DE&I」「化学物質管理」からなり、各テーマごとに役員クラスの責任者を置き、それぞれのテーマに関する機会とリスクを社会・環境・事業インパクトの面から分析・把握し、計画を立案、推進することで、ESGよきモノづくりの実施を確実に行い、社会課題解決と事業成長の両立を目指します。

気候変動に関する対応は、上記ガバナンス体制の下で実施しており、各リスクへの対応策は、※1で示した移行リスクと物理的リスクの「花王グループの戦略」に記載しています。

 

主なコーポレートリスクのテーマと対応

社外ステークホルダーコミュニケーション

NPO/NGO等との対話を通じて、社会からの要請をグローバルで収集し、その動向を的確に把握することで、KLP推進に際するリスク回避に活かしています。

 

※1 詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)」を参照ください。

※2 ウォッシュ

企業が、製品やサービスについて、環境及びサステナビリティに関する特徴を誇張もしくは大げさに主張したり、それらに関する活動について十分な根拠なく訴求すること。

 

 

主要リスクの内容

主な取り組み

地政学リスクに関するリスク

(背景)

ロシア・ウクライナ問題等により、当社グループが事業展開している欧州や東アジアにおいて地政学リスクが著しく高まっています。また、原材料調達を実施している国・地域においても地政学リスクが高まる可能性があります。

 

(リスクと影響)

これら国・地域において、政治的・社会的情勢の不安定化や外交関係の緊迫化、紛争等により事業環境が悪化し、当社グループの企業活動に対して、人的被害の発生、サプライチェーンの寸断による操業の一時停止や国・地域間の対立に伴う消費者の購買行動の変化が発生した場合、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応策)

地政学リスクの高い国・地域において、リスクシナリオを作成し、特に注意すべき国・地域に対しては、対応体制を整備し、政治的・社会的状況をモニタリングする等して、対応の強化を進めています。

 

主なコーポレートリスクのテーマと対応

地政学リスク対応

当期、「地政学リスク対応」をコーポレートリスクテーマに選定しました。社員の安全確保、原材料調達等のサプライチェーンネットワークの確保、レピュテーション対応を中心に対応強化を進めていきます。

パンデミックに関するリスク

(背景)

新型コロナウイルス感染症の拡大は、長期にわたって世界の人々の暮らしに大きな影響をもたらしました。新型コロナウイルス感染症は、病原性が一定程度低いとされるオミクロン株が流行の主流となり、また、多くの人が自然感染あるいはワクチン接種で免疫を獲得したことによって、収束の兆しが見えてきました。しかしながら、地域によっては感染拡大を繰り返しており、また、感染力の高い変異ウイルスの出現等、引き続き不透明な状況が続いています。

一方、人口増加、環境破壊、病原体を保有する動物とヒトとの接触頻度の増加等により、今後、新たなウイルス等による大規模なパンデミックの発生頻度が高まることが危惧されています。

 

(リスクと影響)

新型コロナウイルスの変異ウイルスや、新たなウイルス等の発生により、感染急拡大や、重症者が著しく増加するような事態が生じると、当社グループ拠点やサプライチェーン上での集団感染(クラスター)の発生、ロックダウン等により、操業の一時中断、製品・サービス提供への支障が生じる可能性があります。また、外出自粛等日常生活ができなくなることで購買行動に変化をもたらし、化粧品市場等が縮小する可能性があります。このような事態が発生した場合、目標とする売上高、利益から大きな乖離が生じる可能性があります。

 

(対応策)

緊急事態対策本部会議(本部長:代表取締役社長執行役員)を開催し、社員と家族の安全確保、事業活動の継続を中心に、次のような対応を実施しました。

・社員と家族に対するワクチン接種の推進

・感染拡大国や地域では、特に生活必需品については政府・自治体と連携する等して生産活動を継続

・ウイルスの特性の変化と感染状況、各国の規制緩和等を踏まえた勤務体制、働き方の見直し(業務特性に応じたハイブリッド勤務の実施、海外出張規制の緩和等)

 

(主なコーポレートリスクのテーマと対応)

パンデミック対応

新型コロナウイルス感染症へのこれまでの対応を踏まえて、次のパンデミックに備えたガイドライン、行動計画の見直しを進めています。

大地震・自然災害・事故に関するリスク

(背景)

化学プラントでの事故や、自然災害が多く発生している昨今、大規模化学プラントを有する企業への安全操業に対する要求はますます高まってきています。

 

(リスクと影響)

大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害により、従業員、設備、サプライチェーン等の被害で、市場への製品供給に大きな支障をきたした場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの工場で、火災・爆発事故等により従業員や周辺地域に大きな被害が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。

 

(対応策)

火災、爆発及び化学物質漏えいを防止し、安全で安定な操業を維持するために保安力を強化する取り組みを行っています。自然災害を想定した設備対応と定期訓練を行い、緊急事態に備えています。事故、災害の発生に対しては、緊急事態連絡網を通じてグローバルで把握する仕組みを構築しています。また、首都圏での地震により本社が被災することを想定して、東日本・西日本それぞれに対策組織を整えており、通信手段を強化し、代表取締役社長執行役員等を本部長とする緊急事態対策本部を即時に立ち上げ、人命を第一とした対応計画、事業継続計画(BCP)が実行できるよう、対応の強化を進めています。

 

(主なコーポレートリスクのテーマと対応)

大地震・自然災害・BCP対応

近年の気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害に対して、各拠点の水害リスク調査に基づいたハード面ソフト面の対策強化を行うとともに、社員とその家族を守るための防災教育を行いました。また、日本における長期操業停止を想定したBCP策定や、海外拠点のBCP強化に取り組んでいます。

 

 

主要リスクの内容

主な取り組み

製品等の品質に関するリスク

(背景)

当社グループの品質保証活動の基本は、「花王ウェイ」で示された消費者・顧客起点の心を込めた“よきモノづくり”です。原料から研究開発、生産、輸送、販売までのすべての段階において、徹底した消費者・顧客視点で、高いレベルで製品の安全性を追求し、絶えざる品質向上に努めています。市場においては、消費者の品質価値の多様化、化学物質の安全性への懸念や環境問題への意識の高まり、さらには、企業の透明性を促す情報開示要求等の変化が起こっており、また、ボーダレス化の進展によるグローバルな商品流通が増加しています。そのような中、各国・地域は、持続可能な社会や消費者保護の強化を目指して、新たな法規制の枠組み作りに動き出しています。

一方、当社グループは、市場の多様化と価値観の変化を機会と捉え、新規技術開発に挑戦し、新規分野への事業展開も計画しています。

 

(リスクと影響)

重大な品質問題の発生、新たな安全性や環境問題の発生や各国・地域の急激な法規制の変更に対して適切かつ迅速に対応できない場合、当該ブランドの問題だけではなく、当社グループ全体の信用低下につながる可能性があります。

 

(対応策)

当社グループでは、製品関連法規の遵守並びに自主的に設定した厳しい基準に従って、設計、製造を行っています。発売前の開発段階では、徹底的に試験、調査研究を行い、品質と安全性を確認しています。発売後には、消費者相談窓口を通じて、商品への意見、要望等をくみ上げ、さらなる品質向上に努めています。

また、化学物質の安全性懸念や環境問題に対する要求に先回りした商品開発の推進、積極的な情報開示による品質保証活動の見える化とステークホルダーとのコミュニケーション強化に取り組んでいます。さらには、各国・地域の新たな法規制に対する影響分析、法規制への適合性を迅速に確認できるシステムの構築に取り組んでいます。

 

主なコーポレートリスクのテーマと対応

重大品質問題対応

品質問題により重篤な被害が生じた場合に被害を最小化するための全社対応の強化と、重大品質問題発生防止に向けた社内啓発の強化を進めています。

 

情報セキュリティに関するリスク

(背景)

当社グループは、ITを活用して事業や業務を効率的に進めるとともに、データを活用したビジネスを進めています。研究開発、生産、マーケティング、販売等に関する機密情報(トレードシークレット(TS))を保有し、また、販売促進活動、会員サイト運営やEコマースを進める上で、多くのお客様の個人情報を保有しています。

当社グループは、情報セキュリティポリシーのもと、TS・個人情報及びハードウェア・ソフトウェア・各種データファイル等の情報資産の保護を目的とした情報セキュリティの強化を図っています。

 

(リスクと影響)

サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、機密情報や個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、信用の低下や、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応策)

情報セキュリティの人的・組織的対策としては、日本と海外の情報セキュリティ委員会が花王グループ全体で規程や体制を整備し、PDCAサイクル(啓発活動、自己点検、改善目標の設定)によるTS・個人情報・情報セキュリティの保護推進活動を実施しています。また、インシデント発生時の対応体制の強化を進めています。技術的対策としては、セキュリティ対策の戦略ロードマップを作成し、これに沿ってセキュリティ対策の強化を実施し、定期的に経営会議や監査役に報告を行っています。また、サプライチェーンのセキュリティリスクを把握するためにサプライヤーのセキュリティ対策のヒアリングの実施や重大なインシデントに備えサイバー保険への加入も行っています。

新事業においても顧客・委託先・協業先等の取引先とTSや個人情報(RNA等の個人関連データを含む)の扱いについて契約で取決めを行い、さらに取扱いや運用のルールを作成し情報管理の徹底を図っています。

 

(主なコーポレートリスクのテーマと対応)

サイバー攻撃・個人情報保護対応

花王グループ全体のセキュリティ対策の強化とインシデント発生時の対応手順の明確化を実施しています。また、花王グループ全体のTS・個人情報・情報セキュリティの保護活動の強化を進めています。

 

 

主要リスクの内容

主な取り組み

レピュテーションに関するリスク

(背景)

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の広がりは、個人による情報発信とその拡散を容易にし、生活者同士又は生活者と企業との多岐にわたる相互コミュニケーションを可能としました。SNS等を通じた情報発信の中には企業に対する批判的な評価や評判も含まれており、それらが拡散されることで、ブランド価値や企業の信用が低下し、財務的、又は非財務的な損失を被る「レピュテーションリスク」の増加が懸念されています。

 

(リスクと影響)

当社グループにおいても、SNSを含むデジタルメディアを用いた様々な情報発信やブランドのマーケティング活動は年々増加しており、それらの活動で使用された不適切、又は不用意な表現に対する批判的な評価等がSNS等を通じて拡散された場合、当社グループのブランド価値や企業の信用を著しく低下させる可能性があります。

 

(対応策)

当社グループでは、ESGの観点を含め、広告及びSNS活用時の不適切表現を防止する対策として、事前チェック体制の整備と社内教育に取り組んでいます。また、国内外におけるSNS等のモニタリングを行い、早期のリスク発見にも努めており、事業及びブランドの活動に悪影響を及ぼすレピュテーションリスク事象が発生した場合は、迅速に対応すると同時に、必要に応じて適切なタイミングで、情報や企業姿勢を公表する等、当社グループのレピュテーション(評判・信用)の維持に努めています。

 

(主なコーポレートリスクのテーマと対応)

レピュテーションリスク対応

上記の取り組みを進め、より早い段階でリスクを発見できるよう、特にSNS等のモニタリング体制を強化し、レピュテーションリスク発生時の緊急対応体制のさらなる強化を進めています。

流通環境の変化に関するリスク

(背景)

スマートフォンやSNSのさらなる普及に伴い、デジタルを日常的に活用した購買行動へ、よりシフトしています。Eコマースの伸長は継続しており、ソーシャルコマース※1やクイックコマース※2等、あらたな購買チャネルも派生、一方でリアル流通もOMO※3の推進や業態を越えた合併・連携等を進めており、当社グループの流通経路はより多様化・複雑化が進んでいます。

物流に関しては、物量増に伴うドライバー不足やガソリン等燃料費の高騰によって、物流コストの増加が顕在化しており、また、働き方改革関連法に伴うドライバーの時間外労働の上限規制が、2024年から物流業界にも適用されることもあり、大きな環境変化が見込まれます。

 

(リスクと影響)

流通経路の多様化・複雑化に対し適切な販売活動を展開できない場合、目標とする売上高、市場シェア、利益が得られない可能性があります。

物流環境の変化に適切に対応できない場合、配送の滞りや、物流コストの大幅な増加等、当社グループの事業活動にも影響を及ぼす可能性があります。

 

※1 ソーシャルコマース

SNSに商品を購入できる機能を追加した販売チャネルの1つ

※2 クイックコマース

注文から配達まで短時間で届ける仕組みを備えたEコマース

※3 OMO(Online Merges with Offline)

オンラインとオフラインの両者を融合させる販売戦略

 

(対応策)

こうした変化を受け、当社グループではEコマース専業企業との取り組みを強化するとともに、リアル流通とのOMOへの取り組み、新興企業との連携等も進めています。また、SNSでの花王公式アカウント会員の積極的な獲得を推進しており、「花王トクトクニュース」の登録者数は、2021年の20万人から2022年は212万人まで拡大しました。会員への情報発信やキャンペーンを通じた店頭への送客等、生活者とのダイレクトコミュニケーションを行うと同時に流通業との共創を進める、といった新しいマーケティングにチャレンジし、ロイヤルカスタマーづくりを進めています。化粧品分野においても、オンラインカウンセリングの充実や、ライブコマース※4等のソーシャルメディアの積極的活用を進めており、D2C※5を推進しています。

物流に関しては、国土交通省や経済産業省等が進めるホワイト物流推進運動を流通業とともに行っています。流通業のホワイト物流に対する意識が年々向上している環境下において、一過性のコスト対応ではなく、他メーカーや他ベンダーとの連携を含めて、積載率向上や物流平準化といった課題に対して取り組むことで、持続可能な物流体制の構築を目指しています。

 

※4 ライブコマース

インターネットでの動画ライブ配信で商品紹介と物販を組み合わせた販売手法

※5 D2C(Direct to Consumer)

自社のEコマースサイトで直接消費者に販売するビジネスモデル

 

 

主要リスクの内容

主な取り組み

海外事業に関するリスク

(背景)

当社グループは、成長戦略のひとつとして海外事業展開を進めており、特に経済成長率が高く、市場規模が大きくなることが予想されるアジア等の強化を重視しています。

 

(リスクと影響)

しかしながら、事業を進める上で、新型コロナウイルス感染症の影響以外にも、各国における経済成長の鈍化、政治的・社会的に不安定な情勢、急激な法規制・税制の変更、模倣品の氾濫、レピュテーションリスク等が発生する可能性があります。これらの影響により事業計画に大幅な遅れが生じた場合、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

※ 「レピュテーションに関するリスク」を参照

 

(対応策)

当社グループでは、生産・販売国の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国法規制の情報を日々収集し、必要な対応を行っています。特に各国の環境関連規制の強化、製品の安全性・品質関連規制の強化、また、輸出入関連規制の変更の当社グループへの影響に注視しています。一方、模倣品等の知的財産権の侵害については、特にアジア地域を中心とした模倣品対策に注力しており、消費者・顧客に安心して製品を使用して頂けるよう取り組んでいます。

 

事業投資に関するリスク

(背景)

当社グループは、企業価値と相関関係の高いEVAによる投資判断のもと、事業成長やESGのために積極的な設備投資、M&A等を進めています。これら投資を今後も進めるとともに、継続的なEVA改善を通して企業価値の向上に努めていきます。

 

(リスクと影響)

投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、計画との乖離等により期待される効果が生み出せない場合、設備投資により計上した有形固定資産や、M&Aにより計上したのれんや無形資産の減損処理により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

当社グループは、重要な投資に対して、期待される効果が計画から大きく乖離していないかを四半期決算毎に確認し、経営会議で報告しています。乖離した場合には、関係部門が必要に応じて今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

 

コンプライアンスに関するリスク

(背景)

当社グループは、事業活動を行う上で、製品の品質・安全性、保安、環境保全、化学物質管理、会計基準や税法、労務、取引管理等の様々な法規制の適用を受けています。

 

(リスクと影響)

世界的競争が激化する中で、製品の差別化、販売スケジュールや製品納期の遵守、業績目標達成の圧力等に関連した不正を働く誘因がますます高まることが懸念されます。また、世代間又は社員の多様化による価値観の相違、コロナ禍によりもたらされたリモートワーク等の働き方の急激な変化によるコミュニケーションのすれ違い等により、ハラスメントや労務管理上のコンプライアンスリスクが増加する可能性があります。当社グループ及び委託先等が重篤なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

当社グループは、「正道を歩む」(法と倫理に則って行動し、誠実で清廉な事業活動を行う)をコンプライアンスの原点と位置づけ、すべてのステークホルダーの支持と信頼にこたえていくための指針とし、行動規範である「花王ビジネスコンダクトガイドライン」の継続的な教育やコンプライアンス通報・相談への適切な対応等の活動を進めています。多様化による価値観の相違やコミュニケーションのすれ違い等によるコンプライアンスリスクについては、ケーススタディ等を通じて気づきを与えています。また、重篤なコンプライアンスリスクの低減にフォーカスした活動として、事業に適用される法令遵守推進を計画的に実施し、特に重要な法令についてはその実施状況をコンプライアンス委員会がモニタリングしています。重篤なコンプライアンス違反を発見した場合、すぐに経営陣に報告され適切な対応を行えるよう、風通しの良い職場の実現を目指した活動を推進しています。

 

 

主要リスクの内容

主な取り組み

人財確保に関するリスク

(背景)

当社グループは、経営計画を実行する上で、多様な人財が挑戦・共創できる場の創出に努めています。現在は、グローバルでの競争激化や日本における超高齢化社会の到来といった潮流に加え、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、従来に増して変化に柔軟に対応していく変革力が求められています。また、個人のキャリアや働き方に対する価値観がこれまで以上に多様化し、人財の流動化が社会全体でより一層進むと考えられます。

 

(リスクと影響)

大きな環境の変化を先取りし、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や、変化を先導するリーダーの確保と育成が推進できない場合には、新事業・新製品開発におけるイノベーションの加速、中期経営計画「K25」の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

当社グループで最も重要な資産は「人財」であるという認識のもと、社員活力の最大化に向けて、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人財が、大きな挑戦と部門や国、組織を超えた共創により、能力と個性を最大限に発揮するための取り組みを推進しています。2021年より全員チャレンジと社内外での連携・共創強化を目的としOKRを導入しました。

また、グローバル人財情報システムの活用や、様々な社員意識調査・アンケートの実施による組織力の向上、グローバル共通の等級制度・評価制度・教育体系・報酬ポリシーによる人財マネジネントや健康増進プログラム、柔軟で多様な就業環境と制度の整備等を実施しています。

これらの取り組みに加えて、持続的な成長を支える人財の配置・育成や効果的な組織運営について、経営トップをメンバーとする人財企画委員会で毎月議論し、推進しています。

為替変動に関するリスク

(背景)

為替相場の変動は、外国通貨建ての売上高や原材料の調達コストに影響を及ぼします。また、連結決算における在外連結子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。

 

(リスクと影響)

当社グループの機能通貨である円に対して外貨の為替変動が想定以上となった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

外国通貨建て取引については、外貨預金口座を通じての決済、為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引により為替変動リスクをヘッジすることで、経営成績に与える影響を軽減しています。なお、投機的なデリバティブ取引は行っていません。また、主要通貨の変動と事業への影響をモニタリングし、適時、経営会議に報告しています。そして、必要に応じて経営陣指示のもと、関係部門は事業への影響を軽減する対策を検討しています。

訴訟に関するリスク

(背景)

当社グループは、グローバルで多岐にわたる事業展開をしており、様々な訴訟等を受ける可能性があります。

 

(リスクと影響)

当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、訴訟等が提起された場合、その動向によっては、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、安全・安心な製品の提供、知的財産権の適正な取得・使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。また、グローバルで、重要な訴訟の提起や状況に関する報告が迅速かつ確実になされる仕組みを構築するとともに、各国の関係会社の担当者及び弁護士事務所等と連携し、訴訟等に対応する体制を整備しています。

 

 

(3)主要リスクの中期経営計画「K25」との関連性

15の主要リスクの内、「原材料調達に関するリスク」、「社会課題への対応に関するリスク」、「製品等の品質に関するリスク」、「流通環境の変化に関するリスク」、「海外事業に関するリスク」、「事業投資に関するリスク」、「人財確保に関するリスク」を中期経営計画「K25」との関連性が特に大きいリスクと認識して対応しています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。

 

(1)経営成績の分析

注:以下、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。

 

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

営業利益率

(%)

税引前利益

(億円)

当期利益

(億円)

親会社の

所有者に
帰属する
当期利益

(億円)

基本的
1株当たり
当期利益

(円)

2022年12月期

15,511

1,101

7.1

1,158

877

860

183.28

2021年12月期

14,188

1,435

10.1

1,500

1,114

1,096

230.59

増減率

9.3%

実質 3.7%

(23.3)%

(22.8)%

(21.2)%

(21.5)%

(20.5)%

 

 

当期は、前期に引き続き新型コロナウイルス感染症が世界中の社会や経済、人々の暮らしに大きな影響をもたらした1年でした。ロシア・ウクライナ問題等によるエネルギーコストの上昇や世界的なインフレによる消費行動の変化、成長が続いていた中国市場の減速等もあり厳しい経営環境が続きました。

 

当社グループの主要市場である日本のトイレタリー(化粧品を除くコンシューマープロダクツ)市場及び化粧品市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると前期を上回りましたが、化粧品市場はコロナ禍前の2019年の水準までには回復していません。

このような中、花王グループは人々の生活様式や消費行動、販売チャネル構造の変化、さらには世界的な原材料価格の高騰等への対応に努めました。売上高は、前期に対して9.3%増1兆5,511億円(実質3.7%増)となりました。営業利益は、原材料価格高騰の影響を大きく受け、1,101億円(対前期334億円減)、営業利益率は7.1%となりました。税引前利益は1,158億円(対前期342億円減)、当期利益は、877億円(対前期237億円減)となりました。

基本的1株当たり当期利益は183.28円となり、前期の230.59円より47.31円減少(前期比20.5%減)しました。

当社グループが経営指標としているEVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が減少する中、資本コストが増加、前期を305億円下回り147億円となりました。

なお、2022年5月11日開催の取締役会において、資本効率の向上と株主への一層の利益還元のため、自己株式の取得を決議し、総額500億円の自己株式を取得しました。また、9月28日に910万株を消却しました。

 

当期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。

 

第1四半期

(1-3月)

第2四半期

(4-6月)

第3四半期

(7-9月)

第4四半期

(10-12月)

米ドル

116.30

円[

105.96円]

129.69

円[

109.47円]

138.27

円[

110.09円]

141.47

円[

113.72円]

ユーロ

130.45

円[

127.74円]

138.14

円[

131.90円]

139.25

円[

129.78円]

144.22

円[

130.05円]

中国元

18.32

円[

16.35円]

19.63

円[

16.95円]

20.20

円[

17.01円]

19.88

円[

17.79円]

 

注:[ ]内は前期の換算レート

 

 

〔セグメント別の概況〕
セグメントの業績

 

売上高

営業利益

通期

増減率

通期

増減

(億円)

2021年

12月期

(億円)

2022年

12月期

(億円)

(%)

実質

(%)

2021年

12月期

2022年

12月期

(億円)

利益率

(%)

(億円)

利益率

(%)

 

ハイジーン&リビングケア事業

4,968

5,165

4.0

0.4

518

10.4

307

5.9

(211)

 

ヘルス&ビューティケア事業

3,545

3,695

4.2

(1.8)

497

14.0

346

9.4

(151)

 

ライフケア事業

530

557

5.1

1.4

36

6.8

(0)

(0.0)

(36)

 

化粧品事業

2,393

2,515

5.1

0.8

75

3.1

141

5.6

66

コンシューマープロダクツ事業

11,437

11,933

4.3

(0.2)

1,126

9.8

793

6.6

(332)

ケミカル事業

3,143

4,025

28.1

18.6

296

9.4

295

7.3

(1)

小      計

14,580

15,958

9.5

3.9

1,422

1,089

(333)

セグメント間消去又は調整

(392)

(447)

13

12

(1)

合      計

14,188

15,511

9.3

3.7

1,435

10.1

1,101

7.1

(334)

 

 

販売実績

(億円、増減率%)

通期

日本

アジア

米州

欧州

合計

 

 

ファブリック&ホームケア製品

2021年

2,886

401

28

3,315

2022年

2,929

455

37

3,421

増減率

1.5

13.4

32.1

3.2

実質

1.5

0.4

19.7

1.5

サニタリー製品

2021年

780

873

1

1,653

2022年

774

970

1

1,745

増減率

(0.7)

11.1

(24.6)

5.5

実質

(0.7)

(2.8)

(31.9)

(1.8)

ハイジーン&リビングケア事業

2021年

3,666

1,274

29

4,968

2022年

3,703

1,425

37

5,165

増減率

1.0

11.8

30.1

4.0

実質

1.0

(1.8)

17.9

0.4

ヘルス&ビューティケア事業

2021年

2,052

294

780

418

3,545

2022年

2,002

339

906

449

3,695

増減率

(2.4)

15.1

16.1

7.3

4.2

実質

(2.4)

1.0

(2.4)

0.5

(1.8)

ライフケア事業

2021年

435

0

94

1

530

2022年

437

0

118

2

557

増減率

0.7

50.1

25.2

19.9

5.1

実質

0.7

33.9

4.8

11.8

1.4

化粧品事業

2021年

1,529

578

59

227

2,393

2022年

1,607

596

68

244

2,515

増減率

5.1

3.0

15.1

7.5

5.1

実質

5.1

(10.1)

(4.1)

0.4

0.8

コンシューマープロダクツ事業

2021年

7,681

2,147

962

646

11,437

2022年

7,750

2,360

1,129

694

11,933

増減率

0.9

9.9

17.4

7.4

4.3

実質

0.9

(3.6)

(1.2)

0.5

(0.2)

ケミカル事業

2021年

1,221

739

490

692

3,143

2022年

1,401

982

705

937

4,025

増減率

14.7

32.8

43.8

35.3

28.1

実質

14.7

15.9

19.9

27.4

18.6

セグメント間売上高の消去

2021年

(340)

(34)

(0)

(18)

(392)

2022年

(385)

(39)

(2)

(21)

(447)

売上高

2021年

8,563

2,852

1,452

1,320

14,188

2022年

8,766

3,302

1,833

1,610

15,511

増減率

2.4

15.8

26.2

21.9

9.3

実質

2.4

1.4

5.9

14.5

3.7

 

注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。

 

売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の42.0%から45.4%となりました。

 

 

コンシューマープロダクツ事業

売上高は、前期に対して4.3%増1兆1,933億円(実質0.2%減)となりました。

当期は、中国での都市封鎖や市場の冷え込み、米国での物流混乱や世界的なインフレによる低価格品への移行等市場環境は大変厳しいものでしたが、コアブランドへの集中投資やデジタル化の推進、戦略的値上げ等を積極的に実施しました。

以上の結果、日本の売上高は、前期に対して、0.9%増7,750億円となりました。

アジアの売上高は、9.9%増2,360億円(実質3.6%減)となりました。米州の売上高は、17.4%増1,129億円(実質1.2%減)となり、欧州の売上高は、7.4%増694億円(実質0.5%増)となりました。

営業利益は、原材料価格の高騰や物流費の上昇等が影響し、前期に対して大きく減少し、793億円(対前期332億円減)となりました。

 

当社は、〔ハイジーン&リビングケア事業〕、〔ヘルス&ビューティケア事業〕、〔ライフケア事業〕、〔化粧品事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。

 

〔ハイジーン&リビングケア事業〕

売上高は、前期に対して4.0%増5,165億円(実質0.4%増)となりました。

ファブリックケア製品は、売り上げは前期を上回りました。日本では、原材料価格高騰の影響を最小化するため、衣料用洗剤を中心に戦略的な値上げを実施するとともに、マーケティング活動を強化したことによりシェアが伸長し、順調に推移しましたが、柔軟仕上げ剤は厳しい競争下で苦戦しました。アジアでは売り上げは前期を下回りました。

ホームケア製品は、日本では外出機会が増えたことで使用する機会等が減り市場は縮小しましたが、売り上げは前期並みでした。食器用洗剤「キュキュット」は、シェアを大きく伸長させました。

サニタリー製品は、売り上げは前期を下回りました。生理用品「ロリエ」は、日本やアジアでは販売促進活動の強化等により好調に推移しました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」の売り上げは、前期を下回りました。中国では市場縮小の影響等があり前期を下回りました。インドネシアでは売り上げは好調を維持し、日本では市場が縮小する中、前期並みでした。

営業利益は、原材料価格高騰が大きく影響し、307億円(対前期211億円減)となりました。

 

〔ヘルス&ビューティケア事業〕

売上高は、前期に対して4.2%増3,695億円(実質1.8%減)となりました。

スキンケア製品は、売り上げは前期を上回りました。日本では猛暑の影響で、UVケア製品等のシーズン品の売り上げは好調に推移し、シェアも大きく伸長しました。タイでは、革新的な花王独自の技術を搭載した忌避剤ローション「ビオレガード モスブロックセラム」を6月に上市し、大きな反響がありました。米国ではインフレによる消費減退の影響を受け、売り上げは前期を下回りました。

ヘアケア製品は、売り上げは前期を下回りました。欧米のヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE(オリベ)」が、コアのサロンチャネルに加え、Eコマースも大きく伸長し好調を維持しました。日本のマス向け製品は、売り上げは前期を下回りました。厳しい競争環境が続いている中、抜本的な事業変革を開始しています。

パーソナルヘルス製品の売り上げは、前期を下回りました。「めぐりズム」は順調に売り上げを伸ばしましたが、入浴剤は前期を下回りました。

営業利益は、原材料価格高騰等が大きく影響し、346億円(対前期151億円減)となりました。

 

〔ライフケア事業〕

売上高は、前期に対して5.1%増557億円(実質1.4%増)となりました。

業務用衛生製品は、日本では徐々に経済が正常化し、外出機会が増加したことにより市場は回復しました。特に外食産業や宿泊施設等で厨房用洗浄剤や客室消耗品の需要が高まり、売り上げは伸長しました。米国では対象業界の回復、新規顧客の獲得等で、売り上げは前期を上回りました。

健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」で、SNSを使った生活者とのつながりを強化し、Eコマースでのロイヤルユーザー拡大が進みましたが、既存量販店での落ち込みをカバーすることはできず、売り上げは前期に比べて減少しました。

営業損失は、原材料価格高騰が影響し、0億円(対前期36億円減)となりました。

 

〔化粧品事業〕

売上高は、前期に対して5.1%増2,515億円(実質0.8%増)となりました。

日本では、市場が徐々に回復する中、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」に集中的に投資し、売り上げ・シェアは前期を上回りました。特に、「KATE」は「リップモンスター」が好調を維持し、メイク市場全体でブランドシェアNo.1を継続しています。また固定費削減やメイク事業の構造改革を順調に進めました。中国では、感染症拡大による都市封鎖やその後の市場の冷え込みに加え、ローカルメーカーの台頭や流通チャネルの変化等の影響を大きく受け、売り上げは前期を下回りました。欧州では、インフレによる景気減速が影響し売り上げは前期並みでしたが、「SENSAI」や「モルトンブラウン」のシェアは伸長しました。

営業利益は、141億円(対前期66億円増)となりました。

 

 

ケミカル事業

売上高は、前期に対して28.1%増4,025億円(実質18.6%増)となりました。

油脂製品では、天然油脂価格の上昇に伴う販売価格の改定に努めたことも貢献し、売り上げは伸長しましたが、年末にかけて顧客の在庫調整の影響を受けました。

 機能材料製品は、自動車関連分野での需要減の影響を受けましたが、原料価格上昇に伴う販売価格の改定を進めて、売り上げは伸長しました。

情報材料製品は、トナー・トナーバインダーは需要の回復を着実に捉えて伸長しました。

営業利益は、市況の変動による在庫の評価損の計上もあり、295億円(対前期1億円減)となりました。

 

(2)財政状態の分析

(連結財政状態)

 

前連結会計年度

2021年12月末

当連結会計年度

2022年12月末

増減

資産合計(億円)

17,040

17,264

223

負債合計(億円)

7,201

7,310

108

資本合計(億円)

9,839

9,954

115

親会社所有者帰属持分比率

56.6%

56.3%

-

1株当たり親会社所有者帰属持分(円)

2,036.66

2,091.20

54.54

社債及び借入金(億円)

1,277

1,278

1

 

 

資産合計は、前期末に比べ223億円増加し、1兆7,264億円となりました。主な増加は、棚卸資産503億円営業債権及びその他の債権144億円有形固定資産107億円であり、主な減少は、現金及び現金同等物678億円です。

負債合計は、前期末に比べ108億円増加し、7,310億円となりました。主な増加は、営業債務及びその他の債務147億円であり、主な減少は、未払法人所得税等118億円です。

資本合計は、前期末に比べ115億円増加し、9,954億円となりました。主な増加は、当期利益877億円在外営業活動体の換算差額485億円であり、主な減少は、配当金693億円、2022年5月11日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円です。また、2022年9月28日に自己株式の消却910万株を実施しました。

なお、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の56.6%から56.3%となりました。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は8.9%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

(連結キャッシュ・フローの状況)

 

通期

増減

(億円)

2021年12月期

(億円)

2022年12月期

(億円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,755

1,309

(446)

投資活動によるキャッシュ・フロー

(672)

(749)

(77)

フリー・キャッシュ・フロー(営業活動+投資活動)

1,083

560

(523)

財務活動によるキャッシュ・フロー

(1,416)

(1,393)

23

 

 

営業活動によるキャッシュ・フローは1,309億円となりました。主な増加は、税引前利益1,158億円減価償却費及び償却費897億円であり、主な減少は、法人所得税等の支払額393億円、棚卸資産の増減額369億円です。

投資活動によるキャッシュ・フローは△749億円となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出655億円無形資産の取得による支出117億円です。

営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、560億円となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは△1,393億円となりました。安定的かつ継続的な配当を重視しており、またEVA視点から資本効率の向上を目的として、自己株式の取得及び消却も弾力的に行っています。当期の主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金694億円、2022年5月11日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円、リース負債の返済による支出217億円です。

当期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前期末に比べ678億円減少し、2,682億円となりました。

 

 

(4)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

使用権資産を含む重要な資本的支出の2023年度の予定額は、約960億円であり、主に当社グループ内の資金を有効活用する予定であります。なお、計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 

(6)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は、産業界向けのケミカル製品から一般消費者向けのコンシューマー製品まで極めて多種多様であり、それら製品の在庫をほぼ一定の必要水準に保つように、主として見込み生産を行っております。従って、生産実績は販売実績に類似しております。生産及び販売の実績については、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。

 

(7)経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(8)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、達成状況は、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

  合弁事業契約

国名

契約先

合弁会社名称

出資比率

※1

契約日

マレーシア

IOI Oleochemical Industries
Berhad

Fatty Chemical

(Malaysia) Sdn. Bhd.

70.0%

※2

1988年2月29日

インドネシア

PT Rodamas

PT Kao Indonesia

54.6%

1994年8月29日

 

※1 当連結会計年度末の出資比率を記載しております。

※2 出資比率は、間接出資比率であり、 Kao Singapore Private Limited(当社100%出資)が出資しております。

 

 

6 【研究開発活動】

私たちは、持続可能で豊かな共生世界を実現することを使命に、「未来のいのちを守る企業」として、人、社会、地球に貢献することを目指しております。研究開発部門では、多様な国や地域の生活者の様々な文化やニーズを理解し、独創的なシーズと組み合わせることにより、新たな価値や市場を創造する画期的な商品・技術の開発に取り組んでおります。

そのひとつの取り組みとして、様々な生体データを高精度かつ非侵襲※1で取得し、個人の状態を精確に同定する「プレシジョン・モニタリング」の技術開発と応用展開を進めています。歩行モニタリングでは、歩行動作を詳細に解析する技術の開発や、日常歩行からフレイル※2の進行や認知機能低下の推定等、健康状態の変化をセルフチェックできるツールの開発を進めています。皮脂RNAモニタリングは、肌表面から採取した皮脂中のRNAから、個人の違いだけでなく、加齢や疲労、病気等の体調の変化や、外的ストレスの影響を解析する技術で、協働企業とともに応用・実用化に向けた取り組みを進めています。2022年11月には、化粧品事業から花王初となるプレシジョン・モニタリングのビジネスへの実装化を開始しました。今後、これらのモニタリング技術をはじめ、簡単に入手できるデータから因果関係を割り出すプラットフォームを一般化させることで、的確なソリューションの提供を可能にし、広く社会への貢献を目指してまいります。

当社グループ全体で、約3,000名が研究開発業務に携わっております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、606億円(売上高比3.9%)であり、主な成果は、下記のとおりであります。

※1:注射や手術等、皮膚や身体の開口部に器具の挿入を必要としない方法。

※2:健康な状態と要介護状態の中間の状態。加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態。

 

コンシューマープロダクツ事業

〔ハイジーン&リビングケア事業〕

人々の生活スタイルや価値観の多様なニーズに応え、誰もが安心して快適に暮らせるための清潔・衛生商品を提供すべく、幅広い分野での研究開発を進めております。

ファブリックケア製品では、衣料用濃縮液体洗剤「アタック ZERO(ゼロ) 部屋干し」を新発売しました。部屋干しのニオイを根本から無臭化する“部屋干し臭撃退技術”を搭載し、ニオイや黒ずみの発生源となる手強い“菌の隠れ家”にまでアプローチ※1する「アタック ZERO」シリーズの共通特長も備えています。

ホームケア製品では、食器用洗剤「キュキュット」シリーズを刷新しました。進化した独自の“ハイブリッド・ウォッシュ技術”によってキュキュット史上、最高の「洗浄力」「泡持ち」「泡切れ」を実現。パワーアップした洗浄力で油汚れを細かく分解し、かつ、しっかりとした泡膜で汚れを包み込み、他の食器へ汚れの再付着も防ぎます※2

サニタリー製品では、生理用品「ロリエ」から、花王の抗菌技術に加え、インドネシアで伝統的に用いられるハーブ「ダンシリ(Daun Sirih)」の成分を配合した抗菌タイプの「ロリエ ナチュラル&クリーン」をインドネシアで新発売しました。

当事業に係る研究開発費は、159億円であります。

※1:多糖汚れの蓄積を抑える効果。

※2:汚れの程度によって、汚れが移る場合があります。

 

 

〔ヘルス&ビューティケア事業〕

世界の人々の肌や髪を深く知るとともに、人が本来持っている健康力を生かしたQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指した本質研究と、革新的な技術と品質によるユニークで付加価値の高い製品の提案をとおして、健康美と清潔衛生を実現する研究開発に取り組んでいます。

スキンケア製品では、「ビオレUV」から快適な使い心地を追求し、使用感を科学した「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトローション」を新発売しました。花王で初めて、UVカット成分をすべてアクアカプセル(寒天ゲル)に閉じ込めることに成功。肌になじませる時は水のように広がり、素早くなじんだ後はパックされたように密着する、変化する使用感を実現しました。

ヘアケア製品では、「エッセンシャル」から、髪悩みに応じた新トリートメント「エッセンシャル ザ ビューティ 髪のキメ美容ウォータートリートメント」を発売しました。洗い流さない、ウォータータイプのトリートメントで、新技術「持続型ウォーターヴェール」が髪に密着。ブリーチ等で傷んだ髪も、根元から毛先まで髪のキメがそろった状態に整えます。

パーソナルヘルス製品では、「めぐりズム」シリーズより、心地よい蒸気が目もとを温かく包み込む「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」を改良新発売しました。進化した独自開発の新素材を採用し、つけた瞬間のふっくら感と、目もとにあわせて密着するフィット感を実現しました。

当事業に係る研究開発費は、209億円であります。

 

〔ライフケア事業〕

高機能な製品開発と、モニタリング技術を活用した一人ひとりへの精度の高いソリューションの提供を目指し、心身の健康をサポートし、人々のライフケアの向上につながる研究を進めています。

機能性表示食品シリーズ「リファイン」から、2つのサプリメントを流通限定で先行発売しました。「リファイン 動き軽やかサポート」は、ミルクに含まれる希少成分「乳由来スフィンゴミエリン」が、足の筋肉への神経伝達を助け、足の動きとバランス感覚をサポート、「リファイン 脳キレイ」は、「コーヒー豆由来クロロゲン酸類」が睡眠の質を高め(起きたときの疲労感を減らす)、認知機能の一部である実行機能(状況に応じて適切に注意を切り替える力)をサポートします。

当事業に係る研究開発費は、25億円であります。

 

〔化粧品事業〕

世界の人々の肌を深く知る本質研究による確かなエビデンスと五感に訴える感性研究を融合して、新しい美の価値創造を目指しております。

カウンセリング化粧品では、「トワニー」から、「トワニー ドラマティックメモリー」を発売しました。特殊なポリマーと油剤を組み合わせた世界初※1の成分アプローチを採用。塗膜が収縮することで肌を物理的に引っ張り、シワと頬のふくらみの2要因からなる影を減らすことで、ほうれい線を目立ちにくくします。

「エスト」では、洗顔料「エスト クラリファイイング ジェル ウォッシュ」を発売しました。厚みのあるジェルが肌に密着、毛穴に詰まった角栓を分解して落とし、酸化タンパク質を含む古い角質までしっかり洗い流します。さらに、肌をコーティングするエスト先進成分※2を配合し、肌の潤いを守りつつ、なめらかで透明感のある洗い上がりを実現します。

「キュレル」では、7月に中国で「キュレル アンチリンクルフェイスクリーム」を発売しました。「セラミド機能成分」と「ショウキョウ(生姜)エキス」を配合し、これらがともに作用することにより、肌の「バリア力」と「潤いと弾力」を同時にケアする、日中研究開発チームが共同開発した中国消費者に向けたキュレルで初めてのエイジングケア商品です。

当事業に係る研究開発費は、108億円であります。

※1:塗膜収縮成分<(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー、ジシロキサン>の組み合わせ。先行技術調査及びMintel社データベース内2022年2月当社調べ。

※2:エスト洗顔料内において、CPコンプレックスα(保湿:トコフェロール、ソルビトール)。

 

ケミカル事業

油脂科学、界面科学、高分子科学等における研究開発の成果をさらに深化させ、幅広い産業界の多様なニーズに対応した特徴あるケミカル製品を提供すべく、研究開発に取り組んでおります。

油脂製品では、オレオケミカルや三級アミンにおいて独自の触媒・プロセス技術開発を進めており、機能材料製品では、環境負荷低減に対応した付加価値製品の開発を進めております。そのひとつとして、廃棄されるPET素材を原料とした高耐久アスファルト改質剤「ニュートラック 5000」は、その製品開発の取り組みが一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」が実施する「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2022」において準グランプリ・金賞を受賞し、次世代に向けた国土強靭化に貢献するものとして高く評価されました。今後も、国内のみならず海外においてもヒトと環境に配慮した「グリーン舗装」の普及・促進に努めていきます。また、バイオマス由来のセルロースナノファイバー(Cellulose Nano Fiber)を用いた複合材料「LUNAFLEX」は、プラスチック製品の物性を向上させ、資源の効率的利用に大きく貢献します。

情報材料製品では、ポリマー設計技術を駆使した超低温定着ケミカルトナー(LUNATONE)や独自開発のVOCレス設計の水性インクジェット用顔料インク(LUNAJET)で印刷分野でのさらなる展開を強化していきます。

当事業に係る研究開発費は、107億円であります。

※:印刷工程において排出されるVOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)が(炭素換算で)700ppmC以下のものをVOCレスと定義。改正大気汚染防止法(平成18年)により、VOC排出規制が実施されております。